時効の起算点は長男出生後の1年後であるとして、既に損害賠償請求権は時効により消滅したため請求が棄却された事例

不二夫が愛之助に対し、不二子との不貞行為により離婚に至るなどの精神的苦痛を受けたと主張して慰謝料の支払いを求めた事案である。

愛之助は不二子が不二夫と婚姻関係にあることを知りつつ、肉体関係を結び、その際一度も避妊措置を取らなかったところ不二子が妊娠していることが発覚した。不二子は愛之助の子を妊娠していることを不二夫に打ち明け不二夫が、自己の子として入籍することを決意したことにより、不二子は出産し、愛之助は不二子に対して子の生後10ヶ月くらいまでは出産祝いや節句の祝い、月額50万円の生活費等を渡していたが、愛之助の妻に発覚したことより生活費の支払いを中止した。

その後不二子は愛之助を相手方として養育費の支払いを求める調停をし、子が20歳に達する日の属する月まで月額25万円を支払う調停が成立し、その後愛之助が収入状況の変化を理由に減額訴訟を提起し月5万円の認容判決が出された。

本件は愛之助と不二子との間で不貞行為があったことについては争いがなく、不二夫の愛之助に対する損害賠償請求権は一旦成立しているところ、愛之助が消滅時効の成立を主張し、離婚成立時が不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点となる「損害の発生を知った時」に該当するのが原則であるが、本件は不貞行為が離婚の遠因となってはいるものの、不貞行為から離婚まで相当期間が経過しており、その離婚に至る過程において、権利者が不貞の結果を受け入れたと評価できる事情があり、他方で離婚に至った原因につき、不貞以外の有力な事情が窺われるような場合には離婚が不貞による結果とは直ちに認めがたいものになるから、権利者が離婚以外の不貞の結果を認識したと認められる時点が「損害の発生を知った時」に当たると解するのが相当であるとし、愛之助の子が出生した後も不二夫は愛之助の不貞行為に対する責任追及をすることはなかったこと、不貞行為を認識してから約5年6カ月もの婚姻生活を送ってきたこと等から、消滅時効起算点は、離婚成立時ではなく、遅くとも不二夫が長男の嫡出否認ができなかった時点である長男出生の1年後には愛之助の不貞行為の結果を認識したと考えることができ、愛之助に対する損害賠償請求権は時効により消滅したとされ、不二夫の請求は棄却された。

当事者の情報

不貞期間
請求額1000万円
認容額0円
子供人数1人(9歳)
婚姻関係破綻の有無

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