更新日:2026年2月26日 (木)

公開日:2023年7月25日 (火)

不倫慰謝料の減額交渉|相場と減額が期待できるケースを解説

不倫慰謝料の減額交渉|相場と減額が期待できるケースを解説 不倫慰謝料の減額交渉|相場と減額が期待できるケースを解説

サマリー

不倫相手の配偶者から高額な慰謝料を請求され、相場より高すぎるのではないか、減額できる事情はないかと不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

不貞行為による慰謝料には裁判上の目安となる相場が存在し、夫婦関係への影響や不倫の期間、双方の状況などによっては減額交渉が可能なケースもあります。

また、事情によっては支払い義務自体を否定できる場合もあります。

この記事では、不倫慰謝料の相場や減額が考慮されやすい要素、合意に至らない場合の対処法について解説します。

不倫慰謝料の相場と夫婦関係への影響による違い

不倫慰謝料の相場と夫婦関係への影響による違い

不倫(不貞行為)によって請求される慰謝料の金額は、法律で一律に決められているわけではありません。

実際の裁判実務や示談交渉においては、不貞行為によって相手の夫婦関係がどのような影響を受けたかという点が算定の大きな基準となります。

離婚の有無による慰謝料相場の目安

慰謝料の金額を左右する重要な要素の一つが、相手夫婦が「離婚するかどうか」です。

平穏な婚姻生活が破綻に至った場合と、夫婦関係が継続する場合とでは、配偶者が受ける精神的苦痛の評価が異なります。

相手夫婦の状況 慰謝料の一般的な相場
不倫後も夫婦関係を継続する場合(離婚しない) 100万〜150万円程度
不倫が主な原因で離婚に至る場合 150万〜300万円程度

相手夫婦が離婚せず婚姻関係を維持する場合、精神的苦痛の度合いは相対的に低く見積もられやすく、相場は100万〜150万円程度とされています。

そのため、150万円を超えるような高額な請求を受けている場合は、減額を主張できる余地が十分にあります。

一方で、不倫が直接的な原因となって離婚に至った場合は、平穏な夫婦関係を破綻させた責任が重く評価され、相場は150万〜300万円程度まで高額化する傾向にあります。

婚姻期間や子どもの有無が慰謝料算定に与える影響

慰謝料の金額は、離婚の有無だけでなく、不倫が発覚する前の夫婦関係の実態によっても変動します。

長く築き上げられてきた家庭基盤が壊された場合のほうが、法的な保護の必要性が高いと判断されるためです。

具体的には、相手夫婦の婚姻期間が3年以上と長い場合や、家庭内に小さな子ども(特に複数人)がいる場合は、夫婦関係への打撃が大きいとみなされ、慰謝料が高額化しやすい要素となります。

提示された請求額が相場から著しく乖離している場合や、相手夫婦の状況に照らして過大であると考えられる場合は、適正な水準への減額を目指して交渉を進めることが重要です。

不倫慰謝料の減額が考慮されやすい主な事情

不貞行為に対する慰謝料請求を受けた場合でも、個別の事情によっては相場より低額な水準にとどまることや、減額に向けた交渉の余地が生じることがあります。

婚姻期間の短さや不貞行為の期間・回数

相手方夫婦の婚姻期間が3年未満など比較的短い場合、婚姻生活によって築かれた平穏な関係の期間も短いと評価され、慰謝料額が低めに算定される傾向があります。

また、不倫関係が1か月程度と短期間であったり、肉体関係の回数が2〜3回程度にとどまるなど悪質性が低いと判断される場合も、精神的苦痛の程度が限定的であるとして減額の要素になり得ます。

退職や社会的制裁を受けた事情

不倫が原因で職場を退職・降格させられたり、自身の配偶者と離婚に至るなど、すでに相応の不利益や社会的制裁を受けている事情がある場合、慰謝料額の判断において考慮されることがあります。

社会的制裁によって被害感情がある程度緩和されたとみなされることがあり、交渉において減額事情として主張できる場合があります。

W不倫と求償権の放棄による減額アプローチ

双方が既婚者である「W不倫」の場合、自身の配偶者から不倫相手に対しても同様に慰謝料を請求できる立場にあります。

双方の家庭間で互いに請求し合う形になるため、相殺的な観点から金額の調整が図られるケースがあります。

また、不貞行為は共同不法行為となるため、慰謝料を全額支払った当事者は、もう一方の当事者に対して負担割合に応じた金額を請求できる「求償権」を有します。

相手方夫婦が離婚しない場合、求償権を行使されると相手方家庭内でお金が循環するだけになるため、あらかじめ求償権を放棄する代わりに示談金額を減額してもらう交渉方法が実務上有効となることがあります。

慰謝料の支払い義務自体を否定できる可能性があるケース

不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合でも、法律上の要件を満たしていなければ支払い義務そのものを否定できるケースがあります。

単なる減額にとどまらず、法的に請求を退けられる可能性がある代表的な事情について解説します。

肉体関係を伴わない交際である場合

法律上の損害賠償責任が生じる「不貞行為」とは、原則として配偶者以外の者と自由な意思に基づいて肉体関係を持つことを指します。

そのため、複数人で食事をした、手をつないだ、メッセージのやり取りをしていたといった程度であれば、原則として慰謝料の支払い義務は生じません。

ただし、二人きりで宿泊を伴う旅行に出かけた場合や、ラブホテルへの出入りが確認されている場合などは、肉体関係があったと推認される傾向があります。

また、肉体関係がなくても相手夫婦の婚姻関係を破綻に至らせるような悪質な交際態様と判断されれば、例外的に不法行為が成立する場合もあります。

不貞行為の前に夫婦関係が既に破綻していた場合

不貞行為が始まるより前の時点で、相手夫婦の婚姻関係が実質的に破綻していた場合、法律上保護すべき夫婦関係の平穏が存在しないため、慰謝料請求は認められないと判断される傾向にあります。

破綻の実態としては、不仲や離婚協議を理由とした長期の別居状態などが典型です。

一方で、単身赴任や病気療養など関係悪化以外の理由による別居や、同居を継続しながらの家庭内別居などは、破綻の客観的な証明が困難になりやすい点に注意が必要です。

相手が既婚者であると知らず過失もなかった場合

不法行為責任が認められるためには、相手が既婚者であると知っていたこと(故意)、または注意を払えば既婚者であると知ることができたのに不注意で知らなかったこと(過失)が必要です。

したがって、相手が既婚者であることを知らず、知らなかったことにも正当な理由がある場合は責任を負いません。

例えば、独身者限定のイベントで出会い、日常的な連絡や単身向けの居住状況からも既婚者と疑う余地がなかった場合などが該当します。

一方で、相手から「妻とは離婚調停中」「夫婦仲は冷え切っている」などと説明されていた場合は、既婚者である認識があるため過失が否定されないのが一般的です。

慰謝料請求権の消滅時効(3年)が成立している場合

不貞行為に基づく損害賠償請求権には消滅時効が定められています。

請求権者である配偶者が「不貞行為の事実」および「不倫相手が誰であるか」を知った時点から3年間、権利を行使しないまま経過すると時効により請求権は消滅します。

時効期間が経過している場合、時効援用の意思表示を行うことで支払いを法的に拒否することが可能です。

なお、交際自体が3年以上前であっても、配偶者が不倫の事実を知ったのが最近である場合は時効が成立していない点に留意が必要です。

不貞行為を裏付ける客観的な証拠が存在しない場合

裁判手続きにおいては、慰謝料を請求する側に不貞行為の事実を裏付ける客観的な証拠の立証責任があります。

ホテルへの出入りを示す写真や性交渉を推認させるメッセージ履歴などの証拠が一切存在しない場合、相手方の請求が法的に認められない可能性が高くなります。

ただし、当事者が把握していない段階で探偵の調査報告書などが相手方に確保されているケースもあるため、事実関係の慎重な確認と冷静な対応が求められます。

相手方が減額に応じない場合の対処法と留意点

相手方が減額に応じない場合の対処法と留意点

慰謝料の減額交渉を行っても相手方が応じない場合、提示された金額をそのまま受け入れるか、支払いを拒絶して法的な手続きへ進むかの判断を迫られることがあります。

経済的な事情や法的な見通しを踏まえ、現実的な対応策を検討することが大切です。

一括払いが困難な場合の分割払い提案と注意点

減額交渉が難航した場合や、合意した金額であっても一括での支払いが困難な場合には、分割払いを提案することが選択肢の一つとなります。

自身の収入や生活費を考慮した無理のない支払い計画を提示することで、相手方が合意に応じることもあります。

分割払いに合意する場合、請求側から滞納のリスクを避けるために公正証書の作成を求められるのが一般的です。

公正証書に強制執行認諾文言が盛り込まれていると、万一支払いが滞った際に裁判を経ることなく財産や給与の差し押さえを受ける可能性があります。

分割払いは長期にわたる経済的負担や関係の継続といった負担が生じるため、慎重に条件を検討する必要があります。

当事者 分割払いにおける主な留意点
請求側 途中で支払いが滞るリスク、公正証書作成の手間や強制執行時の財産把握
被請求側 長期間にわたる支払い義務、振込手数料の負担、滞納時の差し押さえリスク
双方共通 問題の完全解決までに長期間を要し、関係性が継続する精神的負担

協議がまとまらない場合の訴訟への移行と流れ

当事者同士の協議で慰謝料額や支払い方法について折り合いがつかない場合、相手方が裁判所へ民事訴訟を提起することが想定されます。

交渉段階では感情的な対立から強硬な請求が続いていた場合でも、訴訟手続に移行すれば裁判官が法的な観点や証拠に基づいて客観的に判断します。

  1. 訴状の送達:相手方が訴訟を提起すると、裁判所から訴状や呼出状が自宅に届きます。
  2. 答弁書の提出と審理:訴状の内容に対する反論を記した答弁書を提出し、裁判期日で主張と証拠を出し合います。
  3. 和解の試みまたは判決:裁判官から相場や証拠状況を踏まえた和解案が提示されることが多く、和解が成立しない場合は判決が下されます。

裁判所からの訴状を放置すると相手方の請求がそのまま認められてしまうおそれがあるため、届いた書面の内容を確認した上で期日までに適切な対応をとることが重要です。

不倫慰謝料の減額交渉と弁護士への相談

当事者間での直接交渉を避ける意義

不倫慰謝料の請求を受けた際、当事者同士で直接話し合いを行うと、お互いに感情的になりやすく冷静な協議が難しくなるケースが少なくありません。

相手方からの強い追及に対して精神的な負担を感じ、相場から大きくかけ離れた過大な金額で合意してしまうリスクも存在します。

弁護士が代理人として間に入ることで、相手方と直接接触することなく、法的な観点に基づいた冷静な減額交渉を進めることが可能になります。

過去の裁判例や類似の事案に照らし合わせながら、婚姻関係への実質的な影響や不貞行為の態様といった事情を客観的に主張・立証していくことが、妥当な金額での解決を目指すうえで重要となります。

減額交渉を検討する際の弁護士選びの視点

不倫慰謝料の交渉を相談する際には、男女問題や不貞慰謝料請求・被請求の双方について取り扱い経験がある法律事務所を選ぶことが参考になります。

相手方の出方や主張の組み立て方を把握していることで、状況に応じた適切な対応策を検討しやすくなります。

法律事務所を選ぶ際に確認しておきたい主なポイントは次のとおりです。

  • 不貞慰謝料の請求・減額交渉に関する相談対応の経験があるか
  • 電話やオンライン面談など、状況に応じた相談方法が用意されているか
  • 相談料や着手金、報酬金などの費用体系が明確に説明されているか

慰謝料請求への対応方針に迷った場合は、早い段階で相談し、自身の状況に応じた法的な見通しを確認することが推奨されます。

コラム監修者

SHIZU ISHIDA

SHIZU ISHIDA

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。

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