できれば穏便に解決したい離婚ですが、財産分与に関してはトラブルが多いのも事実です。財産分与に関して特に多い悩みには「財産分与は拒否できるのか」という内容です。

拒否したい方・された方は財産分与にどのような姿勢で臨むべきでしょうか。この記事では財産分与における拒否についてクローズアップして解説します。

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離婚時に財産分与をしない方法とは

離婚時には養育費や面会交流など様々な問題を夫婦間で協議しますが、お金に関する財産分与は揉めやすく慎重に進める必要があります。夫婦で築き上げた大切な財産を分けるのですから、感情論が優先しトラブルになりやすいのです。

では、離婚時に財産分与をしない方法はあるのでしょうか。

結論から言うと、実は財産分与は「強制ではない」のです。離婚時に法的に強制し、財産を二分するわけではないので、あくまでも当事者間で納得しているのではれば財産分与を行う必要がありません

また、夫婦共有の財産が無い場合はそもそも協議をする必要がないので、財産分与は発生しません。加えて離婚を急いでおりとにかく早く離婚届を出したい場合、財産分与を放棄することも可能です。

財産分与を拒否できるケース

財産分与は「2分の1ルール」に基づいて分与を行うことが多いですが、拒否もできます。本来夫婦間で協議を行い、理想的な着地点を模索することが望ましいですが、夫婦間で一方が財産分与を拒否することも可能です。では、どんな場合に拒否できるのでしょうか。

1.特有財産である

財産分与はあくまでも夫婦間で築いた財産を分けるものです。そのため婚姻前から所有していた財産については「特有財産」とみなし、財産分与の対象にはなりません

婚姻前からあった預貯金や不動産、株式などは分与をする必要が無いので拒否が出来ます。また、結婚後であっても相続や贈与などでご親族から引き継いだ財産も財産分与の対象とはなりません。但し、相手方が財産分与を請求してきた場合には特有財産であるとの立証を行う必要があります。

例えば預貯金なら通帳や取引履歴で婚姻前の財産であることを証明します。保険や株式なら加入日や取得日がわかるものを使い、立証を行う必要があります。

2.除斥期間が終了している

財産分与は離婚から2年以内に請求を行う必要があり、この期間を超えると除斥期間が終わるため請求が出来なくなります

除斥期間は法的に時効とは異なるのですが、性質上は類似しています。つまり、2年を超えると請求権がなくなってしまうのです。

離婚時には「財産分与をしない」と協議が完了していても、やはり生活状況などを背景に請求を行うケースがあります。しかし、除斥期間の終了後なら請求は拒否できるのです。なお、除斥期間の起算日は離婚成立の方法によって下記のように異なっています。

成立方法 起算日
協議離婚 離婚届の受理日
調停離婚 離婚調停の成立日
審判離婚 離婚審判の確定日
裁判離婚 判決の確定日もしくは和解成立日

このように離婚の成立方法により除斥期間の起算日は大きく異なっています。起算日を誤ると除斥期間が過ぎてしまい、財産分与の請求が出来なくなる場合があるので注意しましょう。

3.会社の財産である

会社経営者と離婚する場合によくトラブルになるのが「会社の財産」は財産分与の対象となるのか、という問題です。経営者の方の場合、経営や資産管理上ご自身の名義の財産ではなく、会社名義の財産を所有している場合があります。

特に中小企業の経営者の場合、個人と会社の財産の境界線が曖昧なケースも見受けられます。しかし、会社名義の財産はあくまでも法人の所有とみなすため、私物ではありません。そのため原則としては会社の財産への請求は拒否できることになります。しかし会社の財産でも個人のみなし財産と主張される場合もあります。

この他にも、婚姻前に夫婦間で財産に関する契約を行い、離婚時には財産分与を行わないことに同意していたら、実際の離婚時にも拒否できます。しかし、こうした婚前契約を交わすケースはそれほど多くはないでしょう。

財産分与を請求されたら拒否できない

財産分与の請求が行われたにも関わらず拒否をすることはできるのでしょうか。財産分与は強制ではない、と先に触れましたが夫婦の財産があり、財産分与の請求が行われた場合には応じる必要があります。

財産分与に関する請求は民法第768条第1項に定められており、「財産分与請求権」が法律でしっかりと認められています。

つまり、財産があるにも関わらず夫婦間の悪感情だけで分与を拒否することはできないのです。よくある事例は専業主婦の方が財産分与を拒否されるケースです。家事や子育てを担ってきたにも関わらず就労していなかった、という理由で夫側から預貯金などの財産分与を拒否される場合があります。

しかし、特有財産や会社の財産でもなく、夫婦で一生懸命蓄えてきた財産に対して請求された場合には拒否する方法はないと認識しておきましょう。当事者間で揉めてしまう場合には、調停も視野に入れて話し合いのテーブルを持つことがおすすめです。

財産分与を減らしてほしい!こんな時はどうすればいい?

財産分与の協議はお金の話を当事者間でこなす必要があり、大変ストレスになるやり取りです。では、財産分与をしない方法や、分与を減らす方法はあるのでしょうか。

「財産分与請求権」を放棄してもらう

財産分与を円満に解決するには「財産分与請求権」を放棄してもらうことが方法の1つです。

例えば現在の収入状況が大変厳しい場合、養育費や親権などで大幅に譲歩する代わりに財産分与請求権を放棄してもらうことは現実的な選択肢でしょう。財産分与を請求したい側も、相手に財産がないことを承知しているなら無理に請求を続けてもメリットがありません。

双方が納得のいく着地点が見つかったら、請求権の放棄で協議を終結する方法が考えられます。この場合「やっぱり除斥期間内なので財産分与を請求する」といった後々のトラブルを防ぐために、離婚協議書を公正証書とし、請求権の放棄を法的に有効な方法で残すと良いでしょう。

借金がある場合は財産分与をしない方法も考えられる

離婚時に多い悩みには、住宅ローンを筆頭とした借金の問題があります。財産分与はその名の通り財産を分けることですから、ローンの残債が多く財産がマイナスの状態なら財産分与よりもむしろ別の問題が生じます。

誰が今後借金を返済するのか、売却はするのか等のオーバーローンに伴う問題です。共同債務がある場合には借金も財産分与をして清算することになりますが、場合によっては夫婦の一方が支払いを継続し、その他の財産分与はしない方法も考えられます。

【関連】離婚時の財産分与とは?財産分与の対象になるものと3つの決定方法

財産分与を減らしてほしい場合の対処法

財産分与の請求は一方的に高額の請求を受けることも少なくありません。しかし、夫婦の財産を整理し、適正な金額を主張することで妥当な金額まで減額できることがあります。

高額の財産分与を請求された場合は、特有財産や親族の財産に及んで主張されるケースもあります。冷静に夫婦の財産を洗い出し、法的な助言を受けながら交渉をすることが大切です。財産分与の交渉に悩んだら、弁護士への相談は望ましい対処法の1つでしょう。

【関連】離婚時の財産分与は相談すべき?

財産分与を一方的に拒否される場合の対処法

離婚協議で財産分与をするように主張しても、一方的に拒否されることも少なくありません。しかし、財産分与は浮気や借金など離婚原因を作ってしまった方も請求権を有しており、主張することに問題はありません。

また、専業主婦や収入格差のある夫婦でも財産分与を請求する権利があります。相手方との話し合いが硬直化した場合には、離婚調停へ移行し、調停の場を使って協議を進めることも検討しましょう。

財産分与は法的な助言を受けて解決を

今回は財産分与を拒否する場合やしない方法について触れていきました。財産分与に関しては除斥期間や公正証書、夫婦の財産調査やオーバーローンの問題など様々な問題を含んでいます。

調停に移行する場合は申立の準備も必要です。1つ1つの問題を丁寧に解決するためにも、法的な助言を得ながら進めることがおすすめです。財産分与に悩んだら、まずは弁護士へご相談ください。