不貞行為は離婚や慰謝料の請求理由になり得ますが、どこからが不貞行為となるのでしょうか。
この記事では、どこからが不貞行為なのか、不貞行為の解釈の仕方について詳しく解説します。
どこまでならセーフでどこからがアウトなのか、具体的な行動を挙げて解説しますので、ぜひご一読ください。
どこからが不貞行為?不貞の定義
離婚原因としての不貞は、配偶者以外の者と肉体関係を持つことと解されています。慰謝料請求の場面では、肉体関係以外も不貞と解されることがあります。
以下で、詳しく解説します。
離婚原因としての不貞は配偶者以外の者と肉体関係を持つこと
民法第770条1項1号に定める離婚原因としての不貞は、配偶者以外の者と肉体関係を持つことと解されています。
つまり、裁判で不貞を理由に離婚を請求する場合は、原則として肉体関係を持った事実が必要です。離婚を請求する側が、他方配偶者が自分以外の者と肉体関係を持ったことを証明しなければなりません。
離婚原因としての不貞は、配偶者以外の者と肉体関係を持つことです。
慰謝料請求の場面では肉体関係以外も不貞と解されることがある
慰謝料請求の場面では、肉体関係以外の行為も不貞と解されることがあります。
慰謝料請求は、民法第709条に定める不法行為に基づく損害賠償請求権を根拠とします。
不貞行為が不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為だからです。
[不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題](安西二郎著・判例タイムズ1278号45~64頁)では、加害行為としての不貞を、離婚原因としての不貞と同一に解すべき必然性はなく、肉体関係以外の行為も加害行為としての不貞となりうると述べられています。
したがって、慰謝料請求の場面では、肉体関係がなくても、婚姻共同生活の平和の維持という権利や利益を侵害する行為があれば、不貞と解される可能性があります。
慰謝料請求の対象となる不貞行為の定義に関する裁判所の考え方
不貞相手に慰謝料請求ができることを再確認した最高裁昭和54年3月30日判決は、夫婦の一方と肉体関係を持った者に、故意または過失がある場合は、他方配偶者の権利を侵害したものとして、他方配偶者に対して慰謝料の支払い義務を負うと示しました。
この判例で、肉体関係という言葉が用いられたことから、慰謝料請求の対象となる加害行為としての不貞も、原則的には肉体関係を伴う場合に限定されるのではないか、と考えられてきました。
しかし、近年では、肉体関係を伴わない交流・接触も不貞行為に該当する、とする裁判例も出てきています。
この二つの考え方を以下で詳しく解説します。
肉体関係がある場合に限るとする考え方
肉体関係がある場合に限るとする考え方を示した判例です(東京地裁令和元年12月26日判決)。

Yが、AとXとの間に不貞行為を疑わせる反復継続的な私的交際があったとして損害賠償請求をしたところ、Xは、そのような交際はなかったと主張し、Yに対し、損害賠償請求債務は存在しないことの確認を求めた。
裁判所は、不貞行為が他方配偶者に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為という前提を示しつつ、これらの権利または利益を侵害する行為は、性交渉またはこれに準じる行為があった場合に限るのが相当だとしています。
証拠上、XとAとの間に、少なくとも1回以上の性交渉に準じる行為があったことが認められないことから、不法行為は成立しないと判断しました。
性交渉またはこれに準じる行為の具体例は、「不貞行為にあたる肉体関係の定義とは?みんなの疑問6選を徹底解説」で解説しています。
肉体関係が存在する場合に限らないとする考え方
婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流、接触も不貞行為に該当すると判断した裁判例もあります(東京地裁令和元年5月30日判決)。

Xが、Aと不貞行為を行ったYに対し、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。
裁判所は、そもそも不貞行為とは、肉体関係が端的なものであるが、婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流・接触であれば不貞行為に該当すると解されると述べ、AY間の以下の一連の行為が、不貞行為に該当すると判断しました。
- 容姿や肉体的な接触に言及したメールのやり取りがある
- 2人で食事に行っている
- 長女も交えた3人でドライブや食事に行っている
- 夜間に2人きりで部屋で密会している
- 少なくとも2時間、部屋で密会している
- 密会した部屋はYの私的空間といえる
- AはYと密会していることをXに告げず、虚偽の説明をしている
| 【補足】 この事例以外にもなお、親密な交際そのものを不貞行為とは判断していないものの、不法行為が成立するとして慰謝料を認めた裁判例は数多くあります。詳細は、「不貞行為なしで慰謝料請求された!あなたの危険度チェックと8つの裁判例」をご参照ください。 |
どこまでならセーフ?どこからがアウト?
「結局、どこまでならセーフで、どこからがアウトなの?」と疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。本章では、具体的な行動を挙げて不貞行為に該当するか否かを解説します。
2人きりで食事に行く
2人きりで食事に行くだけでは、原則として不貞行為にはあたりません。
単に2人きりで食事に行っただけでは、婚姻共同生活の平和を侵害したとまでは言い難いからです。
ただし、過去に肉体関係があった当事者が頻繁に2人きりで食事に行ったり、配偶者が交際をやめるように告げた後も続いている等の事情があり、それが原因で婚姻関係の破綻を招いた場合には、その行為自体が婚姻共同生活の平和を脅かす違法な行為と評価される可能性があります。
2人きりで食事に行くことで起こり得るトラブルは「職場の既婚者の異性と二人きりで食事はNG?起こり得るトラブルを紹介」で詳しく紹介しています。
手をつないで歩く
手をつないで歩くだけでは、原則として不貞行為にはあたりません。
手をつないで歩いた手をつないで歩いたという事実だけでは、婚姻共同生活の平和を侵害したとは言い難いからです。
もっとも、狭い部屋に男女が数日間にわたり一緒に宿泊し、外に出た際に体を密着させて手を繋いで歩いていた、など肉体関係の存在が窺われる場合には、婚姻共同生活の平和を損なう行為と評価される可能性はあります。
キスやハグなどのスキンシップをする
一度キスしただけ、軽くハグしただけなどのケースは、不貞行為と言い難いでしょう。
しかし、一般的に許容されると考えられる、友人としてのスキンシップを遥かに越える接触は、婚姻共同生活の平和の維持という利益を害する可能性があります。
実際に、不貞行為の存在は否定されたものの、キスやハグだけで慰謝料が認められた裁判例もあります。
詳細は、「キスだけで浮気になる?既婚者とキスだけの関係を続けるリスクを解説」で紹介しています。
2人きりで旅行する・ホテルに泊まる
2人きりで旅行する・ホテルに泊まると、不貞行為の存在が推認される可能性があります。
以下のようなケースでは、不貞行為があったと推認される可能性が高いです。
- ラブホテルを利用した
- 宿泊先で肉体関係を持ったことを匂わせるLINEやメッセージのやり取りがある
大人の男女が2人きりで旅行した・ホテルに泊まったとなれば、周囲が「2人は肉体関係を持った」と考えるのも不思議ではありません。
たとえ肉体関係を持っていなくても、他方配偶者はショックを受けるでしょう。婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある異性との交流・接触として、慰謝料請求の対象となることも考えられます。
2人きりで旅行する・ホテルに泊まると、不貞行為があったと推認される可能性があります。
深夜に会う
深夜に会うだけでは、原則として不貞行為にはあたりません。
ただし、過去に不貞関係にあった2人が深夜に何度も会っていれば、配偶者に「不貞関係を再開したのでは?」という疑いを抱かせるのに十分な行為とも言えます。
当事者の属性や過去の不貞行為の有無、会った時間帯や頻度等によっては、婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性のある加害行為として、慰謝料請求の対象となる可能性があります。
異性の自宅に出入りする
異性の自宅に出入りする行為自体は、原則として不貞行為にはあたりません。
ただし、以下のようなケースでは、婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性のある加害行為として慰謝料請求の対象となる可能性があります。
- 何度も自宅に出入りする
- 宿泊したり、長時間滞在したりする
- 自宅に出入りする以外にも親密な行為がみられる
実際に、不貞行為の存在は認めないものの、自宅への出入りにより婚姻関係が破綻したとして慰謝料が認められた裁判例もあります。
異性の自宅に出入りすれば、配偶者が嫌悪感を抱いたり、不貞行為を疑ったりするのは致し方ないでしょう。やむを得ない事情がある場合を除き、異性の自宅に出入りすることは避けた方が無難です。
自宅への出入りで慰謝料が認められた裁判例は、「家の出入りは不貞行為にあたる?証拠収集時のポイントも紹介」で紹介しています。
ペッティングをする
ペッティングは、不貞行為に該当します。
肉体関係には、挿入を伴う性行為だけでなく、以下のような性交類似行為も含まれます。
- 裸で抱き合う
- 手淫
- ペッティング
- オーラルセックス
- アナルセックス
ペッティング等の性交類似行為は不貞行為にあたります。
性風俗店を利用する
性風俗店の利用は、原則として不貞行為にあたります。
対価としての金銭を支払って性行為や性交類似行為を行ったとしても、法律上の不貞行為に該当します。
ただし、ただの客としてではなく、既婚者であることを知りながら店外で肉体関係を結んだ場合などを除き、性風俗店で業務として性的サービスを提供した相手に慰謝料を請求することは、原則として難しいでしょう。
性風俗店通いが長期に及んでいた場合や、それによって別居や離婚に至った場合には、慰謝料の支払い義務が生じる可能性もあります。
性風俗店の利用も、不貞行為に該当します。
まとめ
離婚原因となる不貞行為は、配偶者以外の者と肉体関係を持つことですが、慰謝料請求の場面では、肉体関係がなくても不貞と解されるおそれがあります。
「これくらいなら大丈夫だろう」と安易に判断せず、立場をわきまえた行動を心がけることが大切です。
不貞行為を理由に慰謝料請求されたら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
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この記事の監修弁護士

はじめまして。ネクスパート法律事務所 東京オフィス弁護士の石田志寿です。
これまで家事事件をはじめ、不倫慰謝料や離婚など男女問題に特化した事件に携わってまいりました。その中でも、夫婦関係や不倫問題のご相談は、法律論だけでなくお気持ちへの配慮が重要となる分野だと強く感じております。
私が大切にしているのは、まずお話を丁寧に伺うことです。ご相談者様が抱えている不安や葛藤を正確に理解したうえで、法的に適切かつ現実的な解決策をご提案いたします。
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