更新日:2026年2月26日 (木)
公開日:2024年3月8日 (金)
慰謝料請求を弁護士なしで対応するのが難しい2つの理由
サマリー
不貞行為などで慰謝料を請求された際、弁護士費用を考慮して自分で対応できるか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
しかし、法的な相場や交渉のポイントを知らないまま対応を進めると、高額な支払いに応じてしまったり、訴訟に発展して長期間の負担が生じたりするリスクがあります。
この記事では、慰謝料請求をご自身で対応するのが難しい理由や、例外的に自分で対応が検討できるケース、弁護士への相談を検討すべき状況について詳しく解説します。
慰謝料請求された際に弁護士なしでの対応をおすすめしない2つの理由

配偶者や交際相手のパートナーなどから不貞慰謝料を請求された際、弁護士を立てずにご自身だけで対応しようとすると、思わぬ不利益を被るリスクがあります。
自分で対応することをおすすめしない主な理由には、「相場を知らずに高額な支払いに応じてしまうリスク」と「裁判へ発展した際の長期間にわたる手続きの負担」の2点が挙げられます。
理由1:法的な相場を知らずに高額な慰謝料を支払ってしまう可能性がある
不貞行為に基づく慰謝料には裁判実務上の目安や相場が存在しますが、示談交渉における請求金額自体には法的な上限が定められていません。
そのため、相手方が感情的になり、相場を大きく超える高額な慰謝料を請求してくるケースも珍しくありません。
本来であれば、婚姻関係がすでに破綻していた事情や相手方が主導して関係を持った事情、既婚者であることを隠していた事情などがあれば、法的な減額交渉が可能です。
しかし、法知識や交渉経験がないまま対応すると、相手の請求内容に反論できず、そのまま不当に高い金額で合意してしまうおそれがあります。
理由2:訴訟に発展した場合に書類作成や平日出頭などの負担が長期間続く
当事者同士の直接交渉ではお互いに感情的な対立が生じやすく、話し合いが平行線をたどった結果、相手方から訴訟を起こされる可能性があります。
裁判に移行した場合、解決までにおよそ半年から1年程度の期間がかかることが一般的です。
訴状に対する答弁書をはじめ、期日ごとに自身の主張をまとめた準備書面や客観的な証拠を裁判所へ提出し続けなければなりません。
また、裁判の期日は平日の日中に指定されます。
仕事や日常生活を送りながら、期限内に法的な書類を作成したり平日に出頭したりすることは、時間的にも精神的にも非常に大きな負担となります。
| 手続きの段階 | 目安となる期間 | 主な対応内容 |
|---|---|---|
| 答弁書の提出〜第1回期日 | 1か月〜2か月 | 訴状内容の認否や反論をまとめた答弁書の作成・提出 |
| 口頭弁論・主張立証 | 6か月〜1年 | 1〜2か月ごとの期日に向けた準備書面や証拠の提出、期日への出頭 |
| 和解協議・尋問〜判決 | 1か月〜2か月 | 裁判官を交えた和解協議、当事者尋問への対応、判決の受領 |
法的な知見を持たずに単独で訴訟へ臨むと、主張の組み立てや証拠提出が不十分となり、自分にとって不利な結果を招いてしまうリスクも考慮する必要があります。
慰謝料請求で弁護士なしでも対応が検討できるケース
慰謝料を請求された場合、全てのケースで必ずしも弁護士を立てる必要があるとは限らず、状況によってはご自身での対応を検討できる場合もあります。
費用面や交渉の難易度を踏まえ、当事者間での解決が視野に入るケースについて確認しておきましょう。
請求額が低額で弁護士費用とのバランスが見合わない場合
相手方から請求されている金額が低額である場合、弁護士に依頼することで減額できる金額よりも弁護士費用のほうが大きくなり、経済的なメリットが小さくなる可能性があります。
いわゆる費用倒れのリスクが懸念される事案では、提示されている金額の妥当性やご自身の支払い能力を考慮し、ご自身での示談交渉を進める選択肢が考えられます。
請求額と弁護士費用の費用対効果を慎重に比較検討することが大切です。
当事者双方が冷静で話し合いによる合意が見込める場合
不貞行為等の慰謝料トラブルでは感情的な対立が生じやすい傾向にありますが、双方が冷静な態度を保ち、訴訟ではなく話し合いによる円満な解決を望んでいるケースもあります。
お互いに現実的な落としどころを探る姿勢があり、過度な要求や感情的な衝突が起きない状況であれば、弁護士を介さずに当事者同士の協議で合意に至る可能性が考えられます。
ただし、当事者間で合意が成立した場合であっても、後々の蒸し返しや支払いをめぐる再度の紛争を防ぐため、合意内容を示談書などの書面に正確に残しておくことが重要です。
弁護士への相談や依頼を検討すべきケース

慰謝料請求を受けた場合、状況によってはご自身だけで対応しようとせず、速やかに弁護士への相談や依頼を検討したほうがよいケースがあります。
請求額が150万円以上など高額なケース
相手方から150万円以上といった高額な慰謝料を請求されている場合は、弁護士への相談を検討するべき典型的な状況といえます。
不貞行為の慰謝料には裁判例などを基にした一定の相場が存在しますが、示談交渉においては請求側が相場を大きく上回る金額を提示してくることも少なくありません。
法的な減額事由が存在する場合でも、根拠を持った主張ができなければ、請求された高額な条件のまま合意に至ってしまうリスクが考えられます。
相手方に弁護士がついているケース
相手方がすでに弁護士を代理人として立てている場合、法律の知識や交渉の経験に大きな差が生じるため、ご自身だけで対等に話し合うことは容易ではありません。
相手方の弁護士は法的な根拠や証拠に基づいて請求を行ってきます。こちらも適切な減額要素を整理して主張できなければ、相手側のペースで交渉が進む可能性が高くなります。
知識の差から不利な内容で示談を結んでしまう事態を避けるためにも、法的な知見を持つ弁護士の関与が望まれます。
裁判所から訴状が届き訴訟を提起されたケース
すでに裁判所から訴状や呼出状が届き、相手方から民事訴訟を提起されている場合は、弁護士への相談を強く検討すべき状況です。
訴訟手続きでは、指定された期日までに答弁書を作成して提出し、その後も準備書面や客観的な証拠を用いて法的な主張を組み立てる必要があります。
適切な主張や立証を行わずに期日を放置したり対応を誤ったりすると、相手方の請求がそのまま認容されるおそれがあるため、早急な検討が求められます。
慰謝料減額交渉における法的な考慮要素と解決のポイント
慰謝料の減額交渉を進めるにあたっては、法的にどのような事情が金額の算定に影響を与えるのかを把握しておくことが重要です。
慰謝料の減額交渉で考慮される主な要素
不貞行為に基づく慰謝料の額は、婚姻生活への影響度合いや関係性の経緯など、様々な要素を総合的に考慮して判断されます。
減額の交渉材料となり得る主な要素としては、以下のような点が挙げられます。
- 不貞関係が始まる前からすでに夫婦関係が破綻していたこと
- 交際相手側が主導して関係が開始・継続されていたこと
- 相手が既婚者であることを知らず、知らなかったことに過失がないこと
- 不貞行為の期間が短く、関係の頻度も少なかったこと
これらの事情を主張する際には、単に口頭で伝えるだけでなく、メッセージ履歴や当時の状況を示す客観的な証拠を整理して提示することが求められます。
感情論を避けた法的主張と適切な書面作成
慰謝料を請求された当事者間では、お互いに感情的になりやすく、言い争いや一方的な主張のぶつかり合いに発展してしまうケースが少なくありません。
減額交渉を円滑に進めるためには、感情論を排し、法的な根拠に基づいた客観的な主張に徹することが不可欠です。
また、交渉のやり取りや最終的な示談内容は、後々のトラブルを防ぐために書面で明確に残しておく必要があります。
示談書には、支払う慰謝料の額や支払期日だけでなく、清算条項や口外禁止条項など、将来の紛争を防ぐための条項を適切に盛り込むことが大切です。
まとめ:慰謝料請求を受けたらまずは弁護士への相談を検討
慰謝料を請求された場合、弁護士を立てずにご自身で対応することには、弁護士費用を抑えられるという利点がある一方で、法的な相場を知らずに高額な支払いに応じてしまうリスクや、交渉が決裂して訴訟に発展した際の負担といった側面も存在します。
請求額が低額で双方が冷静に話し合える状況であれば自己解決が図れる場合もありますが、高額な請求を受けている場合や相手方に弁護士がついているケースでは、慎重な見極めが欠かせません。
ご自身で対応するメリットとリスクを慎重に比較検討し、状況に応じた適切な方針を選択することが大切です。
対応方針に迷う場合は、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談し、法的な見通しや減額要素の有無について客観的なアドバイスを受けることが有益です。
法的な観点から事案を整理することで、不当に高額な示談を回避しやすくなります。
相談したからといって必ずしも依頼をしなければならないわけではありません。
まずは相談窓口を活用して現在の状況を客観的に把握し、ご自身にとって無理のない解決手順を整理することをおすすめします。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。