自己破産のデメリットとは?家族や仕事への影響と注意点

借金問題を解決する手段として知られる自己破産ですが、マイナスイメージが強く、不安を抱く方も多いです。
自己破産とは、借金返済の見込みがない旨裁判所に申立て、返済について免責を得るための手続です。裁判所に認められれば、借金返済の義務はなくなります。
この記事では、自己破産のデメリットと、生活に及ぼす影響について解説します。

目次

自己破産の5つのデメリット

ここでは、自己破産のデメリットについて、詳しく解説します。

財産を処分しなければならない

自己破産を申立てると、原則として所有している財産はすべて処分しなければなりません。財産を換価し、債権者に配当するためです。

破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。

引用:破産法34条1項 e-GOV

とは言え、生活必需品や手持ち現金のすべてを処分されては、せっかく自己破産をして借金を無くしても、その後の生活が成り立ちません。

そこで、生活に必要だと認められる一定の財産は、自由財産(手元に残せる財産)として処分の対象から外されます。

自由財産として手元に残せる財産については、後述(「自己破産のメリット」で説明)します。

処分の対象になる可能性がある財産を、個別に見ていきましょう。

現金

ここで言う現金とは、預貯金を含まず、手持ち現金のみを指します。

破産法の規定により、99万円を超える現金は処分の対象です。

ただし、名古屋地方裁判所の原則的な運用では、自由財産として認められる財産の合計額に上限があり、現金を含めて99万円までです。これを超える場合は、99万円の範囲で残す財産を選択します。

例えば、90万円の現金と解約返戻金が20万円の生命保険があるとします。

現金と生命保険とを個別に考えれば、それぞれ自由財産の範囲内ですが、財産の合計額は110万円で、自由財産の上限99万円を11万円オーバーします。

生命保険を残したい場合は、上限を超えた11万円分の現金を破産管財人に引継ぎ、手元に残せる現金は79万円という計算です。

預貯金

預金残高が20万円を超える預貯金は、処分の対象です。

口座が複数ある場合は、すべての口座の残高の合計額で評価します。

財産の中には、預貯金のように評価額が変動しやすいものがありますが、評価のタイミングは破産手続開始決定時です。

自己破産を申立てると、裁判所は、書類に不備が無いかなどをチェックします。不備があれば補正をしたうえで破産手続開始決定がなされるため、申立てと開始決定には、1ヶ月程のタイムラグが生じます。

この間に臨時収入があって、一時的に残高が増えた場合でも、破産手続開始決定時に20万円を超えていれば、超過分は処分しなければなりません。

不動産

土地・建物は原則として処分の対象となります。

資産価値が低ければ例外的に処分されないこともありますが、自己破産を行う場合、マイホームの維持は難しいでしょう。

住宅ローンが残っている場合は、住宅ローン債権者により抵当権が行使されます。具体的には競売にかけられ、その代金を金融機関が回収します。破産管財人が任意売却することもあります。

自動車

自動車やオートバイも換価処分の対象です。

ローンが残っていれば、ローン会社が引き揚げます。ただし、名古屋地方裁判所では、実務上の運用基準が設けられており、新車価格やメーカー、初年度登録からの経過年数によっては無価値と判断され、手元に残せる場合もあります。

生命保険

処分の対象となる財産は、不動産や自動車などに限らず、金銭請求権のような債権も含まれます。

生命保険も換価処分の対象財産で、保険を解約した際に支払われる保険解約返戻金を基に価値が判断されます。

解約返戻金が20万円以下の場合には、自由財産として認められることがあります。解約返戻金が無い掛け捨ての保険であれば、保険契約を継続できます。

退職金

実際に退職する必要はありませんが、勤務先の退職金規定を基に、仮に今退職したらいくら支払われるのか(退職金支給見込額)を算出します。

将来的に発生する見込みのある退職金請求債権も、破産者の財産とみなされるためです。

退職金支給見込額の1/8を評価額とし、評価額が20万円以上の場合は処分の対象です。この場合は、同額の現金を積み立てて破産管財人に納めます。

近々退職する予定がある場合には、退職金支給見込額の1/4で評価されます。

美術品・骨董品・宝飾品

美術品、骨董品や宝飾品は、生活必需品ではないため、換価処分の対象です。

例えば高価な腕時計も同様で、破産管財人が専門業者に査定を依頼し、資産価値を判断したうえで換価します。

職業や資格の制限がある

資格制限

自己破産手続をすることで、一部の資格の取得ができなくなったり、資格を失ったりすることがあります。

この制限は一時的なもので、破産手続が終結し、免責許可を受ければ復権します。破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでの期間は、多くの場合3ヵ月から半年程度です。

制限に該当するかは、それぞれの職業の制度を規定する法令に定められており、代表的なものは次のとおりです。

  • 宅地建物取引士(宅地建物取引業法第18条)、社会保険労務士(社会保険労務士法第5条)、中小企業診断士(中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則第5条)などの士業
  • 警備員(警備業法14条1項)
  • 通関士(通関業法31条2項1号)

許認可の取り消し

以下のような特定事業を行うための許認可は、その登録者(申請者)が自己破産することで取り消されることがあります。

  • 建設業の許可
  • 産業廃棄物処理業の許可
  • 古物商の許可
  • 酒類の製造免許、販売免許

委任関係の終了(取締役の欠格事由)

会社の取締役(代表取締役)の地位にある人が自己破産をすると、取締役を退任します。

民法上、会社と取締役などの役員とは委任契約の関係にあるとされています。委任契約は、その当事者が破産手続開始決定を受けることによって、当然に終了します。

ただし、破産者であることは会社法が定める取締役の欠格事由には該当しません。

自己破産手続中であっても、株主総会で選任されれば再び取締役に就任できます。

日常生活で受ける制限がある

自己破産手続中は、日常生活において次のような制限を受けます。

居住地の変更

破産申立時の居住地から離れるときは、裁判所の許可を得なければなりません。

「居住地を離れる」とは、転居だけでなく、長期の出張や旅行も含まれます。もっとも、やむを得ない事情があれば、比較的容易に許可を得られます。

自己破産前の引越しや旅行に制限はありませんが、特段の必要性もなく多額の費用を費やすことは、浪費と判断される可能性があります。

破産手続が終了したあとは、自由に引越しや旅行ができます。

郵便物の転送

自己破産を申し立てて破産管財人が選任されると、郵便物は差出人を問わずすべて破産管財人に転送されます。

破産管財人はその職務の一環として、破産者宛の郵便物を開封し、内容をチェックします。その後、郵便物は破産管財人から受け取れますが、通常時より受け取りまでに時間を要します。

郵便物の転送は、破産手続の終了をもって解除されますが、裁判所や郵便局での処理によって若干の遅れが生じることもあります。

なお、破産手続には破産管財人がつかないもの(同時廃止事件)もあり、この場合、郵便物は転送されません。

高額な支出

破産手続開始時に所有していた財産の管理・処分は、破産管財人にゆだねられます。

しかし、破産手続開始後に取得した財産は、手続中であっても処分の対象になりません。

原則自由に使えますが、あまりにも高額な買い物や不必要な支出は浪費とみなされる可能性がありますので、事前に弁護士に相談した方がよいでしょう。

信用情報機関に事故情報が登録される

信用情報機関とは、個人の信用情報を登録・管理する機関で、自己破産をすると事故情報として登録されます。

金融機関は貸付審査の際にこれを確認します。そのため、事故情報の登録があると、クレジットカードの作成ができず、新規ローンも組めなくなります。

借金ができないことは、破産後の生活再建の点ではメリットにもなりますが、事故情報の登録により賃貸借契約や車のローンの審査が通らない可能性もあります。

既存のクレジットカードも使えなくなるので、公共料金や携帯電話料金をクレジットカード決済にしている場合は、あらかじめ支払方法の変更が必要です。

官報に掲載される

官報とは、国が発行する新聞のようなものです。例えば、法律の制定や改正などが官報によって公告されます。

官報は誰でも購入・閲覧でき、インターネット版官報では直近30日分が無料で公開されています。

自己破産をすると、債権者や利害関係者に周知するために官報に掲載されます。

掲載される情報

官報に掲載される情報は、主に次の内容です。

  • 氏名
  • 住所
  • 手続内容
  • 管轄裁判所
  • 決定年月日時など

掲載されるタイミング

破産手続中、官報への掲載は2回あります。

  • 1回目:破産手続開始決定時
  • 2回目:免責許可決定時

周囲に知られるリスク

金融機関や不動産業者の担当者など、官報を仕事で扱っている人を除いては、日常生活で官報を閲覧する機会はほとんどありません。官報に掲載されることで周囲に知られるリスクは低いでしょう。

自己破産による家族への影響・デメリット

自己破産は、あくまで破産する当事者個人に関する手続です。法律的効果は本人以外に及びませんが、暮らしを共にする家族には、少なからず影響があるでしょう。

ここでは、自己破産による家族への影響・デメリットを解説します。

自己破産が家族に及ぼすデメリット

自己破産が家族に及ぼすデメリットには、次のものが挙げられます。

財産処分による影響

自己破産手続では、所有財産を処分しなければなりません。

例えば、マイホームが処分の対象となれば、同居家族も退去を余儀なくされます。車も同様に、家族で使用しているものが処分されると生活に支障をきたすでしょう。

このほかに、生命保険や学資保険などの積立型の保険は、被保険者が家族であっても、破産をする人が契約者の場合は、原則として換価処分の対象です。解約返戻金の金額や保険継続の必要性によっては、例外的に解約を免れることもありますので、まずは弁護士にご相談ください。

家族が保証人の場合

自己破産をすると、保証人がついている債務は保証人に返済義務が生じます。

家族が保証人になっている場合は、家族に請求されます。家族も支払える見込みがなければ、同時に債務整理を検討した方がよいでしょう。

家族の協力が必要なこともある

自己破産手続では、家計の状況を記した書面を裁判所に提出します。

これには家計を共にする同居の家族の収支も記載します。

同居の家族に収入がある場合、名古屋地方裁判所では原則として家族の給与明細や年金振込通知書を提出しますので、家族の協力が不可欠です。

家族に影響しないこと

自己破産をしても、次の点では家族に影響はありません。

家族の財産

自己破産による財産処分の対象は、破産者の所有財産のみです。

家族と共有名義の財産がある場合は処分される可能性もありますが、基本的に家族の財産を失うことはありません。

職業や資格、転居の制限

一定期間の資格制限を受けるのは、破産者だけです。家族の仕事や就職、転職には影響しません。

また、転居の制限も家族には及びませんので、自己破産手続中に子どもが進学して一人暮らしを始めたり、結婚して新居を構えたりすることも可能です。

郵便物の転送

破産管財人に転送されるのは破産者宛の郵便物に限られますので、同居の家族宛の郵便物は通常どおり配達されます。

クレジットカード

信用情報機関に事故情報が登録されるのは、破産者のみです。

家族は継続してクレジットカードを利用できますし、新規作成もできます。ただし、家族に破産者がいることで、審査が通りにくくなる可能性はあります。

戸籍や住民票

自己破産したことが、戸籍や住民票に記載されることはありません。

市町村役場が管理する破産者名簿には載りますが、これを第三者が見ることはないので、不利益を被ることはありません。

自己破産による仕事への影響・デメリット

自己破産による仕事への影響は、多くはありません。

基本的には、いままでどおり働くことができますし、転職や再就職も可能です。

ここでは、自己破産が仕事に及ぼすデメリットについて、詳しく解説します。

自己破産が仕事に及ぼすデメリット

制限職種に就いている場合

資格制限に該当する職業に就いている場合は、一定期間、資格を使った仕事はできません。

この間、例えば他部署への異動など、資格がなくてもできる業務に変更可能か検討します。場合によっては自己破産以外の方法を検討しなければなりません。

あらかじめ職場との調整が必要でしょうから、自己破産することを職場に知られます。

デリケートな問題ですので、最善策を弁護士に相談することをお勧めします。

裁判所への出廷

自己破産手続中、少なくとも一度は裁判所へ出廷が求められます。

平日の日中に出向くことになるので、平日勤務の方は仕事を休まなくてはなりません。

破産管財人がつく手続では、破産管財人との面談も行われます。

裁判所よりは日時に融通が利きますが、場合によっては休暇取得が必要でしょう。

自家用車を仕事に使用している場合

車は、原則換価処分の対象です。

仕事に自家用車を使用している場合は、車を手放すことで、仕事が継続できないこともあり得ます。

自己破産以外の方法を含め、あらかじめ検討が必要です。

会社からの借入れがある場合

従業員貸付制度を利用して会社から借入れをしている場合は、会社も債権者として扱います。

債権者へは裁判所から破産手続開始通知書が送付されるため、自己破産を知られます。

仕事に影響しないこと

前述のケースを除いては、自己破産が仕事に影響することはほとんどありません。

特別な事情がない限り会社に知られることもありませんし、万一知られても、自己破産が理由の解雇は認められません。

自己破産申立時の注意点・デメリット

ここでは、自己破産申立時の注意点とデメリットを解説します。

非免責債権は免除されない

自己破産によって免責許可決定を受けると、すべての借金の返済を免れます。

しかし、これには例外があります。

破産法の規定により、以下の債権(非免責債権)については支払義務が残ります。

  1. 租税等の請求権
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 夫婦間の協力及び扶助の義務に係る請求権
  5. 夫婦間の婚姻費用分担義務に係る請求権
  6. 扶養義務および監護義務に係る請求権
  7. 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
  8. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  9. 罰金等の請求権

特に思い違いをされがちなのは租税等の請求権です。自己破産をしても、滞納している国民年金保険料、国民健康保険料や固定資産税の支払いは免除されません。

免責不許可事由があると免責されない

自己破産を申し立てても、必ずしも免責許可を得られるわけではありません。

破産法には、どのような場合に免責が認められないか(免責不許可事由)が明記されており、実際に問題となることが多いのは以下の場合です。

  1. 浪費やギャンブルが原因で多額の借金をした場合
  2. 財産を隠したり、勝手に処分したりした場合
  3. 特定の債権者に対して、その債権者に特別の利益を与えるなどの目的で返済した場合
  4. 破産申立前の1年間に、住所、氏名、年齢、年収等を偽って借金をした場合
  5. 換金目的でクレジットカードを利用して商品を購入したり、架空ローンを組んだりした場合
  6. 過去7年以内に免責を受けたことがある場合
  7. 裁判所や破産管財人が行う調査に協力しなかった場合

これらの免責不許可事由にひとつでも該当すると、原則としては免責が認められません。

しかし、次の場合には裁判所の裁量によって免責が認められることがあります。

  • 免責不許可事由の背景にやむを得ない事情がある場合
  • 該当事由が軽微である場合

実務上、法定の免責不許可事由と完全には一致しないケースや、該当するかの判断が難しいケースもあります。

免責不許可事由に該当するかもしれない場合でも、諦めずに弁護士に相談することをお勧めします。

二度目の自己破産は免責のハードルが高くなる

自己破産に回数制限はありません。2回目、3回目でも手続は可能です。

ただし、2回目以降の自己破産では、1回目よりも免責許可を得るための条件が厳しくなります。

免責不許可の可能性が高いケース

2回目の自己破産で、免責が認められない可能性が高いのは次のケースです。

  • 1回目の自己破産から7年以内
  • 自己破産に至った理由が1回目と同じ

自己破産は借金問題を解決するための最終手段です。

破産者が債務返済の義務を免れる分、債権者の不利益は大きく、簡単に何度でも認められる手続ではありません。

管財事件として取り扱われる

自己破産には、次の二つの手続があります。

  • 破産管財人が選任される管財事件
  • 簡略的な同時廃止事件

管財事件は、同時廃止事件に比べて所要期間と手続費用が多く、破産管財人による精査を受けながら手続が進行します。

資産が無く、免責不許可事由にも該当しない場合には、同時廃止事件での手続を検討するのが一般的ですが、2回目の自己破産では原則として管財事件として取り扱われます。

連絡が取りやすい弁護士を選ぶ

自己破産を弁護士に依頼すると、弁護士から債権者に宛てて受任通知が発送され、債権者からの取立てや督促がストップします。

債権者に対する支払いもストップしますので、一安心ですが、自己破産手続はここからがスタートです。

自己破産の必要書類を揃えるためには、依頼者の協力が不可欠です。

申立時には弁護士と密に連絡を取ることもありますし、書類の記入方法や取付方法で不明点が出てくることもあるでしょう。連絡が取りやすい弁護士を選ぶことも、自己破産手続をスムーズに進めるためのポイントです。

ネクスパート法律事務所名古屋オフィスでは、郵便や電話に加え、メールでの対応も可能です。

時間帯を気にせず、些細なことも気軽にご相談いただけます。

自己破産のメリット

ここまで自己破産のデメリットについて解説してきましたが、自己破産にはもちろんメリットもあります。

ここでは、自己破産のメリットを解説します。

債務の支払義務が免除される

自己破産をして免責が認められると、すべての借金の支払義務がなくなります(非免責債権は除く)。

すべての借金が全額免除されるのは、債務整理の他の方法では得られない、自己破産の最大のメリットです。

家計を圧迫していた返済から解放されるので、生活を立て直せます。

取立てや強制執行を解除できる

弁護士や司法書士から受任通知を受けた債権者は、貸金業法の規定により、取立て行為が禁止されます。

自己破産前に差押えを受けている場合は、破産手続開始によって差押えの手続は中断もしくは取り消されます。自己破産手続中は強制執行を受けることはありませんので、安心して生活できます。

生活に必要な財産は残せる

自己破産をしても、生活に必要な一定の財産は手元に残せます。

本来的自由財産

処分の対象から外れる財産を自由財産といい、破産法に規定されています。

この規定により、当然に自由財産と認められるのは以下の財産です。

  • 破産手続開始後に取得した財産
  • 差押禁止財産
  • 99万円以下の現金
  • 自由財産拡張が認められた財産
  • 破産管財人が破産財団から放棄した財産
破産手続開始後に取得した財産

処分の対象となるのは、破産手続開始決定時に所持していた財産です。

これ以降に得た財産は、自己破産手続中でも基本的に自由に使えます。

ただし、財産の発生原因が破産手続開始決定前にあるものは、換価処分の対象です。

遺産相続を例に挙げると、破産手続開始決定前に相続が発生した場合は、相続財産の受取りが破産手続開始決定後であっても、相続財産は処分対象です。

相続の発生が破産手続開始決定後であれば、自己破産に関わらず相続財産を取得できます。

差押禁止財産

衣服、寝具、家具、台所用具や必要最低限の家電製品などは差押禁止財産に該当し、処分されることはありません。

生活の維持に必要なものは手元に残せます。

99万円以下の現金

99万円以下の現金は、自由財産として所持が認められます。

ただし、名古屋地方裁判所の取り扱いでは、自由財産の合計額に上限があり、現金も含めて99万円までです。

他の財産がある場合は、この範囲内で残す財産を選択し、調整します。

自由財産拡張が認められた財産

本来的自由財産に該当しなくても、例外的に手元に残せる場合があります。具体的には、このあと「自由財産拡張制度」で説明します。

破産管財人が破産財団から放棄した財産

自己破産をすると、破産者の財産(自由財産を除く)は破産財団として破産管財人の管理下に置かれます。

破産管財人は、破産財団を適正に管理、換価処分し、債権者に配当します。

自由財産に該当せず破産財団に組入れられた財産であっても、当該財産の需要が限定的なものや、換価が容易でないもの、保管費用の方が多額になるものもあります。

破産管財人は、裁判所の許可を得て、このような換価困難な財産を破産財団から除外(放棄)することがあります。

破産財団から放棄された財産の管理処分権は、破産管財人から破産者に戻り、自由財産として取り扱われます。

自由財産拡張制度

本来的自由財産以外の財産でも、自由財産拡張の申立て(自由財産の範囲を拡張することを裁判所に申し立てること)をすることで、自由財産として認められることがあります。

自由財産拡張制度について、名古屋地方裁判所の運用基準を抜粋して紹介します。

①評価額が20万円以下の次の財産は自由財産と認める。

  • 預貯金(合計金額で評価する)
  • 生命保険解約返戻金
  • 自動車
  • 住居用家屋の敷金債権
  • 電話加入権(複数本ある場合は1本のみ)
  • 退職金債権(原則として退職金支給見込み額の1/8で評価する)

②①に規定された財産で20万円を超えるものであっても、自由財産として認めることが相当でない事情がある場合を除いては、原則として自由財産と認める。

③①に規定された以外の財産及び破産手続開始決定後に発見された財産は、特段の事情がない限り、原則として自由財産と認めない。

④現金を含めて、自由財産として認められる財産の合計額は99万円までである。

自由財産として認めるかは、これらの基準に基づいて裁判所が判断します。

裁判所には幅広い裁量権があり、事案ごとに破産者の事情を考慮して個別に判断します。

そのため、例外的な取り扱いも多く見受けられ、原則としては処分対象の財産でも、その評価額分の現金を積み立てることで、当該財産を手元に残せる場合もあります。

まとめ

自己破産はメリットが大きい分、デメリットもあります。

借金問題を解決し、経済的再生を図るために、デメリットを過度に恐れることなく利用を検討しましょう。

自己破産手続を適正に利用するためには、ひとりで悩まずに、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。経験豊富な弁護士であれば、借金を抱えた事情や現状を理解し、適切なアドバイスができます。

特に財産の処分や免責許可の判断は、裁判所の裁量によるところが大きく、各地の裁判所によって実務上の運用基準に違いがある部分です。

自己破産は、原則として現在の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てますので、その地域の裁判所の運用に精通した弁護士に相談することをお勧めします。

ネクスパート法律事務所名古屋オフィスでは、名古屋地方裁判所の運用を熟知しています。

弁護士も債務整理の経験が豊富ですので、安心してご相談いただけます。

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