夫と愛子との不貞関係により精神的苦痛を受けた旨を主張する不二子が、愛子に対し、不法行為に基づき、慰謝料300万円の支払を求めた事案です。
不二子と不二夫は、昭和62年に結婚し、子が2人がいます。東京都内で同居していましたが、不二夫が平成24年からa社の支局長として単身赴任し、別居して生活するようになりました。愛子はa社系列であるb社に勤務しており、不二夫とは、そのころに開かれた業務関係のパーティーで初めて対面し、以降継続的に不貞関係を持っていました。
不二子は、愛子は不貞関係を中止する旨の虚偽を述べた上で関係を継続するなど、その行為態様は悪質である。愛子は、不二夫に対して、交際を継続するために脅迫的な言動や暴行等をしており、主導的な立場にあった。本件不貞関係により、不二子は精神的にも不安定になるなど、重大な精神的苦痛を受けた。等主張していました。
一方愛子は、不二子と不二夫の婚姻関係は、本件不貞関係の開始以前から形骸化しており、不二夫は愛子以外の複数の女性と不倫関係にあった。本件不貞関係は、愛子の同意なく行われた性的関係に始まり、その後も愛子は関係を終了させようとしていたにもかかわらず不二夫が積極的に関係を継続させていた。愛子は、系列局の上役である不二夫からの誘いを断りきれなかった。などと反論しています。
これについて裁判所は、次のように判断しました。
「不二子に嫌気がさしている」、「名古屋にいる間だけでも付き合ってほしい」、「a社の女子社員でエッチしちゃった子はいるよ」などとの不二夫の発言があったとしても、これらの内容が真実又は真意に基づくものであったとは認められず、不二子本人の供述及び陳述等にも照らせば、不二子と不二夫との婚姻関係が、本件不貞関係以前から、慰謝料額の算定に影響を及ぼす程度に悪化していたものと認めることはできない。
また、不二夫は愛子に対して結婚をほのめかしたり、自身の氏名、住所等を記載した婚姻届用紙を愛子に交付したりするなど、本件不貞関係を積極的に維持するためとみられる行動をとっていることが認められる一方、愛子も性的関係を持ったことについて苦情等を述べることはなかったこと、不二夫に会いたい旨のメールを送っていたこと等、その他の事情を総合考慮しても、本件不貞関係について、愛子と不二夫のいずれかの責任を加重又は軽減すべき程度の主導性の差異があったとは考え難い。
もっとも、不二子と不二夫は判決当時も同居しており、婚姻関係が破綻には至っていないことなどから、慰謝料は50万円が相当であると判断されました。
当事者の情報
不貞期間 | 約3年 |
請求額 | 300万円 |
認容額 | 50万円 |
子供人数 | 2人(25歳、22歳) |
婚姻関係破綻の有無 | 慰謝料額の算定に影響を及ぼす程度に悪化していたものと認めることはできない |