自己破産をする人は、どのような理由で借金を背負ってしまったのでしょうか?
2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査(日本弁護士連合会)によると、負債原因1位は生活苦・低所得61.69%(複数回答)だったようです。
この記事では、自己破産の理由に関して以下の点をご説明します。
- 自己破産の理由
- 借金の理由別|自己破産が認められるかどうか
自己破産の原因・理由とは?
ここでは自己破産の原因について解説します。
負債原因
最新(2020年)の日弁連の調査によると、負債原因は次のとおりです。
負債原因 | 割合(複数回答) |
生活苦・低所得 | 61.69% |
病気・医療費 | 23.31% |
失業・転職 | 17.58% |
給料の減少 | 9.60% |
事業資金 | 16.13% |
負債の返済(保証以外) | 20.48% |
保証債務 | 9.44% |
第三者の債務の肩代わり | 2.82% |
名義貸し | 1.29% |
生活用品の購入 | 14.76% |
教育資金 | 9.84% |
冠婚葬祭 | 1.61% |
住宅購入 | 7.26% |
ギャンブル | 7.18% |
浪費・遊興費 | 11.37% |
投資(株式,会員権,不動産等) | 1.53% |
クレジットカードによる購入 | 9.35% |
その他 | 15.00% |
参考:2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査 |日本弁護士連合会
1位 生活苦・低所得(61.69%)
1位は生活苦・低所得です。
自己破産した人の6割以上が多重債務に陥った原因として生活苦・低所得をあげています。
低所得のため生活が苦しく、生活費が足りなくなります。クレジットカードを利用して日用品を購入したり、キャッシングをしたりするうちに、借金が増えてしまいます。
所得の増加が見込めず、借金が返済できないため自己破産するケースが多くあります。
2位 病気・医療費(23.31%)
2位は病気・医療費です。
これまで健康で普通に働いていたのに、病気をきっかけに多重債務に陥るケースも多いです。
当事務所にご相談いただいた方でも次のような方がいらっしゃいました。
- 治療のために仕事を休まざるを得ず、収入が減った
- 病気で働けなくなり仕事を失った
- 医療費がかさみ、これまでは返済できていたローンが返済できなくなった
3位 負債の返済(保証以外)(20.48%)
3位は保証以外の負債の返済です。
借金返済のために借金をすると、いわゆる自転車操業の状態になります。
他社から借金をして利息だけ返済しても、なかなか元本が減らずに自己破産の相談にいらっしゃる方も少なくありません。
破産者の年齢比率
日本弁護士連合会「2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、これまで自己破産した人の年齢比率は次のとおりです。
年代 | 割合 |
20歳未満 | 0% |
20歳代 | 9.92% |
30歳代 | 15.89% |
40歳代 | 26.94% |
50歳代 | 21.45% |
60歳代 | 16.37% |
70歳代以上 | 9.35% |
参考:2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査 |日本弁護士連合会
30歳代から60歳代までの破産者が多いです。
特に40歳代・50歳代が多いのは主に次の理由です。
- 住宅ローンや車のローンが払えなくなる
- 子の学費が思っていた以上にかかる
- 親の介護のため実家への交通費や病院代がかさむ
負債額
負債額帯 | 20 調査 |
100万円未満 | 8.39% |
100~200万円未満 | 13.87% |
200~300万円未満 | 14.52% |
300~400万円未満 | 11.13% |
400~500万円未満 | 7.42% |
500~600万円未満 | 5.56% |
600~700万円未満 | 4.76% |
700~1000万円未満 | 8.71% |
1000~2000万円未満 | 11.05% |
2000~3000万円未満 | 5.65% |
3000~4000万円未満 | 2.50% |
4000~5000万円未満 | 1.05% |
5000万円~1億円未満 | 1.77% |
1億円以上 | 2.90% |
不明 | 0.73% |
参考:2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査 |日本弁護士連合会
今回の調査での平均負債額は1,449万9,580円でした。
負債額は大きなかたよりはありません。
1,000万円の借金があっても無理なく返済できる人もいれば、100万円未満の借金でも返済が難しい人もいます。借金が返済可能かどうかは、収入や財産によって異なります。
借金の返済が苦しい方は、債務金額は気にせず弁護士にご相談ください。
借金の原因・理由別|自己破産が認められるかどうか?
ここではよくある借金の理由と、自己破産認められるかどうかを解説します。
奨学金による借金
自己破産は可能です。
奨学金は自己破産の免責対象となっているため、裁判所に申し立て、支払い不能と認められれば返済義務がなくなります。
実際に独立行政法人日本学生支援機構が発表しているデータによると、平成28年度には2009人の人が奨学金を理由に自己破産をしています。
参考:奨学金返還者の自己破産に関する報道について|独立行政法人日本学生支援機構
突然働けなくなったことが理由の借金
自己破産は可能です。
ただし突然働けなくなったことを理由として自己破産の申し立てをする場合、次の4点を裁判所に示して認められる必要があります。
- 借入の理由が浪費やギャンブルではないこと
- 生活費の不足や事故による修理代の支出その他やむを得ない事情があること
- 病気により就業の継続が困難であること
- 治療費や検査代、薬代の支出が今後も継続的に必要であること
- 返済が不可能であること
借金返済がむずかしい場合、さらに借り入れをするのではなく、自己破産を検討するのも1つです。
ギャンブルなどの浪費による借金
ギャンブルなどの浪費による借金をしてしまった場合、免責不許可事由に該当し自己破産の申し立てをしても認められない場合があります。
免責不許可事由とは、自己破産の免責が認められない借金の原因や不当な行為のことです。
具体的な免責不許可事由とは、それぞれ次のとおりです。
債務者の財産を減少させる行為
不当な債務負担行為
特定の債権者に利益があるように支払いをする行為
浪費やギャンブルによる借金
詐術による信用取引
帳簿を隠すこと
嘘の債権者名簿を提出する
裁判所への説明を拒絶もしくは嘘の説明をする
管財業務を妨害する行為
過去7年以内に免責を受けたことがある
破産法上の義務違反行為
引用:破産法
このようにギャンブルなどの浪費による借金は、免責不許可事由に該当することから免責が認められない可能性もあります。
もっとも裁判所が免責を認めるに値すると認めれば、自己破産可能です。
生活保護を受給している方の借金
自己破産可能です。
もっとも基本的に生活保護を受給している人は、新規借り入れはできません。
破産が認められる人は例えば…
- 貯金や不動産などの財産がない
- 怪我や病気などやむを得ない事情で収入が得られない
- 給付金を受け取ることができない
- 生活支援してくれる家族や親戚がいない
- 収入があっても少額で生活できない
すでに生活保護を受給している人が、自己破産をせざるを得ない借金をしてしまうと、収入があるとみなされて受給額が減額されたり、打ち切られたりする可能性があります。
年金受給者が借金をしてしまった場合
年金受給者が借金をしてしまった場合であっても、自己破産可能です。
また自己破産をすることで、年金を受け取ることができなくなるのではと思われがちですが心配はありません。
自己破産をしても公的年金に対しては影響がないため、引き続き受給できます。
ただし公的年金ではない個人年金の場合、差し押さえされる可能性があります。
慰謝料が払えない場合
慰謝料は非免責債権に該当する場合があるので、自己破産が認められる場合と認められない場合があります。
非免責債権は自己破産しても支払い義務が免除されないものであり、具体的には次のとおりです。
租税等の請求権
破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
夫婦間の協力及び扶助の義務
婚姻から生ずる費用の分担の義務
子の監護に関する義務
引用:破産法
慰謝料請求権は上記2に該当しないため自己破産が認められる場合があります。
税金が払えない
税金は非免責債権に該当するため、自己破産しても免除されません。
免除されない税金の具体例は次の通りです。
- 所得税
- 贈与税
- 相続税
- 市町村民税
- 固定資産税
- 自転車税
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
税金が払えずに困っている場合、まずは借金問題などを自己破産で解決して、分納手続きをしてから滞納した税金を支払う必要があります。
まとめ
自己破産をする原因は個人によって様々です。
自己破産をする人の多くに共通しているのが、収入が少ないことや収入が減ってしまったことにあります。
実際に弁護士連合会による「2020年 破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、自己破産をする理由のほとんどが生活苦や失業によるものです。
収入が減ってしまうと、借金の返済で生活費がなくなってしまい、生活レベルを維持するために再び借金を積み重ねることもあるかもしれません。
借金で生活の余裕がなくなってしまった人は、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
経験豊富な弁護士に相談すれば、自己破産だけではなく他の選択肢による解決策も提案してくれるため、その人に合わせた解決を図ることが可能です。