配偶者の不倫相手から慰謝料を獲得するために、まずは弁護士費用を調べてみたところ、「結構かかるな…。」と感じた方もいるでしょう。できるだけ費用をかけずに慰謝料を獲得したいと考えるのも当然です。
もちろん、弁護士を立てなければ慰謝料請求できないわけではありません。
弁護士を立てずに慰謝料請求をすることで、弁護士費用がかからずに済むというメリットがあります。
ご自身で慰謝料請求する場合には、まず、法的にやってよいこと・ダメなことを把握することが大切です。
不倫されたからといって、何をしてもよいわけではありません。
あなたの行動によっては、慰謝料が獲得できなくなったり、逆に訴えられたりといったことにもなりかねません。
この記事では、ご自身での慰謝料請求を考えている方に知っておいてほしいことについて解説しています。
ぜひ参考にしてください。
目次
弁護士を立てない場合と立てた場合で獲得できる慰謝料額は変わる?
「不倫した事実があって、証拠もあるのだから、弁護士を立てても立てなくても獲得できる慰謝料は変わらないのでは?」
このような認識を持っている方が多くいらっしゃいます。
しかし、獲得できる慰謝料額は、交渉力次第で変わります。
不倫の慰謝料の相場は、数十万~300万円程度です。相場だけでもこれだけの幅がありますから、最終的にいくらで合意できるかは相手との交渉次第になります。
交渉では、慰謝料を請求する側は増額できる事情とその根拠を、慰謝料を請求されている側は減額できる事情とその根拠を主張し合うことで、最終的な慰謝料額を決めていきます。
つまり、できるだけ多くの慰謝料を獲得したい場合には、増額できる事情とその根拠をしっかりと主張できなければなりません。
増額できる事情があったのにもかかわらず、それに気づかずに交渉を終えてしまったため、「本当はもっと慰謝料を取れたのに…。」なんてこともよくあります。
弁護士には、法的な知識と培ってきた交渉力がありますから、弁護士を立てた場合には、弁護士費用を差し引いても、結果として獲得できる慰謝料が高くなる可能性が高いでしょう。
弁護士を立てず自分で慰謝料請求する場合の基本的な流れ
弁護士を立てずに自分で慰謝料請求する方法には、次の2つがあります。
- 相手と直接話し合う
- 訴訟を提起する
まずは相手との示談を試みて、相手が応じない・合意ができない場合には訴訟提起を検討するという流れが一般的です。
もちろん、はじめから訴訟を提起することも可能です。
以下、それぞれの流れを簡単に解説します。
相手と直接話し合う場合
相手と直接話し合う場合の流れは、次のとおりです。
①相手と何らかの方法でコンタクトを取る
まずは、相手に電話や内容証明郵便等で慰謝料請求をする旨を伝えましょう。
相手とコンタクトを取る方法としては、内容証明郵便がおすすめです。
内容証明郵便には、いつ・誰に対して・どのような内容の書面を送ったかを日本郵便株式会社が証明してくれるという特徴があります。
そのため、相手に本気度が伝わりやすく、何らかのリアクションを返してくれる可能性が高くなります。
内容証明郵便には、慰謝料請求をした事実を証拠として残せるといったメリットもあります。
②相手が応じた場合は交渉を始める
相手が応じた場合は交渉を始めましょう。
慰謝料額や支払方法のほか、今後の連絡や接触を禁止する等の条件を話し合いで決めていきます。
③合意内容がまとまったら示談書を作成する
合意内容がまとまったら示談書を作成しましょう。
将来のトラブルを回避するために、合意内容は必ず書面で残すようにしましょう。
④相手が応じない・合意ができない場合には訴訟提起を検討する
相手から何らの返答もない・交渉はしたが話し合いがまとまらない場合には、訴訟提起を検討しましょう。
相手から何らの返答もない場合、訴訟提起をする前に一度弁護士名義で内容証明郵便を送ることで、相手から何らかのアクションがあるといったケースも多いです。
ここまでご自身で対応してみて、相手が何らのアクションも起こさない場合には、訴訟提起を検討する前に弁護士に相談するのもひとつの方法でしょう。
最初から訴訟を提起する場合
最初から訴訟を提起する場合の流れは、次のとおりです。
①必要書類を裁判所に提出する(訴訟提起)
必要書類を裁判所に提出しましょう。
訴訟を提起するにあたって必要なものは、主に次のとおりです。
- 訴状
- 証拠書類
- 申立て手数料(収入印紙)
- 郵便切手
②裁判期日で主張・証拠を出し合う
相手が応訴した場合には、裁判期日が開かれます。
通常、裁判は1回で終わるわけではなく、複数回に分けて行われます。
各期日の中で、あなたと相手それぞれが主張と立証を行います。
③和解または判決で終わる
お互いの主張や証拠が出そろったら、裁判所から和解案が提示されることがほとんどです。
和解案にお互いが合意すれば、訴訟手続きは終了します。
不倫の慰謝料請求訴訟は、その半数以上が和解で終了しています。
和解は、確定判決と同一の効力がありますから、和解で終了したにもかかわらず、相手が慰謝料を支払わなかった場合には、強制執行が可能です。
和解が成立しない場合には、裁判官が判決を言い渡します。
弁護士を立てず慰謝料請求する際に事前に準備すべき3つのこと
配偶者の不倫が発覚したからといって、すぐに不倫相手に連絡をするのは避けた方がよいでしょう。
慰謝料請求する際には、まず次の3つの準備をしっかりと行いましょう。
相手の氏名・住所を特定する
相手の氏名・住所を特定しましょう。
慰謝料請求するには、相手の氏名・住所の特定をする必要があります。
相手がどこの誰なのか全く分からない場合には、慰謝料請求は難しいでしょう。
相手のLINEやSNSを知っている場合には、そこから情報を取得するのもひとつの方法です。
不倫の証拠を集める
できるだけ多くの証拠を集めましょう。
証拠がなくても慰謝料請求すること自体は可能です。証拠がなくても、相手が不倫の事実を認め、慰謝料の支払いに応じてくれるケースもあります。しかし、証拠がないまま相手を問い詰めた場合、言い逃れをされたり、不貞行為そのものを否定されたりするケースもあります。
ですから、確実に慰謝料を獲得するためには、事前に慰謝料請求の根拠となる十分な証拠を集めておくことが重要です。
不貞行為を立証する証拠となるものには、主に次のようなものが挙げられます。
- ラブホテルや不倫相手の自宅に出入りしている写真や動画
- メールやLINEでのやり取りの履歴
- ドライブレコーダーの会話記録
- ラブホテルに宿泊した際の領収書やクレジットカードの明細
- 片方の不貞行為を認める発言
- 探偵の調査報告書
証拠集めの方法や注意点について、詳しくは「浮気の証拠になるもの13選と自力で証拠を集めるポイント・注意点」の記事をご参照ください。
請求する慰謝料額を決める
請求する慰謝料額を決めましょう。
できるだけ多くの慰謝料を取りたいと考えるのは当然のことでしょう。
しかし、いくら高額な慰謝料を請求しても、交渉の場合には、相手の合意を得られなければ慰謝料を獲得できません。
妥当な慰謝料を獲得するためには、次の2つが大切になります。
- 不倫慰謝料の相場
- 相手の資産状況
不倫慰謝料の相場を確認する
不倫慰謝料の相場は、数十万~300万円程度です。
交渉によって慰謝料を請求する場合には、当然にこの相場に拘束されるわけではありません。しかし、相場から大きくかけ離れた金額では、相手の合意を得ることは難しいでしょう。
慰謝料を請求するうえで、あなたの状況やあなたと配偶者との関係、不倫相手の状況などあらゆる要素を考慮して適正な慰謝料額を決定します。
慰謝料を決める際に考慮される要素については、次のようなものが挙げられます。
- 夫婦の婚姻期間
- 夫婦の子どもの有無やその年齢
- 夫婦が離婚したか否か
- 不貞行為が始まった経緯
- 不貞行為の期間や回数
- 反省や謝罪の有無
- 慰謝料の受取りの有無
- 不倫相手の妊娠の有無
- 慰謝料請求される側の収入
- 不貞行為された側の精神的影響の程度
どれくらいの金額が妥当か、増額できる事情はあるかをきちんと調べておきましょう。
相手の資産状況を考慮する
慰謝料の支払い義務があるにもかかわらず、収入や資産がないことを理由に慰謝料の支払いを免れることは許されません。
しかし、相手の収入や資産が少ない場合には、現実的な回収見込みを考えると、ある程度金額面や支払方法の面で譲歩するのが無難でしょう。
たとえば、相手が一括での支払いが難しいような場合には、分割払いでの支払いを提案するのもひとつの方法です。相手の支払い能力を考えれば、分割払いに応じる方が現実的に慰謝料を受け取れる可能性が高い場合も多々あります。
ただし、分割払いには支払いが滞りやすいというデメリットもあります。
分割払いにする場合には、支払いが滞った場合にすぐ強制執行の手続きを取れるように、強制執行認諾文言付き公正証書を作成するのがおすすめです。
弁護士を立てず自力での慰謝料請求を成功させる3つのポイント
弁護士を立てず自力での慰謝料請求を成功させるためのポイントとして、次の3つが挙げられます。
最終的なゴールを明確にする
最終的なゴールを明確にしましょう。
とにかくなるべく多くの慰謝料を支払ってほしいのか、慰謝料の額よりも今後の配偶者との関係(接触禁止など)を重視したいのか、考えは人それぞれかと思います。
交渉の場合には、慰謝料のほかにも相手が合意する限り、例えば「今後二度と○○(あなたの配偶者)と連絡や接触をしない」「合意内容に違反した場合には違約金を支払う」といった条件を決めることも可能です。
何を一番重視したいのかを明確にしておきましょう。
冷静に話し合いをする
冷静に話し合いをしましょう。
弁護士を立てずに当事者同士で話し合いをすると、どうしても感情的になってしまう傾向にあります。
相手が不倫を認めなかったり、曖昧な返答を繰り返したりするような場合には、怒りの感情が沸き上がってきてしまうのも仕方ありません。
「不倫を認めないなら、家族や職場にバラしてやる!」
感情的になってこのような発言をしてしまった場合には、脅迫罪に問われる可能性があります。
慰謝料を獲得できないだけでなく、逆にあなたが訴えられるなんてことにもなりかねませんから、あくまで交渉の場では冷静でいることを心がけましょう。
過剰な要求はしない
過剰な要求はしないようにしましょう。
感情的になり金銭以外の内容を過剰に請求してしまうケースが多々あります。
例えば、相手に謝罪を要求するケースです。不倫された側からすると相手に謝罪をしてほしいと考えるのは当然でしょう。
しかし、法律上、不倫をした人に課せられるのは慰謝料の支払い義務であって、謝罪する義務はありません。
相手が謝罪を拒否した場合には、強制的に謝罪を要求することはやめましょう。
慰謝料の獲得に向けて全力を注ぎ、そのほかのことは過度に要求しないほうが、慰謝料獲得は成功しやすいでしょう。
弁護士を立てず自力で慰謝料請求する場合の4つのリスク
弁護士を立てず自力で慰謝料請求する場合のリスクは、主に次の4つです。
証拠が不十分なことを理由に言い逃れされる可能性
証拠が不十分なことを理由に言い逃れされる可能性があります。
「不倫の証拠はあるから、弁護士に頼まなくても慰謝料を取れるだろう。」
自力で慰謝料請求をしようとしている人の中には、このように考えている人がいるでしょう。
あなたとしては十分な証拠であると思っていても、実際には証拠として不十分であるケースも少なくありません。
相手が不貞を素直に認める場合には、十分な証拠がなくても慰謝料を獲得できる可能性はありますが、証拠が不十分なことを逆手にとって言い逃れをしてくる人は多いです。
交渉がまとまらない場合、最終的には訴訟提起をすることになります。
訴訟の場合には、証拠がなければ請求は認められませんので、結局相手には何も請求できないということにもなりかねません。
無視される・連絡が取れなくなる可能性
無視される・連絡が取れなくなる可能性があります。
あなた本人が慰謝料請求した場合、相手が本気として受け取らず、無視されるケースが多くあります。
交渉の途中で、連絡が取れなくなることもあるでしょう。
弁護士がついていないことから、無視しておけばいずれ請求してこなくなるだろうと甘く捉えられる可能性があります。
相手に弁護士がついた場合には交渉が不利に進む可能性
相手に弁護士がついた場合には交渉が不利に進む可能性があります。
弁護士は、不貞行為が立証可能であるのか、慰謝料額は妥当であるのか等、様々な観点から反論してきます。
交渉経験のほとんどない素人が、弁護士相手に対等に交渉するのは難しいでしょう。
交渉力に大きな差がついてしまい、最終的に慰謝料額で大きな損をしてしまう可能性があります。
話し合いがまとまらない場合には、訴訟提起を検討することになりますが、訴状の作成や証拠書類の収集・提出には法的な知識が必要になることから、ご自身ですべて対応するのは難しいでしょう。
将来トラブルが発生する可能性
将来トラブルが発生する可能性があります。
当事者同士で交渉した場合、慰謝料の合意をしたにもかかわらず、後から「そんな合意をした覚えはない。」「相手に脅されたから合意せざるを得なかった。」などとトラブルになるケースが多々あります。
このようなトラブルの蒸し返しを防ぐためには、きちんとした示談書を作成する必要があります。
示談書の内容に不備があったり、合意内容を破った際のペナルティの設定をしていなかったりすると、結局、相手に言い逃れをされることにもなりかねません。
まとめ
ご自身での慰謝料請求を成功させるためには、次の3つのことを意識しましょう。
- 最終的なゴールを明確にする
- 冷静に話し合いをする
- 過剰な要求はしない
相手との交渉がスムーズに進まないけれど、できれば訴訟は避けたいと考えている場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、早期に解決できるようなケースも多々あります。
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