サマリー
日本一般用医薬品連合会の「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」の2026年版は、2019年以来7年ぶりの発刊となるもので、最新の通達等を踏まえ多くの変更がなされています。本記事では、「プレミアム処方」表現の制限、スイッチ成分に関する広告表現、調査情報(データ)を用いる広告のルール新設など、広告実務への影響が大きい主な変更点を、要点をしぼって解説します。
この記事のポイント
- 「プレミアム処方」と表現できるのは、販売名に『プレミアム』の語を取得している製品に限られることが明確化されました。広告では、原則として承認された効能効果を一つ以上付記・付言することも求められます。
- 『スイッチOTC医薬品有効成分リスト』に掲載されていれば、発売後3年を超えても同リストの範囲内で「スイッチOTC」等と表現できます。『スイッチ成分満量配合』のように優位性・安全性を誤認させる表現は認められません。
- 自社調べなどの「私的情報」は原則使用できないとされました。医療用医薬品と同一の有効成分を含むOTC医薬品は、化成品に限ること等を条件に『医療用医薬品と同じ有効成分を配合しています』等と表現できます。
- 漢方製剤の「満量処方」は注釈を付すことで表現できることが明確化されました。SNS等の拡散機能のある媒体では、クローズド懸賞、総付景品を行っている旨の広告を行わないことが明記されています。
OTC医薬品とは、医師の処方箋なしに薬局・ドラッグストア等で購入できる「要指導医薬品」および「一般用医薬品」の総称です。OTC医薬品の広告については、薬機法をはじめ、各種ガイドラインに基づいて行う必要があり、社会情勢の変化に応じて、日々さまざまな改正・変更が行われています。
「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」(日本一般用医薬品連合会、以下「適正広告ガイドライン」ともいいます。)もその一つであり、発行後も、全国医薬品等広告監視協議会での合意を踏まえた「自主申し合わせ事項」の追加を重ねてきました。
2026年版は、2019年以来7年ぶりの発刊となるもので、最新の通達等を踏まえ多くの変更がなされています。
本記事では、広告実務への影響が大きい主な変更点を、要点をしぼって解説します。なお、本記事はあくまで要点をまとめたものですので、適正広告ガイドラインについて詳しくは以下の日本一般用医薬品連合会の案内ページよりご確認ください。
- 日本一般用医薬品連合会「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」案内ページ
主な変更点
1.「プレミアム処方」表現の制限
これまで多くのOTC医薬品で用いられていた「プレミアム処方」という言葉ですが、今回の変更で、すべての媒体において、「プレミアム処方」と表現できるのは、販売名に『プレミアム』の語を取得している製品に限られることが明確化されました(適正広告ガイドライン8.(1)成分等について、2021年第24回OTC医薬品等広告研修会報告「広告表現・ガイドラインの変更点」)。販売名以上の意味を消費者に誤認させないための整理です。
なお、「プレミアム処方の根拠を明示することによって、『プレミアム処方』という文言に販売名以上の意味を誤認させるおそれがあることに留意すること。」との注意が付されているため、留意する必要があります。
2.効能効果は「承認された効能を一つ以上」明示
広告を行う際は、原則として承認された効能効果を一つ以上付記・付言することが求められるようになりました(適正広告ガイドライン6.(5)効果効能等の表現について①)。従来の「しばり表現」に関するルールに加え、承認効能を積極的に明示する義務が新たに設けられた形です。
3.スイッチ成分に関する広告表現
スイッチ成分とは、もともと医師の処方が必要な医療用医薬品として承認されていた有効成分のうち、一般用医薬品(OTC医薬品)としても使用できるよう転用(スイッチ)が認められたものをいいます。
スイッチ成分を含むOTC医薬品を意味する「スイッチOTC」等の表現について、従来の「発売後3年・先発品」といった枠に加え、厚生労働省のセルフメディケーション税制の対象である『スイッチOTC医薬品有効成分リスト』に掲載されていれば、発売後3年を超えても同リストの範囲内で表現できることになりました(適正広告ガイドライン8.(10)スイッチ成分等に関わる広告表現について、一般薬連発KOU220601号「ガイドライン 8 (10) スイッチ成分等に関わる広告表現について」)。
一方で、『スイッチ成分満量配合』『スイッチ成分最大量配合』のように優位性・安全性を誤認させる表現は認められません。
4.調査情報(データ)を用いる広告のルール新設(2022年)
効能効果・安全性を除く調査情報(アンケート等のデータ)を広告に使用する際の付記ルールが新設されました。国の統計や学術文献等の「公的情報」は出典を明示して使用できる一方、自社調べなどの「私的情報」は信頼性・公平性を欠くとして原則使用できないとされ、グラフのスケール変更やトリミングなど誤認を与える表現も禁止されています(適正広告ガイドライン33.OTC医薬品の広告に調査情報(効果効能等又は安全性を除く)を使用する際の付記項目について)。
5.「医療用と同じ有効成分」訴求の枠組み整備(2024年・2025年)
医療用医薬品と同一の有効成分を含むOTC医薬品について、『医療用医薬品と同じ有効成分を配合しています』等と表現できる枠組みが整備されました(適正広告ガイドライン8.(11)OTC医薬品の説明に関する付記事項について、一般薬連発KOU250926号「OTC医薬品の説明に関する付記事項について(別紙の一部変更)」)。対象は化成品に限ること、OTCとして承認された効能効果・用法用量を逸脱しないこと、分量が医療用と異なる場合はその旨を付記すること等が条件です。
表現できる例
- 「医療用医薬品と同じ有効成分(〇〇)を配合しています」
- 「医療用医薬品と同じ有効成分配合」
※ただし、成分は同一でも、分量が異なる場合には、「医療用医薬品と分量は異なる」旨を注記することが必要となります。
6.漢方製剤の「満量処方」表示に関する注釈ルールの明確化
漢方製剤で「満量処方」と広告表現する際は、生活者に誤解を与えないよう、注釈を付すことで表現できることが明確化されました。最大級表現との関係で解釈が分かれやすかった点に、具体的な運用の目安が示されています(OTC医薬品等の適正広告ガイドライン11.(5)漢方製剤の「満量処方」の表現)。
注釈例
- ※満量処方とは、漢方処方の出典に基づき生薬を最大量用いたもの
- ※満量処方とは、漢方処方の出典に基づき生薬を全量用いたもの
- ※満量処方とは、漢方処方の出典に基づく生薬量を用いたもの
(「これらの注釈に限定されるものではないが、正確な表現に努めること」とされています。)
7.SNS等の拡散機能のある媒体での懸賞・景品告知の制限
OTC医薬品でクローズド懸賞や総付景品を実施している旨の広告は、従来から店頭や自社ウェブサイト以外では乱用助長のおそれがあるとして制限されていましたが、これに加えて、「SNS等の拡散機能のある媒体ではクローズド懸賞、総付景品を行っている旨の広告を行わないこと」との規定が明記されました(OTC医薬品等の適正広告ガイドライン19.(5)オープン懸賞、クローズド懸賞(一般懸賞・共同懸賞)・総付景品に関する広告について)。
※クローズド懸賞とは、商品の購入者やサービスの利用者に限定して、抽選等により金品を提供する懸賞をいいます。また、総付景品とは、購入者・来店者等に対して、抽選によらず全員に景品を提供する方法をいいます。いずれも景品表示法上の景品類(同法2条3項)にあたります。
まとめ・相談はネクスパート法律事務所へ
- 2026年版のOTC医薬品等の適正広告ガイドラインは、2021年以降に積み重ねられた自主申し合わせ事項を本文へ正式に反映した改訂版です。
- 中でも「スイッチ成分の表現」「調査データの利用」「医療用と同じ有効成分の訴求」は、実務上の影響が大きいポイントです。
- いずれも誇大表現・誤認の防止という観点からの整理であり、既存の広告物やLP・SNS投稿等を改めて点検することが重要です。
目まぐるしく変化する広告規制に対応することは、医薬品に関わる企業にとって大きな負担です。
ネクスパート法律事務所では、専門家の視点で企業をサポートさせていただくため、薬機法・医療法・景品表示法に基づく広告表現のリーガルチェック、広告コンプライアンス体制の構築支援や、社内向けのセミナーを承っております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、日本一般用医薬品連合会「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」および同連合会の各申し合わせ通知(一般薬連発KOU220601号・同KOU220602号・同KOU240701号・同KOU250926号ほか)、ならびに厚生労働省「医薬品等適正広告基準」に基づき作成しています。
コラム監修者
寺垣 俊介
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道中学・高校を経て、慶應義塾大学商学部で経営・会計・商取引を学ぶ。その後、青山学院大学法科大学院を修了して2011年に新司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所を修了(65期)。2013年1月に第二東京弁護士会に弁護士登録し、都内法律事務所で個人・法人を問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。
2016年1月に佐藤塁と共にネクスパート法律事務所を創業し、共同代表として、東京オフィスを拠点に、企業のコーポレート法務、M&A・事業承継、薬事・医事法務を中心に取り扱う。商学部で培った経営の視点を生かし、法的な可否にとどまらず、事業への影響や実行可能性まで含めた選択肢を示すことを重視している。
また、一般社団法人薬機法医療法規格協会の代表理事、一般社団法人日本美容サロン協議会の監事、一般社団法人睡眠ヘルスケア協議会の外部有識者(認証評価委員)を務め、医療・美容・ヘルスケア分野の広告規制や業界の自主的なルールづくりにも関わっている。依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。