「不貞相手の奥さんへの謝罪文はどう書いたらよい?」
謝罪文を書く機会はあまりないですから、何を書いたらよいのか・注意すべき点は何か等、気になることが沢山あることと思います。
この記事では、謝罪文の記載事項や注意点について、例文を交えて解説しています。
不貞をした以上、謝罪の意は示すべきですが、相手に言われるがまま謝罪文を書くと、かえって事態が悪化する可能性もあります。そのため、謝罪文の提出は慎重に考えるべきです。
謝罪文を書く前に知ってほしい6つのことについてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
不貞相手の奥さんへの謝罪文の例を調べる前に知って欲しい6つのこと
相手に言われるがまま、急いで謝罪文を出すと、かえって事態が悪化する可能性があります。
謝罪の意を示すことは大切ですが、謝罪文を送る前に、その影響やリスクを理解することも重要です。
謝罪文を書く前にあなたに知っておいて欲しいことは、次の6つです。
- 謝罪文を書く法的義務はない
- 謝罪文を書くことがプラスに働くかは慎重な判断が必要
- 謝罪文の内容を後から覆すことは難しい
- 謝罪文=慰謝料請求の可否・減額に必ず繋がるわけではない
- 謝罪文の存在が将来まで尾を引く可能性
- 謝罪は謝罪文だけでなく示談書でも対応可能
これらを踏まえ、謝罪文を出す前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
謝罪文を書く法的義務はない
謝罪文を書く法的義務はありません。
不貞を行った場合は、民法上の不法行為に該当し、慰謝料の支払い義務が生じます(民法709条)。慰謝料の支払い義務が生じるのは、民法で定められているからです。
しかし、謝罪文について何らかの義務を定めている法律はありません。
もちろん、不貞を行った以上は、謝罪の意を示すべきですが、謝罪文の形で相手に提出する法的義務はありません。
謝罪文を書くことがプラスに働くかは慎重な判断が必要
謝罪文を書くことがプラスに働くかは慎重な判断が必要です。
相手が謝罪文を要求する理由として、大きく次の2パターンが考えられます。
- とにかく謝罪が欲しい、今後関係を持たない約束が欲しい
- 慰謝料請求の交渉・裁判に向けて不貞を認めた証拠が欲しい
前者の場合は、謝罪文を書くことで相手の気持ちが落ち着き、不貞相手との関係も解消すれば、このまま法的紛争に発展せず終息する可能性もあるでしょう。
しかし、後者の場合は、謝罪文の存在が、今後交渉や裁判に発展した際に、あなたに不利に働く可能性があります。
したがって、相手がどのような理由で謝罪文を要求しているのか、慰謝料請求の意思がどの程度あるのかを慎重に見極める必要があります。
謝罪文の内容を後から覆すことは難しい
謝罪文の内容を後から覆すことは難しいです。
謝罪文を出すことは、相手に何かしら証拠を与えることを意味します。
「すでに不貞を認めているから、謝罪文を書いても問題ないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、不貞を認める旨以外にも、不貞の経緯や不貞相手とのやり取り等の具体的事実を記載すれば、それらも証拠になります。
後から、「やっぱりこの部分は違った。」などと主張することは難しいです。
したがって、謝罪文に書く内容は、慎重に考える必要があります。
謝罪文=慰謝料請求の回避・減額に必ず繋がるわけではない
謝罪文を提出しても、慰謝料請求の回避・減額に必ず繋がるとは限りません。
慰謝料の支払いを免れたい・慰謝料を減額して欲しいとの理由から、謝罪文の提出を積極的に考えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、謝罪文が逆に慰謝料請求を加速させることもあります。
謝罪文の内容が相手の納得いかないものであれば、火に油を注ぐ形で、慰謝料請求を決意させることもあります。相手の納得のいく謝罪文を書くことは難しく、不用意に事実を知らせれば、かえって相手の怒りを増幅させる可能性があります。
謝罪文の中で複数回の不貞を認めれば、それまで証明されていなかった事実が明らかになり、慰謝料の増額に繋がることもあります。
したがって、謝罪文を書けば慰謝料請求の回避・減額に繋がるだろうと安易に考えることはおすすめしません。
謝罪文の存在が将来まで尾を引く可能性
謝罪文の存在が将来まで尾を引く可能性があります。
「謝罪文を書けば、今後法的措置は取らない。」と言われた方もいるかもしれません。
しかし、絶対に慰謝料請求されないとは限りません。
口頭での約束は記録に残らないため、後にその内容を証明できません。
不貞の慰謝料請求の時効は原則3年です。
謝罪文を書いた後も、不貞発覚から3年間は、慰謝料請求される可能性が残ります。
単純に謝罪文だけを渡すことは、紛争が全て解決したことにはならず、慰謝料請求の問題が宙に浮いている状態です。いつ何かしらのアクションを起こされるのではとの不安が付きまとい続けます。
単純に謝罪文だけを書いて渡すことは、トラブルの抜本的な解決にはならず、将来のトラブルを引き起こす可能性があります。
謝罪は謝罪文だけでなく示談書でも対応可能
謝罪は謝罪文だけでなく示談書でも対応可能です。
謝罪の意思を示す方法は、口頭または謝罪文しかないと思う方も多いかもしれません。
しかし、示談書にも謝罪文の盛り込みが可能です。
示談書では、当事者を以下のように表記することが多いため、これを前提に例文を見てみましょう。
- 甲:不貞相手の配偶者(請求者)
- 乙:あなた(被請求者)
例えば、謝罪の意思を示す条項として、以下のような文言を設けることがあります。
【謝罪条項】 乙は、甲に対し、甲の配偶者○○○○と不貞行為を行ったことについて、深く謝罪する。 |
謝罪文のみを先に提出すると、今後何らかの請求がされる可能性が残ります。
しかし、示談書の中に盛り込めば、示談交渉で合意した内容と同時に取り交わせます。
【清算条項】 甲及び乙は、甲と乙の間には、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
さらに、示談書には、一般的に、上記のような清算条項を記載します。
清算条項を入れることで、お互いにこれ以上何らかの請求がなされることを防げます。
したがって、示談書に謝罪を盛り込むのも相手に謝罪を示す一つの方法です。
【例文付き】不貞相手の奥さんへの謝罪文に記載する4つの事項
謝罪文には決まった形式はなく、相手がどのような謝罪文を要求しているのかによって書くべき事項も異なります。
ここでは、一般的に書かれる4つの事項をご紹介します。
※ここで説明する記載事項はあくまで一例であり、必ず記載しなければならないものではありません。
①不貞を認める旨
不貞を認める旨を記載します。
【例文】 私は、貴殿の配偶者である○○○○と不貞関係を持ち、それにより貴殿に精神的苦痛を与えたことを認めます。 |
ただし、この記載は不貞の証拠になります。
したがって、相手が不貞の証拠を持っていない場合には、この記載を書くことは慎重になりましょう。
なお、不貞の期間や回数等の具体的な記載は避けることをおすすめします。
②謝罪の旨
謝罪の旨を記載します。
【例文】 貴殿に多大なご迷惑をお掛けしたことを深く反省し、心からお詫び申し上げます。 この度は、本当に申し訳ございませんでした。 |
この部分をどう表現するかで、相手方に伝わる印象も変わるでしょう。
謝罪の旨は、自分の言葉で表現することをおすすめします。
③不貞相手との関係を解消する旨
不貞相手との関係を解消する旨を記載します。
【例文】 私は、貴殿の配偶者である○○○○との交際を解消し、今後いかなる理由があろうと、電話やメール、SNS等の手段を用いて連絡や接触を一切しないことを約束します。 |
謝罪文を書く目的は、紛争拡大の回避です。
したがって、不貞相手との交際の解消を示すことをおすすめします。
④あなたの住所・氏名・押印
あなたの住所・氏名・押印を記載します。
不貞相手の奥さんへの謝罪文は特定記録で出すことをおすすめ
不貞相手の奥さんへの謝罪文は特定記録で出すことをおすすめします。
特定記録とは、日本郵便株式会社が郵便物の引受けを記録するサービスです。
特定記録を利用することで、次のメリットがあります。
- 郵便物を差し出した記録が残る
- 配達状況をネットで確認できる
謝罪文が相手に届いたかどうか不安になるのを避けられるでしょう。
さらに、普通郵便よりも相手にかしこまった印象を与えます。
したがって、謝罪文は特定記録で出すことをおすすめします。
不貞相手の奥さんへの謝罪文作成の注意点
不貞相手の奥さんへの謝罪文を作成する際の注意点は、次の5つです。
- 不貞の内容を詳細に書かない
- 言い訳や奥さんが悪いなどの表現は用いない
- 嘘は書かない
- 慰謝料の支払いを約束する旨や具体的な金額は書かない
- テンプレートをそのまま使用しない
以下、詳しく見ていきましょう。
不貞の内容を詳細に書かない
1つめは、不貞の内容を詳細に書かないことです。
謝罪文は不貞の証拠になります。
慰謝料は、不貞期間が長いほど、不貞回数が多いほど、高額になる傾向にあります。
相手が不貞の証拠を持っている場合でも、それは一度のみの証拠かもしれません。
あなたが謝罪文で複数回の不貞を認めれば、それは慰謝料の増額に繋がります。
したがって、不貞の内容を詳細に書かないようにしましょう。
中には、「不貞の詳細が書かれてない。」「内容が嘘ではないか。」と言われ、謝罪文の書き直しを要求されるケースも多々あります。
一度書き直しに応じると、相手の要求がエスカレートし、より不利な内容を記載するよう求められる可能性もあります。そのような場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
言い訳や奥さんが悪いなどの表現は用いない
2つめは、言い訳や奥さんが悪いなどの表現は用いないことです。
謝罪文を書く目的は、謝罪と反省の意を伝え、相手の気持ちを落ち着かせることです。
言い訳や奥さんが悪いなどの表現を用いれば、相手の感情を逆なですることになり、謝罪文を書いた意味がなくなります。
したがって、謝罪文を書くならば、謝罪と反省の意を伝えるに留めましょう。
嘘は書かない
3つめは、嘘を書かないことです。
「不貞期間を短く書けば、慰謝料減額できるのでは?」と考え、嘘の内容を書くことはやめましょう。
不貞相手(不貞配偶者)が自白すればすぐに嘘はバレます。
相手に知られていない事実まで正直に書く必要はありませんが、嘘を書くことはやめましょう。
慰謝料の支払いを約束する旨や具体的な金額は書かない
4つめは、慰謝料の支払いを約束する旨や具体的な金額は書かないことです。
謝罪文の内容を変更・撤回するのは難しいです。
具体的な金額を書くと、その後の減額交渉が難しくなります。
したがって、慰謝料の支払いを約束する旨や具体的な金額を書くことはおすすめしません。
テンプレートをそのまま使用しない
5つめは、テンプレートをそのまま使用しないことです。
ネットを検索すれば、謝罪文の例文が沢山出てくることと思います。
もちろん、自分で一から考えるのは難しいですから、ネット上のものを参考にするのは構いません。
しかし、一言一句そのまま書くことはやめましょう。テンプレート通り書いたことは、相手にも伝わります。
あくまでテンプレートは一つの参考とし、謝罪文はあなたの言葉で表現しましょう。
不貞相手の奥さんに謝罪文を出すことをおすすめしない4つのケース
不貞相手の奥さんに謝罪文を出すことをおすすめしないケースは、次の4つです。
- 相手の奥さんから謝罪文を要求されていない
- 不貞の事実がない
- 相手の奥さんが主張する事実に間違いがある
- 不貞の証拠がない
以下、詳しく見ていきましょう。
相手の奥さんから謝罪文を要求されていない
相手の奥さんから謝罪文を要求されていないケースです。
慰謝料の回避・減額のために、謝罪文を出すことを検討している方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相手の奥さんから謝罪文を要求されていないのに、自ら謝罪文を出すことはおすすめしません。
要求してもいない謝罪文を受け取った相手が、プラスの感情を抱く可能性は低いです。
「形だけの謝罪文などいらない。」「何か企んでいるのではないか?」と思われる可能性もあります。
したがって、相手の奥さんから謝罪文を要求されていないケースでは謝罪文を出すことはおすすめしません。
不貞の事実がない
不貞の事実がないケースです。
不貞の事実がないからこそ、誤解を招いたことを早急に謝罪したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、謝罪文の書き方によっては、不貞を認めたと捉えられかねません。
したがって、不貞の事実がないケースでは謝罪文を出すことはおすすめしません。
相手の奥さんが主張する事実に間違いがある
相手の奥さんが主張する事実に間違いがあるケースです。
謝罪文の書き方によっては、相手の言い分を全て認めたと捉えられかねません。
したがって、相手の奥さんが主張する事実に間違いがあるケースでは謝罪文を出すことはおすすめしません。
不貞の証拠がない
不貞の証拠がないケースです。
慰謝料請求するために十分な不貞の証拠がないことから、謝罪文を要求するケースは多々あります。
謝罪文は不貞の証拠になります。自ら慰謝料請求の手段を与えることにもなりかねません。
したがって、不貞の証拠がないケースでは謝罪文を出すことはおすすめしません。なお、謝罪を検討すべきか否かについては、「不倫で謝罪はすべき?謝罪を求められた場合の対処法を徹底解説!」でも詳しく解説しています。
謝罪文を作成する前に一度弁護士に相談することをおすすめ
相手の要求通りに謝罪文を出しても、不貞問題が完全に解決するわけではありません。
不貞問題を全面的に解決するためにも、謝罪文を作成する前に一度弁護士に相談することをおすすめします。
謝罪文を出すべきかどうか、出す場合にはどのタイミングで出すべきか等、あなたに不利に働くことのない対応方法を模索してくれるでしょう。
慰謝料請求はされておらず、謝罪文のみを要求されている方もいるでしょう。その場合には、費用対効果を考えると、弁護士をつけて対応する必要はないかもしれません。
しかし、相手から過剰な要求があり、ご自身で対応するには負担がある場合や今後慰謝料請求される可能性も含めて相談したい場合は、無料相談等を活用して弁護士に相談するのもよいでしょう。
まとめ|謝罪文の提出は慎重に!
不貞をしたら、謝罪の意を示すことは大切です。
ここまで、度々「謝罪文の提出には慎重になって欲しい。」と言いましたが、これは謝罪することを否定するものではありません。
謝罪文という形に残る方法での謝罪は慎重に考えて欲しいという意味です。
謝罪の方法やタイミングによっては、紛争の早期解決に繋がることもあれば、さらなるトラブルに発展する場合もあります。
謝罪文の提出を要求されている方は、慰謝料請求の有無にかかわらず、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
謝罪文の提出のみを要求されている場合でも、将来、慰謝料請求される可能性は十分にあります。ご自身で対応する前に、弁護士に相談し、適切な対処法を見つけてもらいましょう。
謝罪文と合わせて慰謝料請求されている場合は、弁護士に依頼することで、謝罪文の問題だけでなく慰謝料請求の解決までサポートしてもらえます。
謝罪文を過剰に要求するような相手の場合、示談交渉も難航する可能性が考えられます。ご自身の精神的負担を軽減するためにも、交渉から解決までの全てを弁護士にお任せください。
ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が多数在籍しています。
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