夫と離婚を考えているものの、離婚後の生活が不安で踏み切れないとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。特に専業主婦の場合、別居してすぐに働き口を探すのは簡単ではない上に、生活費を自力で稼がなければならないので不安を覚えるのも無理はありません。

しかし、別居中なら夫から生活費を負担してもらうことができるのをご存じでしょうか?ここでは、別居中の専業主婦が夫に生活費を請求する方法や相場についてご紹介します。

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専業主婦が別居した時にかかる生活費の相場

婚姻中の夫婦は生活費をお互い負担しなければならず、たとえ妻が専業主婦で離婚を前提とした別居であっても、夫は妻に生活費を支払う義務があります。

子どもがいる場合の生活費の相場

総務省統計局の「家計調査(家計収支編)」によると、母親と18未満の子どものみの世帯の消費支出の平均額は22万8,912円で、そのうち食費が約5万5,000円、住居費は約3万円であることがわかっています。

ほかにも、被服費、医療費、交際費、交通費、乳幼児のお子さんがいる場合はおむつ代やミルク代なども必要です。育ち盛りの子どもがいる場合、養育費や習い事代、塾代などの養育費もかかります。

別居後の生活費を夫に負担してもらうためには、どの項目にどれくらいのお金がかかっているのかを把握したうえで、夫にきちんと説明しなければなりません。別居前の段階で今の生活費がどれくらいかかっているか、家計簿を見返すなどして試算してみると良いでしょう。

専業主婦が別居したら婚姻費用を請求できる

別居中の妻が夫に対して生活費を請求するにあたって、知っておくべきことをご紹介します。

婚姻費用とは

婚姻関係のある夫婦が生活するうえで必要な食費、住居費、医療費、娯楽費、交際費などの生活費を、法律上は「婚姻費用」と呼びます。夫婦で別居していても同程度の生活レベルを維持するために、お互いを扶養する義務があります。

「婚姻費用」の文字通り、婚姻関係のある夫婦間で分担するものであり、離婚した後は婚姻費用を請求することはできません。

婚姻費用とは|別居中の生活費を分担する義務や養育費との違い

婚姻費用の支払い義務

夫婦には婚姻費用を分担する義務があり、これを法律上「生活保持義務」といいます。専業主婦がいる家庭の場合、夫だけの収入で生計を維持しているので、別居後の妻の婚姻費用も夫が負担しなければなりません。

たとえ夫婦不仲による別居や離婚を前提とした別居でも、婚姻期間中は婚姻費用を分担する必要があります。夫からすれば「なぜ自分が生活費を払わなければいけないのか」と不服に思われるかもしれませんが、婚姻費用の負担は法律で決められているので、離婚しない限りは支払う義務があります。

婚姻費用の支払いは拒否できる?払わないと離婚時に不利になる?

婚姻費用の相場

婚姻費用の金額は各家庭の生活水準によって異なります。もともとの生活水準が高ければ、請求できる婚姻費用も高額になります。具体的な金額は夫婦間で話し合って決定できますが、調停や審判、訴訟などの実務では裁判所が公表している「婚姻費用算定表」をもとに金額を決定していることがほとんどです。

婚姻費用算定表は、夫婦の年収や子どもの人数や年齢に応じて婚姻費用の目安を公表しているものです。例えば、夫の年収が700万円、妻は専業主婦で0~14歳の子どもが1人いる家庭の婚姻費用は婚姻費用算定表によると12~14万円が目安です。この金額から個別の状況に応じて金額が変わってきます。

なお、法律上は、別居の原因と夫婦の扶養義務は分けて考えるとされていますが、実務ではこの金額をもとに個別の事情を考慮して具体的な婚姻費用を決定しています。実際に夫が別居の原因をつくった場合は相場より多く負担するケースが調停や裁判でも認められています。

妻に別居した原因がある場合の婚姻費用

では、妻側が浮気し別居した場合、夫は婚姻費用を支払う必要があるのでしょうか?先述したように、たとえ妻が浮気をして別居に至っても、夫に対して婚姻費用を請求することはできます。

ただ、妻側の身勝手な動機で浮気した場合は、婚姻費用の請求は信義則に反するとされ相場より大きく減額されるか、請求自体が認められないこともあります。

別居中の婚姻費用を払ってくれないときの対処法

婚姻費用の分担は夫婦の義務なのにもかかわらず、夫が支払いを拒否する場合、どう対処すればいいでしょうか。対処法を3つご紹介します。

夫婦での話し合い

まずは夫婦間の話し合いで金額を決める方法です。先述した婚姻費用算定表は裁判所のウエブサイトでも公開しているので、算定表の金額を参考に夫婦間で話し合って決めても良いでしょう。

婚姻費用の分担請求調停

夫婦間での協議が進まないときは家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てることで金額を決定できます。調停では、家庭裁判所が指定した期日に裁判所に行き、裁判官や調停委員が夫婦間の言い分を聞き、金額を調整して提示します。

ここで合意できない場合は審判に移行し、裁判所が金額を決定して支払いを命じることになります。婚姻費用の分担請求調停は、申し立てた時から請求でき、別居を始めた時期に遡って請求することはできません。そのため、別居を始めた段階から婚姻費用が支払われていない場合は速やかに調停を申し立てましょう。

婚姻費用の分担請求調停とは|調停で聞かれることや申立ての流れ

弁護士への相談

別居中の婚姻費用の負担を嫌がる夫は少なくありません。「自分が住宅ローンを払っているから」「離婚を前提とした別居だから」などの理由で婚姻費用を支払う必要はないと考えているのです。

こうした夫に対し、弁護士が介入することで生活費の支払いに応じることがあります。離婚問題を取り扱う弁護士なら、夫婦間に生活保持義務があることを説明し、これまでの生活レベルや夫の収入に応じて適切な婚姻費用を提案できます。

別居中の婚姻費用の金額が決まらないときや、そもそも夫が話し合いに応じないといった場合でも、弁護士に相談すれば依頼者に代わって交渉することができます。

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専業主婦が働き始めたら婚姻費用はどうなる?

今は専業主婦でも、将来的には離婚を視野に入れている方は別居中のうちから働き始め、生活の基盤を築く必要が出てきます。では働き始めたら婚姻費用はもらえなくなるのでしょうか。

結論から申し上げると、働き始めても婚姻費用を請求できます。専業主婦だった妻が働き始めてもまだ婚姻している夫婦である以上、婚姻費用が発生していることに変わりはないためです。

ただ、妻が働き始めた後の年収によって婚姻費用も変動します。ここでも婚姻費用算定表の金額を参考に決定できます。例えば、夫の年収700万円、妻の年収が100万円で0~14歳までの子どもが1人いる場合の婚姻費用は10~12万円。妻が働き始めた分、婚姻費用の金額も少なくなっています。

まとめ

どのような事情であれ、婚姻している夫婦にはお互いの生活を支え合う義務があります。一方の婚姻費用が不足している場合は、収入の多い側が少ない側を支えて、婚姻費用を分担する義務があることを忘れてはなりません。

専業主婦だからといって離婚や別居を諦める必要はありません。婚姻期間中なら収入のある夫に対して婚姻費用を請求できます。離婚を考えているものの、夫から婚姻費用を支払ってもらえるかどうか心配という方は離婚問題に詳しい弁護士にお気軽にご相談ください。