サマリー
詐欺罪で警察の捜査を受けたり、逮捕されたりした場合、
「初犯なら執行猶予になるのか」
「実刑になることはあるのか」
「前科は付くのか」
と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、初犯だからといって必ず軽い処分になるわけではありません。
詐欺罪には罰金刑がなく、有罪となった場合は拘禁刑が科されます。
そのため、被害額が大きい場合や、組織的・計画的な犯行である場合などには、初犯であっても実刑判決が言い渡される可能性があります。
一方で、初犯であることは量刑を判断する際の有利な事情の一つです。
被害者への被害弁償や示談が成立していること、深く反省し再犯防止に取り組んでいることなどが認められれば、執行猶予付き判決や不起訴処分となる可能性もあります。
詐欺罪の処分は、「初犯かどうか」だけで決まるものではありません。
犯行の態様や被害額、被害者数、余罪の有無、犯行後の対応など、さまざまな事情を総合的に考慮して判断されます。
この記事では、
・詐欺罪の初犯で予想される処分
・実刑・執行猶予・不起訴となる主なケース
・量刑判断で重視されるポイント
・前科を回避するために重要な対応
について、実務を踏まえてわかりやすく解説します。
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詐欺罪の初犯でも実刑判決になることはある?
結論からいうと、詐欺罪は初犯であっても実刑判決となる可能性があります。
「初犯だから執行猶予になる」「刑務所には入らない」と考えている方もいますが、実際の処分は初犯かどうかだけで決まるものではありません。
裁判所は、
- 被害額・被害者数
- 犯行の悪質性・計画性
- 被害弁償・示談の状況
- 反省の程度
などを総合的に考慮して量刑を判断します。
特に、特殊詐欺への関与や被害額が高額な事案、被害者が多数に及ぶ事案では、初犯であっても実刑判決が選択される可能性があります。
被害弁償や示談は不起訴判断において重要な事情となりますが、不起訴になるかどうかは事件全体を踏まえて判断されます。
そのため、初犯だからと安心するのではなく、事件発覚後の対応が処分を大きく左右することを理解しておくことが重要です。
詐欺罪には罰金刑がなく、有罪になれば拘禁刑が科される

詐欺罪(刑法第246条)の法定刑は「10年以下の拘禁刑」であり、罰金刑は定められていません。
そのため、起訴されて有罪判決が確定した場合には、拘禁刑が言い渡されます。
もっとも、言い渡された刑が一定の条件を満たす場合には、裁判所が執行猶予を付すことがあります。
執行猶予付き判決となれば、直ちに刑務所へ収容されるわけではありません。
もっとも、執行猶予が付くかどうかは、初犯であることだけでなく、犯行態様や被害回復の状況などを踏まえて判断されます。
特殊詐欺(受け子・出し子)は初犯でも実刑となる可能性が高い
特殊詐欺は、被害が深刻で社会的影響も大きい犯罪であることから、裁判所は厳しい姿勢で量刑を判断する傾向があります。
そのため、受け子や出し子など組織内で比較的限定的な役割を担っていた場合であっても、事案によっては初犯でも実刑判決となる可能性があります。
量刑を判断する際には、
- 被害額
- 被害者数
- 犯行への関与の程度
- 首謀者との関係
- 被害弁償や示談の状況
- 犯行への参加回数
などが総合的に考慮されます。
特に、被害額が高額な場合や、複数回にわたって犯行へ関与していた場合には、初犯であっても執行猶予が付かず、実刑判決となる可能性があります。
詐欺事件の初犯で実刑と執行猶予を分ける3つのポイント

詐欺事件では、実刑判決となるか、それとも執行猶予付き判決となるかは、裁判所がさまざまな事情を総合的に考慮して判断します。
初犯であることは有利な事情の一つですが、それだけで執行猶予が認められるわけではありません。
裁判所は、被害結果の大きさだけでなく、犯行の悪質性や計画性、被害回復の状況、反省の程度、再犯のおそれなどを踏まえて量刑を決定します。
特に、「被害額」「犯行の悪質性・計画性」「被害者との示談や被害弁償」は、量刑を左右する重要な要素となります。
被害額の大きさは量刑判断で重視される
詐欺事件では、被害額が大きいほど被害結果が重大であると評価される傾向があります。
そのため、高額な被害を生じさせた事案では、実刑判決となる可能性が高くなります。
もっとも、量刑は被害額だけで決まるものではありません。
- 被害者数
- 犯行期間
- 余罪の有無
- 犯行への関与の程度
- 被害弁償の状況
なども総合的に考慮されます。
そのため、被害額が比較的少額でも実刑となる場合がある一方、高額事件であっても示談や十分な被害回復などの事情が考慮され、執行猶予が認められるケースもあります。
犯行の悪質性や計画性も重要な判断材料となる
犯行の態様や計画性も、量刑を左右する重要な事情です。
例えば、
- 特殊詐欺
- ロマンス詐欺
- 保険金詐欺
- 給付金詐欺
などのように、計画的・組織的に行われた犯行は悪質性が高いと評価される傾向があります。
また、首謀者として犯行を主導した場合や、巧妙な手口によって長期間にわたり被害者を欺いていた場合も、不利な事情として考慮される可能性があります。
一方で、従属的な立場で犯行に関与していた場合や、役割が限定的だった場合には、その事情が量刑上考慮されることがあります。
被害者との示談や被害弁償は量刑上重要な事情
被害者との示談や被害弁償は、量刑判断において非常に重要な事情の一つです。
示談とは、加害者が被害者へ謝罪するとともに、損害賠償などを行い、当事者間で紛争を解決する手続です。
被害回復が十分に図られ、示談が成立している場合には、裁判所が反省や更生への意欲を示す事情として評価することがあります。
また、被害者から処罰を望まない旨(宥恕)の意思が示された場合には、量刑上有利な事情として考慮される可能性があります。
もっとも、示談が成立したからといって必ず執行猶予となるわけではありません。
犯行の内容や被害結果なども含めて総合的に判断されるため、できる限り早い段階から被害弁償や示談交渉に取り組むことが重要です。
刑事事件の示談交渉については、以下の記事も合わせてご参照ください。
示談交渉とは?刑事事件の示談の流れや注意点・示談金相場を徹底解説
詐欺の初犯で逮捕されてから起訴・不起訴、判決までの流れ

詐欺の容疑で逮捕されると、警察や検察官による捜査を経て、起訴するか不起訴処分とするかが判断されます。
不起訴処分となれば刑事裁判は開かれず、前科も付きません。
一方、起訴された場合には刑事裁判へ進み、有罪判決を受けると前科が付きます。
そのため、初犯で前科を避けるためには、起訴される前の対応が極めて重要です。
特に、被害弁償や示談交渉、反省の姿勢などは、その後の処分に影響を与える可能性があります。
ここでは、詐欺事件で逮捕された後の一般的な流れを解説します。
警察による逮捕・取調べ(最大48時間)
詐欺の容疑で逮捕されると、警察署で取調べを受けます。
警察は、逮捕から48時間以内に、事件を検察官へ送致(送検)するか、釈放するかを判断します。
この間、警察は関係者から事情を聴取し、証拠を収集して事件の全容を調べます。
また、逮捕された人には弁護士へ依頼する権利が保障されており、早い段階で弁護士の助言を受けることで、取調べへの対応や今後の見通しについて適切なサポートを受けられます。
検察官への送致・勾留(最長20日間)
事件の送致を受けた検察官は、さらに身柄拘束が必要かどうかを判断します。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合には、裁判官へ刑事訴訟法第206条の勾留を請求します。
勾留が認められると、原則10日間、さらに必要がある場合には追加で最長10日間延長されることがあります。
そのため、最大23日間身体拘束を受ける可能性があります。
検察官が起訴・不起訴を判断する
勾留期間中、検察官は証拠や供述内容だけでなく、
- 被害弁償の状況
- 被害者との示談の有無
- 被害額や犯行態様
- 反省の程度
- 再犯のおそれ
などを総合的に考慮して、起訴するか不起訴処分とするかを判断します。
初犯であっても起訴されるケースはありますが、被害回復が十分に図られている場合や、示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性があります。
起訴された場合は刑事裁判で量刑が決まる
検察官が起訴すると、事件は刑事裁判へ進みます。
裁判では、検察官が犯罪事実を立証し、弁護人は反省状況や被害回復、示談の成立など、被告人に有利な事情を主張します。
裁判所は、被害額や犯行の悪質性、被害者数、被害弁償・示談の状況、反省の程度などを総合的に考慮し、実刑とするか、執行猶予付き判決とするかを判断します。
そのため、初犯であっても、逮捕直後から被害回復や示談交渉に取り組むことが、その後の処分を左右する重要なポイントとなります。
詐欺の初犯で不起訴・執行猶予を目指すために重要なポイント
詐欺罪で初めて検挙された場合でも、初犯という事情だけで不起訴になったり、実刑を免れたりするわけではありません。
検察官や裁判所は、犯行の内容だけでなく、被害回復の状況や犯行後の対応なども踏まえ、処分や量刑を総合的に判断します。
特に、被害弁償や示談、反省の姿勢を示すことは、不起訴処分や執行猶予付き判決を目指すうえで重要な事情となります。
被害弁償・示談は処分を左右する重要な事情
詐欺事件では、被害者へ損害を賠償し、誠実に謝罪することが重要です。
被害者との示談が成立し、被害回復が図られた場合には、検察官が不起訴処分を選択する事情として考慮される可能性があります。
また、起訴された後であっても、被害者が処罰を望まない旨(宥恕)の意思を示している場合には、執行猶予付き判決や量刑判断において有利な事情となることがあります。
もっとも、示談が成立したからといって必ず不起訴や執行猶予となるわけではありません。
被害額や犯行態様、計画性、被害者数なども含め、事件全体の事情を踏まえて判断されます。
自首や捜査への協力も有利な事情となる可能性がある
事件が発覚する前に自ら捜査機関へ申告した場合には、刑法第42条上の自首が成立し、刑が減軽される可能性があります。
また、自首に当たらない場合であっても、捜査へ誠実に協力し、事実関係を正直に説明する姿勢は、反省の程度を示す事情として考慮されることがあります。
もっとも、自首が成立するかどうかは、捜査機関が事件や犯人をどの程度把握していたかによって異なります。
そのため、自首を検討している場合には、事前に弁護士へ相談し、適切な対応を取ることが重要です。
自首については、以下の記事も合わせてご参照ください。
自首のメリット・デメリット|その他注意点について解説
詐欺事件を弁護士に相談する3つのメリット
詐欺事件では、逮捕後や捜査を受けている段階でどのような対応を取るかによって、その後の処分が大きく変わることがあります。
特に、被害者との示談や被害弁償は早期に進めるほど有利に働く可能性があるため、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが重要です。
不起訴処分や執行猶予付き判決を目指した弁護活動を受けられる
弁護士は、被疑者・被告人に有利となる事情を整理し、検察官や裁判所へ適切に伝えるための弁護活動を行います。
例えば、
- 被害者との示談が成立していること
- 被害弁償が済んでいること
- 深く反省していること
- 再犯防止に向けた環境が整っていること
などは、処分や量刑を判断するうえで重要な事情となります。
捜査段階では不起訴処分を目指し、起訴後には執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動を受けることができます。
逮捕・勾留された場合の早期釈放を目指せる
詐欺事件では、逮捕後に勾留されると、最大23日間身体拘束を受ける可能性があります。
弁護士は、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを具体的に主張し、勾留を阻止し、早期の身柄解放を目指した活動を行います。
早期に釈放されれば、仕事や学校、家庭への影響を抑えられる可能性があります。
被害者との示談交渉を代理人として進められる
詐欺事件では、示談の成否が処分を左右することがあります。
もっとも、被害者は加害者本人との接触を望まないケースも多く、本人や家族が直接交渉することは容易ではありません。
弁護士が代理人として交渉することで、被害者の心情に配慮しながら謝罪や被害弁償について協議を進めることができます。
また、適切な内容の示談書を作成することで、後日のトラブル防止にもつながります。
詐欺の初犯に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、詐欺事件で初めて捜査を受けている方や、そのご家族からよく寄せられる質問について解説します。
初犯でも実刑になることはありますか?
はい、初犯であっても実刑判決となる可能性はあります。
例えば、
- 被害額が高額である
- 被害者が多数に及ぶ
- 特殊詐欺など組織的な犯行に関与している
- 首謀的な立場で犯行を行った
- 被害回復が行われていない
といった事情がある場合には、初犯であっても実刑判決が選択される可能性があります。
一方で、被害弁償や示談が成立している場合などには、執行猶予付き判決となるケースもあります。
被害者に弁償すれば執行猶予や不起訴になりますか?
必ず執行猶予や不起訴になるわけではありません。
もっとも、被害弁償や示談の成立は、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判所が量刑を判断する際に重要な事情として考慮されます。
そのため、処分の軽減を目指すためには、できるだけ早い段階で被害回復へ取り組むことが重要です。
示談が成立すれば前科はつきませんか?
示談が成立しただけで前科が付かなくなるわけではありません。
示談成立などを踏まえて検察官が不起訴処分とした場合には、刑事裁判が開かれないため前科は付きません。
一方、示談成立後に起訴され、有罪判決を受けた場合には、執行猶予付き判決であっても前科は付きます。
前科を避けるためには、示談を成立させるだけでなく、不起訴処分を目指した適切な対応を行うことが重要です。
初犯であれば逮捕されずに在宅事件になりますか?
必ず在宅事件になるわけではありません。
初犯であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合や、現行犯で逮捕された場合などには、身柄を拘束される可能性があります。
一方で、身元が明らかで証拠も確保されている場合などには、逮捕されず在宅事件として捜査が進められるケースもあります。
逮捕の有無は、初犯かどうかだけではなく、事件の内容や捜査の必要性などを踏まえて判断されます。
まとめ
詐欺罪は、初犯だからといって必ず軽い処分になる犯罪ではありません。
被害額や犯行態様、被害者数、組織性などによっては、初犯であっても実刑判決となる可能性があります。
一方で、被害者への謝罪や被害弁償、示談の成立、反省の態度などが考慮され、不起訴処分や執行猶予付き判決となるケースもあります。
詐欺事件では、事件発覚後の対応がその後の処分を大きく左右します。
前科の回避や処分の軽減を目指すためには、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談し、適切な対応を進めることが重要です。
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コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。