更新日:2026年2月26日 (木)
公開日:2024年9月3日 (火)
略奪婚のリスクとは?慰謝料や離婚に関する法的注意点を解説
サマリー
配偶者がいる相手との交際や結婚を検討するなかで、どのような法的責任が生じるのか、将来的なトラブルに不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。既婚者との交際から結婚に至る過程では、慰謝料請求や離婚手続きの難航、子どもに関する取り決めなど、さまざまな法的リスクが伴います。この記事では、略奪婚の法的な位置づけや想定される慰謝料・離婚に関する注意点、生じうる金銭的・現実的な問題について分かりやすく解説します。
略奪婚とは?法的な位置づけと基本的な考え方

略奪婚の一般的な定義
略奪婚とは、一般的に配偶者や特定の交際相手がいる人物と恋愛関係を持ち、その相手を現在のパートナーと別れさせたうえで自身と結婚に至ることを指します。
この言葉は日常会話やメディアなどで広く使われていますが、民法などの法令上において「略奪婚」という固有の法概念が規定されているわけではありません。
当事者の婚姻状況による法的な違い
交際する双方が独身である場合、相手に恋人がいたとしても、倫理的・道徳的な評価は別として、法律上の権利侵害や損害賠償といった民法上の問題が生じることは原則としてありません。
しかし、当事者の一方または双方が既婚者である場合には、法律関係が大きく変化します。婚姻中の夫婦には貞操義務などがあり、婚姻共同生活の平和は法的に保護される権利利益とされているためです。
配偶者がいる相手との交際から結婚に至る過程では、民法上の不法行為に基づく責任や各種の法的問題が発生する可能性があります。
不貞行為および婚姻関係破綻との関係
既婚者が配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて肉体関係を持つ行為は「不貞行為」とみなされ、配偶者の権利を侵害する不法行為に該当するのが一般的です。
また、肉体関係の存在が明確でない場合であっても、交際の態様や働きかけによって夫婦の婚姻生活を破綻に至らしめたと判断されれば、違法性が認められる事例も存在します。
一方で、新たな交際が始まるよりも前の段階で、長期間の別居や実質的な婚姻関係の喪失などにより夫婦関係が客観的に破綻していたと評価される場合には、法的な判断が異なることもあります。
略奪婚に伴う主な法的リスクと注意点
不貞行為や婚姻関係破綻に伴う慰謝料請求のリスク
配偶者がいる相手との交際では、相手の配偶者から不法行為に基づく慰謝料を請求される可能性があります。法律上の慰謝料請求は原則として肉体関係(不貞行為)が存在することが前提とされますが、交際の状況によっては肉体関係が明確でない場合でも責任が追及されることがあります。
過去の裁判例では、肉体関係が明確に認められない場合であっても、配偶者に対して離婚や結婚を強く求め続け、結果として夫婦関係を破綻に至らせた行為について違法性を認め、慰謝料の支払いを命じた事例が存在します(東京地裁平成17年11月15日判決)。
肉体関係の有無にかかわらず、他方の婚姻関係を故意に破綻させたと評価される行為があれば、法的な損害賠償責任を負うリスクが存在します。
なお、不貞行為に伴う慰謝料の一般的な目安は50万〜300万円程度とされていますが、婚姻期間の長さや子どもの有無、破綻に至る経緯などの個別事情によって金額は変動します。
有責配偶者からの離婚請求の制限と手続きの長期化
配偶者以外の第三者と不貞関係を持った側は、法律上、婚姻関係の破綻に主たる責任がある「有責配偶者」とみなされます。民法第770条には裁判上の離婚事由が規定されていますが、実務上、有責配偶者側から配偶者に対して一方的に離婚を請求することは原則として認められません。
配偶者が離婚を拒否している場合、裁判で離婚が認められるためには、長期間の別居実績や未成熟の子が存在しないことなど、厳格な要件を満たす必要があります。
そのため、話し合いや法的手続きが長期化し、意図した時期に婚姻関係を解消できないケースも考えられます。また、早期の協議離婚を目指す過程で、相場よりも多額の慰謝料や財産分与の支払いを求められるなど、金銭面での負担が増大する傾向もあります。
子どもや金銭面で生じうる法的・現実的な問題

既婚者との間で再婚を見据える場合、当事者同士の感情だけでなく、相手や自身の家庭環境、特に子どもに関する法的義務や金銭的な負担について現実的に把握しておく必要があります。
子どもがいる場合に生じる法的権利と義務
夫婦に未成年の子どもがいる場合、離婚の際には必ず父母のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。親権を獲得できなかった親は、子どもと離れて暮らすことになります。
一方で、相手が親権者となった場合には、再婚後にその子どもと同居して生活を送るケースも考えられます。子どもとの関係構築や生活環境の変化は、家庭生活において重要な要素となります。
親権を持たない側の親であっても、親として子どもを扶養する義務が消滅するわけではありません。一般的に、子どもが自立するまでの間、毎月の養育費を支払う義務が継続します。
また、子どもと離れて暮らす親には面会交流を行う権利が認められています。離婚が成立した後も、面会交流の実施などを通じて元配偶者との連絡や調整が続くことが一般的です。
離婚給付や慰謝料支払いに伴う経済的な影響
婚姻関係を解消するにあたっては、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を清算する財産分与や、不貞行為等に伴う慰謝料の支払いといった金銭の取り決めが行われます。
これらの金銭給付によって相手の手元資金や資産が大幅に減少することがあり、再婚後の家計や生活水準に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、毎月の養育費の支払いが加わることで、新生活における固定的な支出が長期にわたって発生します。経済的な見通しを事前に慎重に確認しておくことが求められます。
離婚後に交際・略奪婚が発覚した場合の法的責任
離婚が無事に成立した後に交際や再婚の事実が元配偶者に知られた場合でも、法的な責任を問われる可能性がなくなるわけではありません。「離婚後であれば問題にならない」と捉えられがちですが、交際や肉体関係が始まった時期、当時の夫婦関係の状況によって法的な評価は大きく異なります。
離婚前の不貞行為が後から発覚した場合
婚姻期間中に肉体関係を伴う交際(不貞行為)が存在していた場合、それが離婚後に発覚したとしても、元配偶者から不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求される可能性があります。
離婚が成立したからといって、過去に行われた不貞行為に対する責任が免除されるわけではありません。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効が完成していない限り、元配偶者は交際相手や元パートナーに対して慰謝料を請求する法的な権利を有しています。
離婚成立後であっても、婚姻期間中の不貞行為が明らかになれば慰謝料請求を受けるリスクは残ります。
離婚後や婚姻関係破綻後の関係における法的解釈
肉体関係を持った時期が正式に離婚した後であった場合には、婚姻共同生活の平和を侵害したとは評価されにくいため、原則として不貞行為を理由とする慰謝料の支払い義務は生じないと解されています。
また、離婚が成立する前であっても、長期間の別居などによって既に夫婦関係が客観的に破綻していたと認められる時期以降に交際が始まった場合には、保護すべき婚姻関係が存在しなかったとして不法行為が成立しないとされることがあります。
ただし、婚姻関係が破綻していたかどうかの判断は、客観的な証拠や別居期間の長さなどをもとに慎重に行われます。単に「夫婦仲が冷え切っていた」という主観的な主張だけでは破綻と認められないケースも多いため、判断には慎重な検討が求められます。
| 交際・肉体関係の時期 | 法的な責任に関する一般的な考え方 |
|---|---|
| 婚姻中(破綻前)に不貞行為があった場合 | 離婚後であっても発覚した時点で慰謝料請求を受ける可能性がある |
| 婚姻関係が客観的に破綻した後の交際 | 破綻の事実が法的に認められれば慰謝料請求が否定される傾向にある |
| 正式な離婚成立後の交際開始 | 原則として不貞行為には該当せず、慰謝料請求は認められにくい |
法的トラブルや慰謝料請求への対応と弁護士への相談
慰謝料請求や離婚協議における冷静な対応
相手方の配偶者から慰謝料を請求されたり、離婚に向けた協議が難航したりした場合は、感情的な対立を避け、冷静に法的な論点を整理することが求められます。請求額の妥当性や不貞行為の有無、婚姻関係の破綻時期など、事実関係の正確な把握が重要です。
請求を放置したり、焦って十分な確認をせずに合意書へ署名・捺印したりすると、相場から大きく乖離した条件を受け入れることになりかねません。相手方からの書面や主張内容を慎重に確認し、手続きを進める必要があります。
十分な法的検討を行わないまま安易に要求を受け入れたり、感情的に反論したりすることは避ける必要があります。
弁護士への相談による法的な整理と見通しの把握
既婚者が関わる交際や結婚においては、慰謝料請求の可否や離婚手続きの進行、子どもの親権や養育費など、多岐にわたる法律問題が複雑に絡み合います。当事者間のみでの話し合いでは感情的な衝突が生じやすく、交渉が長期化することも少なくありません。
弁護士などの専門家に相談することで、裁判例や民法の規定を踏まえた客観的な見通しを把握し、個別の事情に応じた法的な助言を得ることができます。法的な論点を整理し、適切な方針を立てることがトラブル解決への足がかりとなります。
法的なリスクや義務について正確に理解し、後々のトラブルを防ぐためにも、疑問や不安が生じた段階で弁護士への相談を検討することが有益です。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。