不貞行為は認められたが、婚姻関係の破綻は認められず、慰謝料150万円となった事例

本件は、不二子が愛子に対し、愛子が不二夫と不貞関係に及んだとして、慰謝料500万円、調査費用及び弁護士費用の合計587万2000円の支払を求める事案です。


愛子は不二夫の中学校時代の二つ年上の先輩で、不二夫が高校生の頃、不二夫と愛子は交際をしていました。愛子と不二夫は16年ぶりにバーで再会し、その後も週に一度程度食事をしながら近況を話し合うようになりました。不二夫は愛子と再会した後から、週末も出勤するとして外出し、夕食も自宅でとらないことが多くなり、不二夫の様子がおかしいと感じていた不二子が、何気なく不二夫のカバンをのぞくと、愛子名義の賃貸借契約書を発見しました。不二夫は仕事部屋として借りたもので、愛子の名義を借りたと述べましたが、そのころから不二夫は不二子に声を荒げたり、離婚を迫るようになり、不審に思った不二子が素行調査を実施したところ、不二夫が愛子と密会を重ねていたことが判明しました。


不二子が、愛子に不二夫との交際を絶つよう要請するため、愛子の自宅を訪れた日の夜、不二夫は、不二子に対し、髪の毛を掴んで殴打するなどの暴行を加え、不二子は全治約2週間の傷害を負いました。翌月にも、不二夫が激昂して不二子に金属製のワインオープナーを投げつけ、不二子は全治約4週間の傷害を負いました。


このように不二子と不二夫との間の夫婦関係が悪化したため、不二子は、代理人弁護士を通じ、愛子に対して不二夫との不貞関係の解消を求めるともに、慰謝料を請求しました。その後、愛子の代理人から、不貞関係はすでに解消しているとの回答があったものの、実際には愛子と不二夫は不貞関係を解消しておらず関係を継続していました。


不二子と不二夫の長男は元気がなくなり、不登校がちになり、メンタルクリニックに通院し、また長男・長女とも、子ども家庭支援センターから紹介された区教育相談室において、月2回程度セラピーを受けていました。


不二夫と愛子は、かつての交際相手という関係を超える親密な関係となり、不二子との間で不法行為を構成する関係に至ったものと認められ、愛子は、当時すでに婚姻関係が破綻していたと主張しましたが、不二子と不二夫の間では当時性交渉も行われ、家族旅行に行くなどしており、当時不二子と不二夫の夫婦関係が破綻していたことを認めるに足りる証拠はありませんでした。


愛子の不貞行為の継続により、不二子と不二夫との婚姻関係は悪化し、夫婦の不和は未成熟子らにも深刻な影響を与えていたこと、愛子は不二子から不貞関係の解消を重ねて求められながら、不貞行為を継続しており、不二子と不二夫の婚姻期間、婚姻の状況、不貞関係をもった期間、態様、本件訴訟に至る経緯その他本件訴訟に顕れた一切の事情を総合して考慮すると、慰謝料として150万円が相当であると裁判所は判断しました。

当事者の情報

不貞期間約2年
請求額587万2000円(うち慰謝料500万円)
認容額205万2000円(うち慰謝料150万円)
子供人数2人(13歳、9歳)
婚姻関係破綻の有無不明(夫婦関係が破綻していたことを認めるに足りる証拠はないため)

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