更新日:2023年11月16日 (木)

公開日:2023年11月10日 (金)

事例から学ぶインドにおける紛争防止3 – ホワイトカラークライム(社内不正)

事例から学ぶインドにおける紛争防止3 – ホワイトカラークライム(社内不正) 事例から学ぶインドにおける紛争防止3 – ホワイトカラークライム(社内不正)

サマリー

インドにおける紛争防止について、事例をご紹介します。

相談内容

弊社は自動車メーカー向け部品をインドで製造するサプライヤーです。先日弊社従業員と思われる者から、社内不正の告発に関する匿名のメールを受領しました。購買担当マネージャーが不正にベンダーからキックバックを受領するとともに、自身の配偶者が所有する会社に不正に報酬を流している旨を告発するものでした。どのように対応すれば良いでしょうか?

インドにおけるホワイトカラークライム(社内不正)

インドにおいてはインド人従業員による横領、不正なキックバックの受領または架空経費の請求といったホワイトカラークライム(社内不正)がメジャーな問題となっております。場合によっては、被害が億単位になる場合もあり、リスクとして軽視できるものではありません。インドでは、他国と比較して社内不正が発生する頻度が多く、また発生した場合の損害額も多額になる場合がある他、贈収賄など重大なコンプライアンス上の問題が併発するケースもあるため、インドにおけるホワイトカラークライム対策は、本社レベルで対応すべき重大な経営マターということができます。

初動の重要性

では、社内不正が発覚した場合、どのような対応をとれば良いのでしょうか。社内不正が発覚した場合、3つのステップをたどることが一般的であり、具体的には

  1. 事実関係の確認及び証拠の収集
  2. 実施すべき対応策の検討
  3. 対応策の実施

と言う手順で対処することが一般的です。

この中でも特に重要なのが①事実関係の確認及び証拠の収集です。収集される証拠によってどれだけ不正行為を裏付けることができるかによって、会社が採用しうる法的措置の範囲が変わりうるためです。

本件でも、事実関係の確認は慎重かつ入念に行われました。具体的には、不正を行った従業員の社用パソコンの押収及びその内容の解析、キックバックの支払いが疑われるベンダーに対するヒアリングの実施、配偶者が所有する会社情報の取得、その他従業員に対するヒアリングの実施など、多岐にわたる調査が実施されました。調査の結果、ベンダーから個人の口座に対するキックバックの支払いに関する証拠やキックバックの支払いを認めるベンダーからの証言、配偶者が所有する会社に対する不透明な資金流出に関する証拠を収集することができました。

対応策の検討

事実関係の確認及び証拠の収集が完了した後、次のステップとして本件において実施すべき対応策を検討することになります。

社内不正事案において検討すべき主要な対応策は以下のとおりです。

  1. 不正を行った従業員に対する雇用上の処分(懲戒解雇、定職、普通解雇等)
  2. 不正を行った従業員に対する民事上の請求(提示する損害賠償金額、相手方が争った場合に民事訴訟を提起するか否かなど)
  3. 不正を行った従業員に対する刑事責任の追及(刑事告訴の実施、相手方が任意に損害を賠償した場合の措置等)
  4. 再発防止策(配置転換や決裁手続きの見直し、内部通報制度の整備等)

本件において採用された措置

本件は、初動における事実関係の確認及び証拠の収集がうまくいったこともあり、従業員の不正を裏付ける十分な証拠が収集されていました。また、キックバックの総額が多額に上り、さらに配偶者が所有する会社に不正に資金を流出させるなど悪質性も高かったため、他の従業員との関係で示しをつける必要があり、懲戒解雇及び民事上の損害賠償請求をすることはもちろん、刑事告訴についても実施する前提で準備は進みました。

しかし、交渉に臨んだ際に、不正を行った従業員から、懲戒解雇及び被害弁償についてはやむを得ないものであり受け入れるが、刑事告訴はやめてほしい、もし刑事告訴をするのであれば、自分が在職中に行ったオフィサーに対する賄賂支払いの事実を公にすると脅してきました。

相談企業としては、賄賂が実際に支払われていたかどうか確認する術はなく、万が一賄賂の支払いが事実であった場合に、これを公にされることのリスクは許容することができないものであるという結論に至りました。結果として、不正を行った従業員は懲戒解雇され、会社が被った損害は弁償されましたが、刑事告訴は実施されませんでした。

また、購買担当者がベンダーを決定するにあたって絶対的な裁量を有していたという点が本件不正発生の原因であったことから、ベンダー選定の際に上長の承認を必要とするとともに、複数のベンダーから見積もりを取ることを社内ルールとしました。さらに、相談企業は、汚職防止に対する取り組みが不十分であったことから、汚職防止ポリシー及び定期的な汚職防止のためのトレーニングの実施を導入しました。

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