サマリー
医療技術の進歩や社会情勢の変化に伴い、オンライン診療を導入する病院や診療所が増加しています。今回の改正では、オンライン診療を提供する医療機関がどのような事項を広告できるのか、その具体的な基準が整理されています。本記事では、オンライン診療に関する医療広告ルールの改正内容と、医療機関が実務において留意すべきポイントを解説します。
この記事のポイント
- 医療法6条の5第3項に15号が新設され、オンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う病院または診療所は、当該オンライン診療を行う旨とその内容に関する事項を広告できるようになりました。改正前の15号の包括規定は16号に移っています。
- 自院から直接オンライン診療を提供する医療機関も、13号の規定に基づき、オンライン診療を実施している事実を広告できます。医療広告告示の改正により、「オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項」も広告可能事項に加わりました。
- 自由診療について広告する場合は、公的医療保険が適用されない旨を明記し、標準的な費用を併記する条件をいずれも満たす必要があります。医薬品や医療機器の販売名は、原則として広告しないこととされています。
- 改正後の広告ルールは2026年(令和8年)4月1日より施行されています。施行日より前からオンライン診療を提供している医療機関には、2027年(令和9年)3月末までの1年間、届出等の猶予期間(経過措置)が設けられています。
医療技術の進歩や社会情勢の変化に伴い、オンライン診療を導入する病院や診療所が増加しています。これに合わせる形で、医療機関が発信する広告のルールを定めた「医療広告ガイドライン」や関係法令にも重要な見直しが行われました。
今回の改正では、オンライン診療を提供する医療機関がどのような事項を広告できるのか、その具体的な基準が整理されています。医療広告は違反した場合に行政指導などの対象となる場合があるため、適切なルールを把握して運用することが求められます。
本記事では、オンライン診療に関する医療広告ルールの改正内容と、医療機関が実務において留意すべきポイントを解説します。
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)
医療広告ガイドライン改正の背景と従来の制度
改正前の医療広告における包括規定
改正前の医療法第6条の5第3項においては、広告可能な事項として1号から14号までに各種の個別事項が掲げられていました。配置の都合上、15号では、これらに準ずるものとして厚生労働大臣が医療広告告示で定めた事項を包括的に規定する形がとられていました。
従来の枠組みでは、オンライン診療に関する具体的な表示について個別の独立した規定が十分に整備されておらず、実務上の判断に迷う場面が生じることもありました。
オンライン診療の普及に伴う見直しの経緯
オンライン診療の利用形態が多様化する中で、患者がオンライン診療を受けるための専用スペース(オンライン診療受診施設)を利用する事例など、新たな医療提供の形が登場しています。このような実態に即した情報提供を可能にしつつ、患者が適切な医療機関を選択できるようにするために、広告可能事項の整理と新設が行われるに至りました。
オンライン診療に関する広告ルールの改正内容
オンライン診療受診施設を利用する場合(新15号)
今回の改正により、医療法6条の5第3項に新たな15号が新設されました。これにより、勤務する医師または歯科医師が、オンライン診療受診施設を利用してオンライン診療を行う病院または診療所において、以下の事項を広告することが可能となっています。
- 当該オンライン診療を行う旨
- 当該オンライン診療の内容に関する事項
これに伴い、改正前に15号であった包括規定は、条ずれによって16号に変更されています。
新15号に定める「当該オンライン診療を行う旨」とは、医師らがオンライン診療受診施設を利用して診療を行っているという事実そのものを指します。また、「当該オンライン診療の内容」とは、その際の具体的な診療内容や提供条件を意味します。
ガイドラインなどにおいて示されている具体的な表示例は、以下のような表現とされています。
- 「〇〇町のオンライン診療受診施設において、オンライン診療も実施している病院です。」
- 「当医療機関のA医師は毎週月曜日に、〇〇オンライン診療受診施設にてオンライン診療を実施しています。」
提供される医療の内容に関する事項の追加(13号)
医療法6条の5第3項13号は、病院や診療所で提供される「医療の内容」に関する広告可能事項を定めている規定です。今回の改正に伴うガイドラインの改訂により、オンライン診療を実施している場合であっても、同号が定める条件に従えば、医療の内容に関する事項を広告できることが明確にされました。これは、オンライン診療受診施設を利用しているか否かを問わないものと考えられます。
また、オンライン診療受診施設を利用せずに、自院から直接オンライン診療を提供する医療機関についても、この13号の規定に基づき、そのようなオンライン診療を実施している事実を広告できる扱いとなります。
ただし、提供する具体的な医療の内容に深く踏み込んで広告しようとする場合には、オンライン診療受診施設を利用しているかどうかにかかわらず、13号による厳格な規制を受ける点に注意が必要です。
オンライン診療基準の遵守に関する事項(新16号)
改正後の医療法6条の5第3項16号の規定を受け、医療広告告示が改正されました。これにより、広告可能事項として限定列挙されているものの中に、新たに「オンライン診療基準の遵守に関して必要な事項」が加わり、全体の項目数は21事項となっています。
ここでいう必要な事項とは、オンライン診療を行う医師や医療機関が、基準を遵守するために患者に対して発信する必要がある情報や、基準に適合して実施している事実などが該当します。
医療機関がとるべき実務への影響と対応
自院のオンライン診療形態に応じた広告内容の見直し
医療機関は、自院がどのような形態でオンライン診療を提供しているかによって、適用される条項が異なる点を確認する必要があります。オンライン診療受診施設を利用している場合は医療広告ガイドライン新15号に基づいた広告が可能であり、利用しない場合は13号に基づいた広告運用を行うことになります。ウェブサイトやパンフレット等の表記が、改正後の適切な条項の趣旨に合致しているか確認をすることが望ましいです。
自由診療や具体的な治療内容を掲載する場合の注意点
オンライン診療を通じて提供する具体的な医療の内容について広告する際には、13号に規定される条件を詳細に満たす必要があります。
たとえば、保険診療に該当する検査や手術などの方法であれば、診療報酬点数表等に規定された範囲で分かりやすい表現を用いることができます。一方で、公的医療保険が適用されない自由診療(美容目的など)について広告する場合には、以下の条件をいずれも満たす場合に限って広告が可能とされているため、特に注意が必要です。
- 公的医療保険が適用されない旨(「自由診療」「全額自己負担」など)を明記すること
- 標準的な費用を併記すること
この際の標準的な費用は、実際に窓口で負担することになる総額の目安が容易に伝わるように示す必要があります。麻酔管理料や服薬指導料など、併用されることが通常想定される他の費用がある場合は、それらを含めた金額を分かりやすく記載することが求められます。
さらに、医薬品医療機器等法の広告規制の観点から、医薬品や医療機器の販売名(型式番号等を含む)は原則として広告しないこととされています。医師が個人輸入した医薬品等を使用する場合には、国内で同一成分の製品が承認されていたとしても広告は認められない扱いとなるため、実務上の表現には細心の注意を払う必要があります。
施行スケジュールと経過措置
今回のオンライン診療の定義を明確化した医療法の改正は2025年(令和7年)に行われ、それを受けた医療広告ガイドラインの改定および新たな広告ルールの運用は、2026年(令和8年)4月1日より施行されています。
既存の広告表示や体制への影響を考慮し、2026年4月1日の施行日より前からオンライン診療を提供している医療機関に対しては、2027年(令和9年)3月末までの1年間、届出等の猶予期間(経過措置)が設けられています。
実務上の対応期限を誤らないためにも、このスケジュールを念頭に置いたうえで、自院のウェブサイトやパンフレットの記載内容に修正が必要であるかを計画的に確認することが有効です。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
今回の医療広告ガイドラインおよび関係法令の改正により、オンライン診療に関する広告可能事項の枠組みが整理されました。2026年4月1日からは、オンライン診療受診施設を利用する場合の新15号の新設や、基準遵守に関する事項の追加など、医療機関にとっては発信できる情報の選択肢が明確になったと言えます。
一方で、具体的な治療内容や自由診療の費用表示に関しては、従来と同様に厳格なルールが適用されるため、ガイドラインの条件を正確に満たした表現を維持することが確認されます。予期せぬ広告違反を防ぐためには、事前の法的な確認が有効な手段となります。
ネクスパート法律事務所では、薬機法をはじめとする企業の法律問題に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。
コラム監修者
寺垣 俊介
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。