「身に覚えがないのに不倫の慰謝料請求をされた。」というケースはまれにあります。
例えば、友人や同僚として社会常識の範囲内で交流があるだけなのに慰謝料を請求されたり、全くの人違いで慰謝料を請求されたりするケースです。
いきなり慰謝料請求の通知が来たら、誰でも動揺してしまいますよね。相手の誤解や勘違いでも、慰謝料請求自体が精神的に大きな負担になるでしょう。
相手が知人や職場の人に、「あの人は不倫している。」と広めてしまったら、様々な方面に影響を与えます。
こういった場合、精神的な苦痛を受けたことを理由に、逆に慰謝料請求をできるのでしょうか?
この記事では、主に次のことについて解説しています。
- 根拠のない慰謝料請求で精神的苦痛を受けた場合の慰謝料請求の可否
- 不当な請求だと思っていても慰謝料の支払い義務が生じうるケース
- 身に覚えがない慰謝料請求をされた場合の対処法
ぜひ参考にしてください。
目次
根拠ない慰謝料請求で精神的苦痛を受けたら逆に慰謝料請求できる?
まれに、全く身に覚えがない慰謝料請求をされたというケースがあります。
根拠のない慰謝料請求をされた場合、むしろ相手に慰謝料請求したいと考えるかもしれません。たしかに、きちんとした根拠や証拠がないにもかかわらず勝手に勘違いをした相手にも責任はあります。
ですが、単なる相手の誤解・人違いの場合には慰謝料請求は難しいでしょう。しかし、相手の行動によっては慰謝料請求できる可能性もあります。
単なる相手の誤解・人違いの場合には慰謝料請求は難しい
単なる相手の誤解・人違いの場合には慰謝料請求は難しいです。
そもそも、精神的苦痛を理由に慰謝料請求をするためには、何らかの不法行為が必要です。単に相手の誤解や勘違いで慰謝料請求してきたというだけでは、不法行為には該当しません。
誤解や勘違いであっても、慰謝料請求されたこと自体、精神的に大きな苦痛を受けたかもしれません。
しかし、単なる相手の誤解・人違いの場合には慰謝料請求は難しいでしょう。
名誉棄損や脅迫で慰謝料請求できる可能性もある
名誉棄損や脅迫で慰謝料請求できる可能性もあります。
単なる誤解や人違いで慰謝料請求してきたというだけでは、不法行為には該当しません。
しかし、慰謝料請求の過程で、相手が次のような行動を取った場合には、慰謝料請求できる可能性があります。
- 知人や職場に不倫の事実を言いふらした
- 不倫を認めなければ家族にバラすと脅された
このような場合には、名誉棄損罪や脅迫罪が成立する場合があります。
単なる誤解・人違いで慰謝料請求をされただけでなく、このような過度な行為がある場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
不当な請求だと思っていても慰謝料の支払い義務が生じうるケース
「身に覚えがない慰謝料請求をされた。」と相談にいらっしゃる方の中には、不当な請求だと思っていても実際には慰謝料の支払い義務が生じるケースがあります。
不当な請求だと思っていても慰謝料の支払い義務が生じうるケースの代表例は、次のとおりです。
- 肉体関係のない友達付き合いしかしていないケース
- とうの昔に関係を解消したケース
以下、詳しく見ていきましょう。
肉体関係のない友達付き合いしかしていないケース
肉体関係のない友達付き合いしかしていないケースです。
肉体関係はなく、2人で食事をしたり、頻繁に連絡を取り合ったりしている場合が挙げられます。古くからの友人や職場の同僚と親しい付き合いがある人も多いでしょう。
不倫慰謝料の支払い義務が生じるには、原則、肉体関係があったことが必要です。
2人で食事をしたり、頻繁に連絡を取り合ったりしているというだけでは、肉体関係に該当する行為がありませんから、慰謝料の支払い義務が生じる可能性は低いでしょう。
このように当事者の一方または双方が既婚者である場合の交際として、節度ある友達付き合いをしていたケースであれば慰謝料の支払い義務が生じる可能性はありません。しかし、たとえ肉体関係がなくても、社会通念上、社会的妥当性の範囲を逸脱する交際態様があった場合には、慰謝料の支払い義務が生じる可能性があります。
必ずしも肉体関係がなかったから慰謝料の支払い義務もないといえるわけではありません。実際に、肉体関係がなくても慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります。
したがって、交際の態様によっては慰謝料の支払い義務が生じる可能性もあるでしょう。
肉体関係がなくても慰謝料の支払い義務が生じるケースと裁判例について、詳しくは「不貞行為なしで慰謝料請求された!あなたの危険度チェックと8つの裁判例 」の記事をご参照ください。
とうの昔に関係を解消したケース
とうの昔に関係を解消したケースです。
不倫関係にあったことはたしかだけれど、とうの昔に関係を解消していて、今は完全に連絡を絶っている場合が挙げられます。
過去の不倫は、時効期間が経過している場合には、時効の援用をすることで慰謝料の支払いを免れる可能性があります。
不倫の慰謝料請求の時効は次の2つに分けられます
- 不貞行為があったこと及び加害者の氏名・住所を知った時から3年
- 不貞行為があった時から20年
あなたが不倫相手と関係を解消したのが20年以上前のケースには、慰謝料請求権は時効にかかっている可能性が高いでしょう。
問題は、20年は経っていなくても、3年以上前に関係を解消したケースです。
3年の期間が進行するのは、慰謝料を請求する側が不貞行為があったこと及び加害者の氏名・住所を知った時です。つまり、慰謝料を請求する側が不貞行為があったこと及び加害者の氏名・住所を知った時から3年が経過していない場合には、慰謝料の支払い義務が生じる可能性が高いでしょう。
なお、時効の成立の有無については専門的な知識を必要としますから、過去の不倫で慰謝料請求された場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
過去の不倫で慰謝料請求された場合について、詳しくは「過去の不倫の慰謝料を請求されたら支払うべき?時効と対処法を解説 」の記事をご参照ください。
慰謝料請求されたことが精神的に苦痛でもやってはいけない3つのこと
慰謝料請求されたことが精神的に苦痛でもやってはいけないことは、次の3つです。
請求を無視する
請求を無視しないようにしましょう。
身に覚えがない慰謝料請求の場合、こちらが対応する必要はないだろうと無視する人がいます。
しかし、請求を無視すると相手が裁判を起こしてくる可能性があります。裁判も無視した場合、全く身に覚えがなくても慰謝料の支払いを命じる判決が出されてしまう可能性もあります。
請求を無視することであなたの立場が悪くなってしまうことも考えられますから、請求は無視しないようにしましょう。
なお、全く知らない相手から、身に覚えのない事実に対して慰謝料請求された場合は、積極的に対応する必要はないかもしれません。
相手にいわれるまま示談書に署名押印をする
相手にいわれるまま示談書に署名押印をしないようにしましょう。
身に覚えがないケースでは、慰謝料請求される可能性を予想できませんから、いきなりの慰謝料請求に動揺してしまう人がほとんどでしょう。
事を大きくしたくないという気持ちから、相手に言われるがまま示談書に署名押印してしまう人もいます。
しかし、一度示談書に書面押印してしまうと、原則合意内容を撤回できません。たとえ根拠のない慰謝料請求であったとしても、一度合意した示談書の内容を変えることは難しいでしょう。
したがって、相手にいわれるまま示談書に署名押印しないようにしましょう。
感情的になる
感情的にならないようにしましょう。
身に覚えがない慰謝料請求をされたら、怒りが湧くのは当然です。
相手と話し合うにしても、相手があなたの話に聞く耳を持たなかったり、強気な態度で交渉してきたりすると感情的になってしまう気持ちもわかります。
しかし、お互いが感情的になることで話し合いが平行線になってしまっては、解決しようにも難しくなってしまいます。
したがって、話し合いをする際には感情的にならないようにしましょう。
身に覚えがない慰謝料請求をされた場合の2つの対処法
身に覚えがない慰謝料請求をされた場合の対処法として、次の2つが挙げられます。
誤解であることを説明する
誤解であることを説明することです。
まずは、どのような内容で請求されているのかを確認しましょう。
そのうえで、記載内容に心当たりがない場合には、その旨を冷静に請求者に伝えましょう。
弁護士に相談する
弁護士に相談することです。
相手に誤解であることを説明しても納得してもらえないことが多いでしょう。
弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
- 支払い義務の有無について判断してもらえる
- 交渉から解決までのすべてを任せられる
したがって、相手との交渉が負担に感じるようであれば、弁護士に相談しましょう。
まとめ
身に覚えがない慰謝料を請求されたら、精神的に大きな負担を受けることは避けられません。
相手の誤解や全くの人違いで慰謝料を請求されたら、逆に慰謝料請求したいと考えることでしょう。しかし、単なる誤解で慰謝料請求されたに過ぎない場合には、慰謝料請求は難しいでしょう。
相手から過度な行為がされている場合には、慰謝料請求できる場合もあります。
身に覚えが全くない場合や慰謝料の支払い義務が生じるか判断するのが難しい場合には、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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