更新日:2026年9月9日 (水)
公開日:2026年9月9日 (水)
借地権割合とは?調べ方・計算方法や売却時の注意点を解説
サマリー
借地権付きの建物を相続したり売却を検討したりする際、「借地権割合」という言葉を目にして疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
借地権割合とは、土地全体の更地価格に対して借地権が持つ経済的価値の割合を示すもので、主に相続税や贈与税の財産評価を算出する際に用いられます。
実際の売却相場とは異なる場合もあるため、正しい理解が重要です。
この記事では、借地権割合の基本的な意味や調べ方、相続税評価額の計算手順に加え、売却時の注意点について分かりやすく解説します。
借地権割合とは?基礎知識と設定される目的
借地権割合の基本的な定義と役割
借地権割合とは、土地全体の完全な所有権(更地価格)に対して、土地を借りて建物を所有する権利である「借地権」がどれくらいの経済的価値を持っているかを示す割合です。
土地を借りて建物を建てている場合、その土地の価値は「地主が持つ底地の権利(底地権)」と「借主が持つ借りる権利(借地権)」に分かれます。
借地権割合は、この土地全体の価値のうち借主側の権利が占める割合を表しています。
この割合が設定されている主な目的は、相続税や贈与税の課税にあたって財産価値を公平に評価するためです。
国税庁が地域ごとの取引慣行や利便性を考慮して毎年定めており、路線価図や評価倍率表に反映されています。
権利形態による評価の基本的な考え方
借地権には、契約更新が認められる「普通借地権(旧借地法に基づく借地権を含む)」と、契約期間満了により更新がなく土地が返還される「定期借地権」などがあります。
国税庁が公表している借地権割合は、基本的に契約更新が前提となる「普通借地権」を想定して設定されています。
そのため、普通借地権では地域ごとの借地権割合をそのまま適用して評価額を算定するのが一般的です。
一方で定期借地権の場合は、残存期間や地代の設定状況などに応じて評価額が逓減する仕組みになっており、通常の借地権割合とは異なる特別な計算式を用いて評価されます。
路線価図などに表示されている借地権割合は主に普通借地権を前提とした相続税評価上の基準であり、権利の形態によって評価の仕組みが異なる点に留意が必要です。
借地権割合の調べ方|路線価図と評価倍率表の確認手順
対象となる土地の借地権割合は、国税庁がウェブサイト上で公開している「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を参照することで確認できます。
借地権割合は対象地が「路線価地域」にあるか「倍率地域」にあるかによって確認手順が異なります。
路線価図を用いた調べ方と記号(A〜G)の見方
市街地などの「路線価地域」にある土地は、路線価図から借地権割合を読み取ります。
国税庁のウェブサイトで対象年度の路線価図を開き、該当する土地が接している道路を探します。
- 国税庁の「財産評価基準書」ページにアクセスし、対象の都道府県と年度を選択する
- 「路線価図」を選択し、市区町村から対象地が含まれる図面を開く
- 土地が接している道路に記載された数字とアルファベットの組み合わせを確認する
道路上に「300D」などの表記がある場合、数字の「300」は千円単位の平米単価(30万円/㎡)を示し、末尾のアルファベット「D」が借地権割合を表しています。アルファベットはAからGまでの7段階で定められています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
路線価がない地域の確認手順(評価倍率表)
市街化調整区域や農村部など、路線価が設定されていない地域は「倍率地域」に該当します。
この場合は路線価図ではなく「評価倍率表」を参照します。
財産評価基準書の目次から「評価倍率表(一般の土地等用)」を選択し、該当する市区町村・町名(大字)・地目(宅地など)を探します。
表内の「借地権割合」欄に記載されているパーセンテージがその地域の適用割合となります。
なお、評価倍率表の借地権割合欄が空欄(「−」表記)となっている地域では、借地権の取引慣行がない地域として扱われ、相続税評価上は借地権割合が0%(自用地評価のみ)となるケースが一般的です。
地域ごとの借地権割合の一般的な傾向
借地権割合は全国一律ではなく、土地の利用価値や取引需要の高さに応じて地域ごとに設定されています。
土地の価格が高い都心部ほど借地権割合が高く設定される傾向にあります。
たとえば、東京都心などの繁華街や商業地域ではA(90%)やB(80%)が多く指定されています。
一般的な住宅地ではC(70%)やD(60%)が中心となり、郊外や地方都市の住宅地ではE(50%)やF(40%)も見られます。
借地権割合を用いた相続税評価額の計算方法
相続税や贈与税を申告する際、借地権の財産評価額は自用地評価額に借地権割合を乗じて算出します。
自用地評価額とは、他者による利用制限のない完全な所有権としての更地評価額を指します。
借地権(借主側)の評価額計算と具体例
借地権者が所有する権利の評価額は、対象となる土地の自用地評価額を算出したうえで、路線価図や評価倍率表に定められた借地権割合を掛け合わせて求めます。
借地権評価額 = 自用地評価額(更地価格) × 借地権割合
例えば、路線価などから算出した自用地評価額が4,000万円、対象地域の借地権割合が60%(記号D)である場合、借地権の相続税評価額は「4,000万円 × 60% = 2,400万円」となります。
貸宅地(地主側・底地)の評価額計算
土地を他人に貸している地主側の権利(底地)は、税務上「貸宅地」として評価されます。
借地権が設定されている土地は地主自身が自由に使用できないため、借地権割合に相当する分が減額されます。
貸宅地の評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合)
先ほどの例と同様に自用地評価額が4,000万円、借地権割合が60%の土地であれば、地主側の評価額は「4,000万円 × (1 - 0.60) = 1,600万円」となり、借地人と地主の評価額の合計が更地評価額と一致する仕組みになっています。
借地上の建物を賃貸している場合(貸家建付借地権)
借地の上に建てたアパートや貸家を第三者に賃貸している場合、借地権者自身にも借家人に対する利用制限が生じます。
この権利は「貸家建付借地権」と呼ばれ、借地権評価額からさらに借家権割合等を差し引いて評価します。
貸家建付借地権の計算式は「自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)」です。
借家権割合は全国一律で30%と定められており、賃貸割合は満室であれば100%(1.0)として計算します。
| 権利の区分 | 評価額の計算式 | 備考 |
|---|---|---|
| 借地権(自己利用) | 自用地評価額 × 借地権割合 | 自ら居住・利用している建物の敷地 |
| 貸宅地(地主側) | 自用地評価額 × (1 - 借地権割合) | 他人に土地を貸している状態 |
| 貸家建付借地権 | 自用地評価額 × 借地権割合 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合) | 借地上の建物を第三者に賃貸している状態 |
借地権の売却価格と借地権割合の関係・注意点
相続税評価額の計算で用いられる借地権割合は、あくまで国税庁が税額算出の目安として定めた基準です。
そのため、不動産市場において実際に借地権を売却する際の価格(実勢価格)とは異なるケースが少なくありません。
路線価に基づく借地権割合は税務上の基準であり、実際の市場取引価格(実勢価格)とそのまま一致するとは限りません。
実勢価格と評価上の割合が一致しない主な理由
実際の市場取引では、借地権付き建物の需要や立地条件、毎月の地代の金額、金融機関による住宅ローンの利用しやすさなどが大きく影響します。
借地権は所有権と比べて買い手の住宅ローン審査が厳しくなる傾向があり、需要が限定的になる場合があります。
また、売却時には借地契約の残存期間や、将来的な建替え・更新に関する条件も価格を左右する要素となります。
これら市場の個別要因が反映されるため、税務上の借地権割合から想定される額よりも実勢価格が下回ることもあります。
借地権の売却にかかる費用と契約条件の影響
借地権を第三者へ譲渡する際には、地主(底地人)の承諾を得る必要があり、その際に「譲渡承諾料(名義書換料)」の支払いを求められるのが一般的です。
承諾料の額は借地権価格の一定割合を目安として協議されることが多く、売主の手取り額に影響を与えます。
| 影響要因 | 内容と価格への影響 |
|---|---|
| 譲渡承諾料(名義書換料) | 第三者へ売却する際に地主へ支払う費用。売主側の手取り額が減少する要因となります。 |
| 借地契約の残存期間 | 残存期間が短い場合、更新料の発生や契約継続の不確実性から買主側の評価が下がりやすくなります。 |
| 建替え承諾の可否 | 建替えや増改築に地主の承諾が必要な場合、その条件や承諾料の有無が取引価格に影響します。 |
| 地代・更新料の水準 | 近隣相場と比べて地代が高額な場合、買主の月々の負担が重くなるため需要が狭まる傾向があります。 |
地主(底地人)との交渉やトラブル時の留意点
借地権の売却にあたっては、地主との良好な関係維持と事前の相談が重要となります。
承諾が得られない場合や法外な承諾料を請求されて話し合いがまとまらない場合には、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を求める「借地非訟手続」を申し立てる方法も法律上用意されています。
地主の承諾が得られないまま無断で譲渡を行うと、借地契約の解除原因となるおそれがあるため注意が必要です。
第三者への売却のほかにも、地主に借地権を買い取ってもらう交渉や、地主の所有する底地と借地権をセットにして完全な所有権として共同売却する方法なども選択肢となり得ます。
権利関係が複雑になりやすいため、状況に応じた慎重な進め方が求められます。
まとめ
借地権割合は、路線価図や評価倍率表で確認できる指標であり、主に相続税や贈与税の評価額を算出するための基準として用いられます。
実際の市場での売却価格とは一致しない場合があるため、取引や評価の目的に応じて適切に使い分けることが重要です。
借地権の売却や相続において、地主との交渉や承諾料の取り決めなど権利関係の調整に不安がある場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所へお気軽にご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。