ゼロゼロ融資が返済できない!自力での対応方法3つと5つの法手続き

新型コロナウイルス感染症の影響拡大に伴い、中小企業者への資金繰り支援を強化するために実施された、実質無利子・無担保(利子ゼロ・担保ゼロ)で融資を受けられる制度-ゼロゼロ融資により、当時、辛うじて倒産を免れた企業が多くあります。

しかし、会計検査院による令和4年度決算検査報告によると、政府系金融機関が実施したゼロゼロ融資のうち約1兆が回収不能または回収困難なリスク債権(不良債権)になっていることが報じられています。

この記事では、ゼロゼロ融資が返済できない場合の対応方法を解説します。

目次

ゼロゼロ融資の返済開始後の状況

ゼロゼロ融資の返済を既にスタートしている企業も多く、2023年夏頃から2024年4月までの間に返済開始のピークを迎えます。

返済開始後の状況はどのようになっているのでしょうか?

新型コロナ関連資金繰り支援の2023年3月末までの主な実績をみると、日本政策金融公庫および商工中金等による貸付けの実績は約21兆円(約131万件)であり、このうち中小企業者に対する貸付は、全体の約90%に相当する約19兆(約118万件)を占めています。

会計検査院が貸付状況を調査したところ、2023年3月末時点で、5兆582億円が返済された一方、697億円(7291件)が回収不能と判断され、償却されたことが分かりました。

残りの債権の状況をみると、下表のとおり、約1兆円が回収不能または回収困難な債権とされていることが分かります。

融資先の経営状況に問題がない正常債権13兆5064億円
倒産などの危険があるリスク管理債権8785億円合計約1兆円
実質的に回収不能となっている部分直接償却1246億円

(前記償却済み債権を

合わせると1943億円

上記③のうち、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権は、約124億円です。

回収不能な債権やリスク管理債権の金額は、年々増加しています。

参考:令和4年度決算検査報告の概要 | 最新の検査報告 | 検査結果 | 会計検査院 Board of Audit of Japan (jbaudit.go.jp)

ゼロゼロ融資の返済免除や返済期間の延長・借り換えは可能?

ゼロゼロ融資の返済ができない場合、据置期間や返済期間の延長借り換えを検討してみましょう。経営者様ご自身で対応しうる方法には、主に次の3つの方法があります。

  • 金融機関に据置期間・返済期間の延長を相談
  • 中小企業庁のコロナ借換保証の利用を検討
  • 自治体のゼロゼロ融資専用の借換制度の利用を検討

金融機関に据置期間・返済期間の延長を相談

政府系金融機関・民間金融機関ともに、利息のみの支払いである据置期間は最大5年ですが、多くの企業は据置期間を1~2年で設定しているケースが多いようです。

コロナ禍の打撃を受けたまま経営を立て直せない状況にあり、元金返済開始時期を延期したい場合には、金融機関に据置期間や返済期間の延長を相談してみるとよいでしょう。

国も、資金繰りに困難を抱える企業に配慮し、金融機関に対して据置期間・返済期間の延長や既往債務の条件変更・借り換えなどの継続的な金融支援を要請しています。

参考:「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」を踏まえた資金繰り支援の徹底等について:金融庁 (fsa.go.jp)

中小企業庁のコロナ借換保証の利用の検討

2023年1月10日より、中小企業庁は、民間金融機関のゼロゼロ融資の返済負担軽減のためのコロナ借換保証を開始しました。

この支援策は、一定の要件を満たした中小企業が、金融機関と相談しながら経営行動計画書を作成し、金融機関による継続的な支援を受けることを条件に、借入時の信用保証料を大幅に引き下げて中小企業の経営者の負担を軽減することを目的としたものです。

コロナ借換保証を利用できるのは、以下のいずれかを満たし、経営行動計画書を策定している方です。

Ⅰ セーフティネット保証4号・5号に関する区市町村長の認定受けていること

Ⅱ セーフティネット保証4号・5号に関する認定を受けていないが、次の1~3のいずれかに該当すること

  1. 最近1か月間の売上高が前年同月の売上高と比較して5%以上減少していること
  2. 最近1か月間の売上高総利益率が前年同月、直近決算のいずれかの売上高総利益率と比較して5%以上減少している又は直近決算の売上高総利益率が直近決算前期の売上高総利益率と比較して5%以上減少していること
  3. 最近1か月間の売上高営業利益率が前年同月、直近決算のいずれかの売上高営業利益率と比較して5%以上減少している又は直近決算の売上高営業利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比較して5%以上減少していること

参考:民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。 (meti.go.jp)

自治体のゼロゼロ融資専用の借換制度の利用を検討

一部の自治体では、ゼロゼロ融資を借り換えられる制度信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げる制度等を創設しています。

地元自治体や金融機関に確認してみましょう。インターネットで「(自治体名) コロナ 借換」等で検索する方法でも、一定の情報が得られるでしょう。

ゼロゼロ融資専用の借り換え制度を創設していない自治体でも、既存の制度で借り換えに対応している自治体も多くあります。ゼロゼロ融資の返済に苦慮しておられる場合は、一度、お近くの自治体や金融機関に相談してみるのも一つの方法です。

ゼロゼロ融資を返済できない場合はどうすればいい?|5つの法的手続き

ここでは、ゼロゼロ融資を返済できない場合の対処法について解説します。

据置期間・返済期間の延長や条件変更・借り換えを利用しても、ゼロゼロ融資を返済できる見込みがない場合は、法的整理も検討せざるを得ないこともあります。

法的整理の主な方法として、次の5つの手続きを紹介します。

  • 法人破産
  • 民事再生
  • 会社更生
  • 特定調停
  • 特別清算

どの手続が最適であるかなど具体的なアドバイスを得るためには、弁護士に相談することが大切です。

法人破産

法人破産とは、支払不能や債務超過となった会社について、裁判所によって選任された破産管財人が法人の財産を処分し、法人の債権者に配当することで会社を清算する手続きです。

残念ながら再生が難しいということであれば、無理に借り入れを増やして返済できない債務を増やすのではなく、傷が浅いうちに会社を緩やかに畳んでいくのも一つの方法です。

「倒産=生活のすべてを失う」というイメージが強いと思いますが、その後の人生に永久的に影響を及ぼすようなデメリットはありません。

資金繰りの悩みや債権者からの取り立てから解放されるため、平穏な日常を取り戻すことができ、新たなスタートを切るための準備ができます。

法人破産については、「法人破産の手続きの流れや必要書類・予納金・弁護士費用相場を解説」をご参照ください。

民事再生

民事再生は、裁判所が選任した監督委員の監督の下、債務者が財産・債務を自ら管理・処理しながら再生計画案を立案し、それが裁判所に認可された場合には,その再生計画に従って債務を弁済する手続きです。

民事再生は、株式会社に限らず、あらゆる法人が利用できます。

債務の一部を免除してもらうだけでなく、不採算部門の廃止や人員整理を行う等の体制改善を行うことを再生計画に盛り込み、会社の再建を目指します。

民事再生の手続きの流れやメリット・デメリットは、弊所企業法務サイトの下記記事をご参照ください。

参考:民事再生手続きの流れを解説!手続きにかかる期間の目安はどのくらい?

参考:会社・法人の民事再生手続き|メリットとデメリットを5つずつ解説!

会社更生

会社更生は、裁判所が選任した更生管財人が、債務者の財産・債務を管理・処理します。更生管財人が立案した更生計画案が裁判所によって認可された場合は、債務者がその更生計画に従って債務を弁済する手続きです。

会社更生は、民事再生よりも厳格なルールが定められており、手続きも複雑です。主に大企業が利用することを想定している手続きです。

会社更生の詳細は、弊所企業法務サイトの下記記事をご参照ください。

参考:民事再生と会社更生の違いとは?2つの倒産手続を徹底比較!

特定調停

特定調停は、裁判所の調停委員が仲介役として、債務者と債権者の金銭債務にかかる利害関係の調整を図る手続きです。

特定調停は、私的整理と同様に、対象債権者を金融機関に限定できるので、取引先に事業再生を実行していることを知られずに手続きを進められます。

私的整理との主な相違点は、裁判所が関与するため、債権者との間で調停が成立した場合に、債務名義としての効力を持つ調停調書が作成される点です。

特別清算

特別清算とは、債務超過になった法人を清算し、会社自体を消滅させる手続きです。

清算株式会社主導で全ての手続きが進行するため、法人破産に比べて、簡易・迅速に会社の清算を行えます。

特別清算については、弊所債務整理サイトの記事「特別清算とは?手続きの概要と流れ・破産との違い・メリットを解説 」をご参照ください。

ゼロゼロ融資の返済が困難なときに弁護士に相談・依頼するメリットは?

ここでは、ゼロゼロ融資の返済が困難なときに弁護士に相談・依頼するメリットを解説します。

最適な解決方法を提案してもらえる

先に述べたとおり、法的整理手続きには、事業を消滅させる清算型の手続きと、事業を存続させる再建型の手続きがあります。

どの方法が適しているかは、会社存続の希望の有無、負債・財産の状況等によって異なります。弁護士に依頼すれば、会社の状況に応じて適切な手続きを選択できるようアドバイスしてもらえます。

事業の継続が可能であれば、自助努力による事業改善が可能かどうか再建型の倒産手続きにより再建を図るべきか等のアドバイスを受けられるでしょう。

債権者からの督促を止められる

法的整理または私的整理の依頼を受けた弁護士は債権者に対し、受任通知を送付します。

受任通知には、債権者から債務者への直接の督促を停止させる効果があります。

債権者からの督促が止まることで、精神的な平穏を得ることができ、通常業務や再出発への準備に専念できます。

ただし、受任通知発送による口座凍結のおそれや、取引先・従業員の混乱を招く可能性がある場合は、受任通知を送付せずに手続きに移るケースもあります。

受任通知の効果については、弊所債務整理サイトの記事「受任通知の効果|デメリットと注意点も詳しく解説 」をご参照ください。

複雑な手続きを任せられる

会社・法人の各種整理手続きは、複数の法律やガイドラインで詳細に定められており、その内容は非常に複雑で専門知識が必要です。

選択する手続きによって必要な対応は異なりますが、通常業務を継続しながら自身でこなすことは困難なことが多いです。弁護士に依頼すれば、複雑な手続きを任せられます。

従業員や取引先とのトラブルを回避しやすい

会社・法人を倒産させる場合、経営者を悩ませるのが、従業員や取引先の対応です。

選択する手続きによっては、従業員の解雇が必要になる場合もあります。従業員や取引先には、誠実に対応する必要があります。トラブルが生じた場合、後の手続きや再建計画に支障を及ぼす可能性があるからです。

弁護士に手続きを依頼すると、従業員解雇についての説明や対応、取引先からの質問やクレームの対応も安心して任せられます。

法人破産の準備手続きについては、「会社の倒産前に準備すべきこと・法人破産前に準備すべきことを解説」をご参照ください。

再出発までの見通しを立てられる

会社・法人の負債を整理するにあたっては、初動の段階で、会社の状況に応じて必要な作業の見通しを立て、スケジュールを調整することが重要です。

弁護士に依頼すれば、経験に基づいて具体的な見通しを立てながら、手続きを進められるため、スムーズな再出発を図れます。

ゼロゼロ融資が返済できないときの弁護士への相談のタイミングは?

ゼロゼロ融資の返済が少しでも困難に感じられたら、なるべく早く弁護士にご相談ください弁護士への相談は早ければ早いほど良いです。

法的整理を検討する場合には、手続きによっては安くない費用がかかりますので、資力があるうちに相談されることをおすすめします。

弁護士への相談は早ければ早いほど良い

弁護士にご相談いただくタイミングは、早いに越したことはないと考えております。

なぜなら、経営者の方においてゼロゼロ融資の返済に不安があると認識された時点で、会社の経営状況は悪化していることが考えられ、適切な措置を講じずに、自然に経営状態が回復していくことは考えられないからです。

弁護士であれば、状況を悪化させないためにどのような手段をとるべきかアドバイスできますし、経営改善のフェーズの中でも金融機関との付き合い方や、借り換えの際の注意点などについて助言できることも多くあります。

事業を継続させるためにも、ゼロゼロ融資の返済に関する問題は、なるべく早期に弁護士にご相談いただくことが有用です。

法的整理を検討する場合も資力があるうちに相談を!

早い段階で弁護士にご相談いただければ、より多くの選択肢から最適な解決方法を検討できます。会社を閉じることを検討するには少し早いかなと思うタイミングでご相談いただくことで、破産以外の再建型手続きを選択できる可能性もあります。

資金が完全にショートした後では、費用を工面できず、ご希望の手続きを利用できないこともあります。資金的にある程度の余力があるうちにご相談いただくことをおすすめします。

なお、法律相談の際には、以下の書類をお持ちいただくと、ご相談がスムーズになります。

  • 直近3期分の決算報告書
  • 直近3か月分の試算表・資金繰り表
  • 会社の資産の内容が分かる資料
  • 会社が抱えている負債の一覧表

全て用意するのが難しい場合は、メモ書きでも構いません。

資料を拝見し会社の状況を詳しくうかがった上で、最適な解決の選択肢をアドバイスさせていただきます。

まとめ

ゼロゼロ融資を当初の契約どおりに返済できない場合には、金融機関に据置期間・返済期間の延長や条件変更・借り換えなどを相談しましょう。

金融機関と話し合いがまとまらないときや、各種保証制度・公的支援の利用を検討してもゼロゼロ融資を返済できる見込みがない場合には、弁護士に相談して法的整理手続きの利用を検討してみてください。

法的整理手続きには、一定の費用がかかるので、資金に余裕がある早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

ネクスパート法律事務所では、個々の状況を踏まえ、最適な手続きの方法をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

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