配偶者が不倫をした場合、その慰謝料は、配偶者または不倫相手、もしくはその両者に対して請求できます。
できるだけ多くの慰謝料を獲得するために、二人に請求した方が良いのではと考える人は多いでしょう。
慰謝料を二人に請求しても、単純に受け取れる金額が2倍になるわけではありません。慰謝料は、原則として二重取りできません。
二重取りと言われずに二人に請求するには、どのように進めていけばよいのでしょう?
この記事では、主に次のことについて解説しています。
- 二重取りと言われずに慰謝料を二人に個別に請求する方法
- 慰謝料を二人に請求する場合のデメリット
ぜひ参考にしてください。
目次
不倫慰謝料は配偶者と不倫相手の二人に請求できる?
不倫慰謝料は配偶者と不倫相手の二人に請求できます。
不倫慰謝料を請求する相手は、次の3通りです。
- 配偶者
- 不倫相手
- 配偶者と不倫相手の両方
どれを選択するかは、慰謝料を請求する側であるあなたが自由に決められます。
二人に請求しても慰謝料が2倍になるわけではない
二人に請求しても慰謝料が単純に2倍になるわけではありません。
なぜなら、不倫慰謝料の性質が、不真正連帯債務だからです。
配偶者と不倫相手は、不倫によって共同して被害者を傷つけたわけですから(共同不法行為)、二人は共同で慰謝料の支払い義務を負っています(不真正連帯債務)。
不真正連帯債務のポイントは、次の3つです。
- 債務を負う人全員に対して、全額の請求ができる
- いずれかから債務の全額を受けとったら、もう一方の債務は消滅する
- 負担を超えて支払いをした人は、もう一方の債務者に対し求償できる
例えば、慰謝料の適正額が200万円のケースを考えてみましょう。
配偶者と不倫相手は、200万円の支払い義務を二人で連帯して負っています。慰謝料を請求するが側は、どちらに対しても200万円の請求ができます。ただし、どちらかから全額受け取った時点で、もう一方からは受け取れません。
配偶者から100万円を受け取った場合、残りの100万円を不倫相手に請求できます。
しかし、配偶者から200万円を受け取った場合、適正額の200万円を全額受けとったことになり、不倫相手にさらに100万円の請求はできません。
これは、不倫慰謝料の二重取りに該当します。
不倫慰謝料を二人に請求するのは、適正な慰謝料額を二人で負担させることを意味し、獲得慰謝料額を2倍にするためではありません。
ただし、適正な慰謝料額がいくらであるかに明確な基準はありません。
裁判の場合には、裁判官が適正な慰謝料を判断しますが、交渉の場合には、当事者間の合意で決めます。
したがって、交渉の場合には、当事者間の合意があれば、結果として適正な慰謝料額以上の慰謝料を獲得できることもあります。
二重取りと言われずに慰謝料を二人に個別に請求する方法
慰謝料を二人に請求する場合、まとめて二人に請求するのではなく、個別での請求を考えている人も多いでしょう。
二重取りと言われずに慰謝料を二人に個別に請求するには、次の順序で進めていきましょう。
- Step①あなたが受けた精神的苦痛を金銭に換算する
- Step②それぞれに請求する金額を決める
以下、詳しく見ていきましょう。
Step①あなたが受けた精神的苦痛を金銭に換算する
あなたが受けた精神的苦痛を金銭に換算しましょう。
不倫慰謝料の相場を参考に、あなたが受けた精神的苦痛に対する適正な慰謝料額を検討します。
請求する金額は、あなたが自由に決められますが、不倫慰謝料には相場があり、相場を大幅に超えた請求をしても、相手が素直に支払いに応じる可能性は低いでしょう。
不倫慰謝料の相場は、夫婦の離婚の有無により次のとおり分けられます。
- 夫婦が離婚しない場合は50〜100万円程度
- 不貞行為が原因で夫婦が別居した場合は150〜200万円程度
- 不貞行為が原因で夫婦が離婚した場合は200〜300万円程度
離婚の有無以外にも、次のような要素が考慮されます。
- 夫婦の婚姻期間
- 夫婦の子どもの有無やその年齢
- 夫婦が離婚したか否か
- 不貞行為が始まった経緯
- 不貞行為の期間や回数
- 反省や謝罪の有無
- 慰謝料の受取りの有無
- 不倫相手の妊娠の有無
- 慰謝料請求される側の収入
- 不貞行為された側の精神的影響の程度
したがって、不倫慰謝料の相場や増額事由を考慮して、請求する慰謝料額を決めましょう。
Step②それぞれに請求する金額を決める
それぞれに請求する金額を決めます。
適正な慰謝料額を決めたら、それぞれにいくら請求するかを検討します。
もちろん、それぞれに全額の請求も可能です。双方から全額を受け取れないだけで、請求自体はできます。
二重取りを主張されることが心配な場合は、収入が多く、慰謝料の回収見込みが高い方への請求を先行し、その後、未回収部分を他方の当事者に請求してもよいでしょう。
不倫相手に多く負担させたい感情があれば、不倫相手に多めに請求しても構いません。
最終的な負担割合は配偶者と不倫相手の問題
前章のStep2では、請求する慰謝料額を決めたら、どちらにいくら請求するかを自由に決められると解説しました。
ただし、どちらがいくら負担すべきか(責任割合)は、最終的には配偶者と不倫相手の問題です。
例えば、適正な慰謝料額200万円のうち、50万円を配偶者に、150万円を不倫相手にそれぞれ請求すると決めます。
この場合、不倫相手は、あなたに対して「責任割合は半々であるから、100万円を超えた部分は配偶者に請求して欲しい。」との主張はできません。連帯して責任を負うとは、配偶者と不倫相手のどちらにも全額を支払う義務があります。
一方で、不倫相手は、あなたに慰謝料150万円を支払った後で、責任割合を超えた50万円を配偶者に求償できます。
不倫慰謝料は二人が共同してその責任を負っていることから、片方が責任以上の負担をした場合には、もう一方に対して求償できる権利があります。
不倫相手から配偶者に対して、求償権を行使されるのを回避したい場合には、交渉の中で求償権の放棄を合意する必要があります。求償権について、詳しくは「図でわかる!不貞慰謝料の求償権とは?知っておくべきポイントを解説 」の記事をご参照ください。
慰謝料を二人に請求することでデメリットはある?
慰謝料を二人に請求することのデメリットとしては、配偶者が負担した分だけ不倫相手の負担が少なくなる点です。
配偶者が慰謝料を負担した部分については、不倫相手は負担する必要がありません。
東京地裁平成21年11月26日判決においても、原告に対する慰謝料は350万円が相当であるとしたうえで、原告の夫が原告に対し、離婚に伴う慰謝料として300万円支払っていることから、被告の負担すべき慰謝料は残りの50万円の部分のみであるとして、50万円の慰謝料の支払いが命じられています。
したがって、慰謝料を二人に請求することで、結果として、不倫相手の負担が少なくなる可能性が高いでしょう。
まとめ
不倫慰謝料は、配偶者と不倫相手の二人に請求できます。
慰謝料を二人に請求する場合、二重取りを主張されないように請求額を決めることが重要です。しかし、ご自身のケースでいくらの慰謝料額が適正なのかを判断するのはなかなか難しいでしょう。二重取りにならないようにと少なめの金額を請求したけれど、実際にはもっと高額の慰謝料を獲得できたというケースも少なくありません。
二重取りにならない範囲でできるだけ多くの慰謝料を獲得したいと考えている場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあるでしょう。
- 適正な慰謝料での示談ができる
- 増額事由があれば相場以上の慰謝料の獲得が期待できる
- 求償権の問題も含めて解決できる
ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が多数在籍しています。
仕事が忙しくて相談に行けない人や遠方にお住まいの方のためにLINEによる相談やオンライン法律相談サービスも実施しています。初回の相談は30分無料ですので、ぜひ一度ご相談ください。