不倫相手の配偶者から不貞慰謝料の請求書を受け取ったあなたは、回答書を送付したいが何をどのように記載すればいいかわからず悩んでいませんか?
この記事では、回答書の書き方やケース別回答書テンプレートなどを紹介します。
「不貞行為の事実は認めるけど、慰謝料を減額してほしい」と考えているなら、回答書を作成する前に確認してみてください。
目次
回答書の書き方を調べる前に知ってほしい大切なこと
回答書は、ネットで紹介されているテンプレート等を利用すればご自身でも作成できるでしょう。
しかし、回答書の書き方を知ることだけが、すべてではありません。
慰謝料を請求された際に重要となるのは、法的な知識や判例、状況を考慮した慰謝料相場、交渉の方法やタイミングです。
重要なポイントを理解しないまま安易にご自身で回答書を作成してしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。
不貞慰謝料の請求書を受け取ったら、まずは無料相談などを利用して弁護士にどのように対応すべきか、今後の方針について相談することをお勧めします。
慰謝料請求に対する回答書を書く前に確認すべき事項
回答書を書く前に確認すべき事項として、主に以下の4つが挙げられます。
- 請求書に書かれている不貞行為の内容が事実か
- 不貞行為に至った経緯についてあなたにも言い分があるか
- 慰謝料の金額が妥当か
- 時効期間が経過していないか
以下で、詳しく解説します。
請求書に書かれている不貞行為の内容が事実か
回答書を書く前に、請求書に書かれている不貞行為の内容が事実かどうか確認しましょう。
不貞行為の期間や回数、態様などが事実と異なる場合は、それを理由に減額を交渉できる可能性があります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 不貞行為は一度きりなのに、複数回と記載されている
- 交際していたのは半年間なのに、請求書には2年間と記載されている
なお、そもそも不貞行為の事実がない場合は、社会通念上既婚者との交際として度が過ぎていると判断される場合を除き、原則として支払い義務は発生しません。
不貞行為に至った経緯についてあなたにも言い分があるか
回答書を書く前に、不貞行為に至った経緯についてあなたにも言い分があるかどうか確認しましょう。
以下のような言い分があれば、それを理由に慰謝料の支払いを拒否または減額できる可能性があります。
交際相手が既婚者だと知らなかった
交際相手が既婚者だと知らなかった場合は、慰謝料の支払いを拒否または減額できる可能性があります。
不貞行為による慰謝料は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償を根拠に請求されます。
そのため、請求が認められるためには、同条の要件を満たすことが必要です。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
すなわち、交際相手が既婚者であることを知らず、かつ、既婚者でないと信じたことに不注意(過失)がなかった場合には、慰謝料の支払義務は発生しません。
交際相手が既婚者だと知らなかったという言い分が通用するケースは多くはありませんが、過失のみが認められた場合には、故意が認められた場合に比べて慰謝料の金額が低くなることがあります。
交際の開始・継続に上記のような事情がある場合には、そのことを裏付ける証拠の有無も含めて、慰謝料の支払いを拒否ないし減額できる可能性があるか確認しましょう。
既婚者だと知らなかったことを示す証拠については、「既婚者だと知らなかったことを示すための証拠の具体例5つ」をご参照ください。
交際を始める前から夫婦関係が破綻していた
交際を始める前から夫婦関係が破綻していた場合は、慰謝料の支払いを拒否または減額できる可能性があります。
夫婦関係がすでに破綻していたのであれば、慰謝料請求の根拠となる平穏な結婚生活という守るべき利益がないからです。
ただし、夫婦関係が破綻していたとは簡単には認められません。夫婦に婚姻を継続する意思がなく、修復不可能なほど関係が悪化していることが客観的に認められる状態でなければなりません。
不倫相手から夫婦関係が破綻していると聞いていただけでは足りず、以下のような事実が必要となるでしょう。
- 夫婦が長期にわたって別居している
- 夫婦の一方が配偶者からDVやモラハラを受けている
- 夫婦双方が離婚の意思を持って具体的な離婚準備を進めている
あなたが不倫相手から、「妻(夫)とはうまくいっていない。」「もうすぐ離婚する。」と聞いていても、それが事実とは限りません。不倫相手が主観的に破綻していると感じているだけでなく、客観的に見ても夫婦関係を修復することは難しいと言えるかどうかを確認しましょう。
慰謝料の金額が妥当か
回答書を書く前に、慰謝料の金額が妥当かどうか確認しましょう。
慰謝料の金額は、法律で定められているわけではありません。請求書に記載されている金額はあくまでも相手方の希望額であるため、相場を超える慰謝料を請求されている可能性があります。
慰謝料の相場は50〜300万円程度です。慰謝料の金額は不倫の期間や回数、夫婦の婚姻期間、離婚の有無など、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されるため、それぞれの状況により異なります。
一度支払いを認めたり、いくらなら払えると提案したりすると、それ以下に減額するのは難しくなるため、安易に金額を提示することは推奨できません。適正な慰謝料額かどうか判断できない場合は、回答書を作成する前に弁護士に相談することをお勧めします。
慰謝料の相場について、詳しくは「不倫(不貞行為)の慰謝料相場と過去の判例」をご参照ください。
時効期間が経過していないか
回答書を書く前に、時効期間が経過していないか確認しましょう。
不貞行為にもとづく慰謝料請求権には消滅時効があります。
以下のいずれかの時点が経過すれば慰謝料を請求する権利が消滅するため、慰謝料の支払いを拒否できます。
- 不貞行為があったこと及びあなたの氏名・住所を知ったときから3年
- 不貞行為があったときから20年
時効期間が経過していることを理由に慰謝料の支払いを拒否するためには、時効の援用をする必要があります。
時効の援用とは、請求を受けた側が「時効期間が経過しているため慰謝料の支払いを拒否する」という意思表示をすることです。
ただし、時効を中断されている可能性もあるため、判断は慎重に行う必要があります。不倫慰謝料の消滅時効について、詳しくは「不倫慰謝料の消滅時効とは|民法改正による変更点」をご参照ください。
慰謝料請求に対する回答書の書き方|ケース別回答書テンプレート
慰謝料請求に対する回答書の例として、以下の5つのケースの回答書テンプレートを紹介します。
- 不貞行為の期間・回数を争う場合
- 既婚者だと知らなかった場合
- 相手方の婚姻関係が破綻していた場合
- 経済的な事情により慰謝料の支払いが困難で減額を求める場合
- 時効が成立している場合
不貞行為の期間・回数を争う場合
不貞行為の期間・回数を争う場合の回答書の例文は、以下のとおりです。
回答書 令和○年○月○日 (相手配偶者の氏名)○○ ○○ 様 貴殿から送付された令和○年○月○日付請求書を拝受いたしました。これに対し、以下のとおり回答いたします。 私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と令和○年○月〜令和○年○月頃まで交際し、肉体関係をもったことは事実でございます。貴殿に多大な精神的苦痛を与えてしまいましたこと、深くお詫び申し上げます。 もっとも、貴殿が請求する慰謝料○○万円は、判例の傾向に照らしても高額に過ぎます。私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と肉体関係をもったのは1回限りであり、(不倫相手の氏名)○○ ○○様からの強い誘いを断ることができなかったためです。 これらを踏まえて、○○万円のお支払いをもってお許しいただきたいと考えております。 ご検討の程よろしくお願いいたします。 (あなたの住所)○○○○○○○○ (あなたの氏名)○○ ○○ |
【注意事項】
※適切な回答書の書き方は、事案により異なります。テンプレートの利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
既婚者だと知らなかった場合
既婚者だと知らなかった場合の回答書の例文は、以下のとおりです。
回答書 令和○年○月○日 (相手配偶者の氏名)○○ ○○ 様 貴殿から送付された令和○年○月○日付請求書を拝受いたしました。これに対し、以下のとおり回答いたします。 私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と肉体関係をもったことは事実でございます。しかし、私は(不倫相手の氏名)○○ ○○様が既婚者であるとは知らされておらず、(不倫相手の氏名)○○ ○○様からは独身者であると伝えられていました。 貴殿からの請求書で(不倫相手の氏名)○○ ○○様が既婚者であったことを知り、困惑しております。 したがって、本書面をもって、貴殿からの慰謝料の請求には応じない旨を回答させていただきます。 (あなたの住所)○○○○○○○○ (あなたの氏名)○○ ○○ |
【注意事項】
※適切な回答書の書き方は、事案により異なります。テンプレートの利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
相手方の婚姻関係が破綻していた場合
不貞行為開始前に相手方の婚姻関係が破綻していたことを理由に慰謝料の支払いを拒否する場合の例文は、以下のとおりです。
回答書 令和○年○月○日 (相手配偶者の氏名)○○ ○○ 様 貴殿から送付された令和○年○月○日付請求書を拝受いたしました。これに対し、以下のとおり回答いたします。 私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と肉体関係をもったことは事実でございます。しかし、貴殿と(不倫相手の氏名)○○ ○○様は令和○年○月頃から別居をされており、婚姻関係は破綻していましたので、私と(不倫相手の氏名)○○ ○○様の関係により慰謝料が発生することはありません。 したがって、本書面をもって、貴殿からの慰謝料の請求には応じない旨を回答させていただきます。 (あなたの住所)○○○○○○○○ (あなたの氏名)○○ ○○ |
【注意事項】
※適切な回答書の書き方は、事案により異なります。テンプレートの利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
経済的な事情により慰謝料の支払いが困難で減額を求める場合
経済的な事情により慰謝料の支払いが困難で減額を求める場合の回答書の例文は、以下のとおりです。
回答書 令和○年○月○日 (相手配偶者の氏名)○○ ○○ 様 貴殿から送付された令和○年○月○日付請求書を拝受いたしました。これに対し、以下のとおり回答いたします。 私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と令和○年○月〜令和○年○月頃まで交際し、肉体関係をもったことは事実でございます。貴殿に多大な精神的苦痛を与えてしまいましたこと、深くお詫び申し上げます。 ご請求いただいた慰謝料の支払いにも誠意をもって応じたい所存でございます。しかし、現在経済的な余裕がないため、○○万円のお支払いをもってお許しいただきたいと考えております。 ご検討の程よろしくお願いいたします。 (あなたの住所)○○○○○○○○ (あなたの氏名)○○ ○○ |
【注意事項】
※適切な回答書の書き方は、事案により異なります。テンプレートの利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねますので、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
時効が成立している場合
時効が成立している場合は、消滅時効を援用する旨を記載して、時効援用の意思表示をしましょう。例文は、以下のとおりです。
回答書 令和○年○月○日 (相手配偶者の氏名)○○ ○○ 様 貴殿から送付された令和○年○月○日付請求書を拝受いたしました。これに対し、以下のとおり回答いたします。 私が(不倫相手の氏名)○○ ○○様と肉体関係をもったことは事実でございます。しかし、私と(不倫相手の氏名)○○ ○○様の不貞行為に基づく慰謝料請求権は、すでに消滅時効期間が経過しており、時効が完成しております。 したがって、本書面をもって消滅時効を援用しますので、その旨ご通知いたします。 (あなたの住所)○○○○○○○○ (あなたの氏名)○○ ○○ |
【注意事項】
※適切な回答書の書き方は、事案により異なります。テンプレートの利用に伴い損害等が生じた場合でも、当サイトでは一切責任を負いかねます。時効期間が経過しているかどうかの判断も含め、事前に弁護士に相談することを強くおすすめします。
回答書を作成する際に留意すべき3つのポイント
回答書を作成する際に留意すべき主なポイントは、以下の3つです。
- 相手方の記載に対してわかりやすく回答する
- 相手方の感情を逆撫でするような文言は控える
- 相手方が定めた期限内に回答書を送付する
以下で、詳しく解説します。
相手方の記載に対してわかりやすく回答する
回答書を作成する際は、相手方の記載に対してわかりやすく回答するよう心がけましょう。
回答書の内容が複雑だと、誤解が生じる可能性があるためです。
回答書は、相手方の記載に対してひとつひとつ回答するのが望ましいです。例えば、不貞行為の事実に関する記載に対して、不貞行為の有無を回答します。
その後の交渉につながるため、できる限り正確な内容をわかりやすく記載しましょう。
相手方の感情を逆撫でするような文言は控える
回答書を作成する際は、相手方の感情を逆撫でするような文言は控えましょう。
つい感情的になって不適切な文言を記載してしまうと、状況を悪化させることになりかねません。あなたとは交渉できないと判断されて、訴訟を提起されるおそれもあります。
相手方の感情を逆撫でするような感情的な言葉は避けて、事実や要求を端的に記載しましょう。
相手方が定めた期限内に回答書を送付する
可能な限り、相手方が定めた期限内に回答書を送付しましょう。
請求書に記載された期限は、相手方の判断により決められています。期限以内に返答しなければ罰則を受けるといった法律上のルールが存在するわけではありません。しかし、期限内に連絡をしなければ、相手方は今後の対応を考えることになります。
通常考えられる選択肢は、以下の2パターンです。
- 改めて期限を定めた上で催促をする
- 交渉はできないと判断し、訴訟を提起する
そのため、期限を過ぎてしまいそうな場合、まずは相手方に連絡を入れることが大切です。
回答書を作成する前に弁護士に相談したい、準備をした上で返事をしたいといった場合には、相手方に連絡をして、期限までに返事や入金ができないことを伝えた上で、回答の目途を伝えましょう。1〜2週間程度であれば、待ってくれることも多いでしょう。
相手方が定めた期限内に、何らかのレスポンスを行いましょう。
まとめ
不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に対して、安易に回答書を作成して送付することは推奨できません。支払義務のない慰謝料やあなたの責任を超える高額な慰謝料の支払いを認めてしまうおそれがあるためです。
回答書を作成する前に、今後どのように対応すべきか弁護士に相談することをお勧めします。
慰謝料について相手方と交渉をしたいがご自身で対応するのが不安であれば、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
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