更新日:2026年7月28日 (火)
公開日:2026年7月28日 (火)
物損事故から人身事故に変更された!加害者側の罰則・免停・対処法を解説
サマリー
物損事故として処理された後、被害者から診断書が提出され、警察から人身事故へ切り替わるとの連絡を受けて動揺する加害者側の方は少なくありません。
事故当時は症状を訴えていなかった相手方が、後日、医療機関を受診して診断書を提出したことで、事故の扱いが大きく変わるケースがあります。
この記事では、物損事故が人身事故へ切り替わった際に加害者側が直面する行政処分・刑事処分や免許への影響、さらに今後取るべき具体的な対応について詳しく解説します。
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物損事故から人身事故へ切り替わると加害者側に何が起こるのか

物損事故から人身事故へ切り替わると、加害者側が負う責任の内容は大きく変わります。
物損事故は、原則として車両やガードレールなどの物的損害を対象とする事故であり、通常は民事上の損害賠償問題として扱われます。一般的な物損事故のみであれば、運転免許の違反点数加算や過失運転致死傷罪による刑事処分の対象にはなりません。
しかし、人身事故は被害者にけがなどの人的被害が生じた事故であり、加害者側は行政上・刑事上・民事上の3つの責任を負う可能性があります。
物損事故として処理されていた段階とは異なり、より重い法的責任や手続対応が必要になる可能性があると認識しておくことが重要です。
行政・刑事・民事の3つの責任を負うことになる
人身事故になると、加害者側は3つの異なる法的責任を負う可能性があります。
第一に「行政上の責任」として、運転免許の違反点数が加算され、累積点数によっては免許停止や免許取消しの対象となる可能性があります。
第二に「刑事上の責任」として、過失運転致死傷罪などの容疑で捜査を受け、罰金刑や懲役刑が科される可能性があります。
第三に「民事上の責任」として、被害者の治療費、休業損害、入通院慰謝料など、物損事故よりも広範囲な損害賠償責任が問題となります。
警察による実況見分や事情聴取が行われる
物損事故から人身事故へ切り替わると、警察による捜査や事実確認の手続が進められます。
これには、事故現場で当事者立ち会いのもと行われる実況見分や、警察署での事情聴取が含まれます。
実況見分では、事故発生時の車両の位置や動き、道路状況、信号の状況などが確認され、実況見分調書や供述調書などの資料が作成されます。
これらの調書は、後の過失割合の判断や刑事処分の判断資料として扱われる重要な資料となるため、記憶に基づいて正確かつ誠実に説明することが重要です。
免停になる?物損事故から人身事故への変更で科される行政処分
人身事故へ切り替わった場合、多くの方に関心があるのが運転免許への影響ではないでしょうか。
物損事故では加算されなかった違反点数も、人身事故へ切り替わることで加算対象となるのが一般的です。
この点数によっては、運転免許の停止(免停)や、最悪の場合には免許取消しといった重い行政処分が科される可能性があります。
行政処分歴(前歴)の有無によって処分基準は変わるため、自身の累積点数や前歴の状況を正しく把握することが重要です。
人身事故で加算される違反点数の具体的な仕組み
人身事故の違反点数は、事故の原因となった交通違反の基礎点数と、被害者の傷害の程度に応じた付加点数の合計で決まります。
例えば、安全運転義務違反(2点)が原因となり、治療期間15日未満とされる軽傷事故の場合には、付加点数2点(専ら運転者側の不注意による場合)が加算され、合計4点となるのが一般的です。
被害者の治療期間が長くなるほど付加点数は高くなる傾向があり、3か月以上の治療を要する場合や後遺障害等級が認定される場合などには、さらに高い点数が加算されます。
免許停止(免停)や免許取消しになる点数の目安
免許停止や取消しの基準は、過去3年間の行政処分の前歴回数によって異なります。
前歴がない場合、累積点数が6点から14点になると免許停止(30日以上)の対象となり、15点以上では免許取消しの対象となります。
前歴が1回ある場合は4点から免許停止、10点で免許取消しになるなど、基準はより厳しくなります。
例えば、前歴がない状態で死亡事故を起こした場合、安全運転義務違反(2点)と付加点数(20点)が加算され、合計22点となるため、免許取消しの対象となる可能性があります。
罰金はいくら?前科はつく?知っておくべき刑事処分の内容
人身事故に切り替わると、刑事事件として扱われ、刑事処分が科される可能性があります。
これは、交通事故に関する法令違反に対する刑罰であり、罰金刑や懲役刑などが含まれます。
多くの人身事故では、「自動車運転死傷行為処罰法」に定められた過失運転致傷罪が適用されます。
ただし、すべてのケースで起訴され、前科がつくわけではなく、事故の状況や示談の有無などによって処分が決定されます。
過失運転致傷罪で科される罰金の相場
過失運転致傷罪には、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。
実際の罰金額は、加害者の過失の程度、被害者の怪我の重さ、示談の成否など、様々な事情を考慮して検察官が求刑し、裁判官が決定します。
比較的軽微な人身事故では、略式手続による罰金刑となるケースが多く、罰金額は20万円から50万円程度が一つの目安とされています。
ただし、悪質な違反や結果の重大性によっては、これより高額になることもあります。
不起訴処分となり前科がつかないケースとは
人身事故を起こしても、必ず起訴されて刑事罰を受けるわけではありません。
検察官が、加害者を起訴しない不起訴処分と判断する場合があります。
不起訴となれば、刑事裁判は開かれず、罰金や前科がつくことはありません。
不起訴の判断には、被害者の怪我が極めて軽微であること、加害者の過失の程度が低いこと、そして被害者との間で示談が成立し、被害者が加害者の処罰を望んでいないことなどが大きく影響します。
実務上は、誠実な謝罪や適切な賠償対応を行い、可能であれば示談成立を目指すことが重要とされています。
慰謝料が大幅に増額?人身事故への変更で変わる民事上の損害賠償
物損事故から人身事故へ切り替わることで、民事上の損害賠償額が大きく増加する傾向があります。
物損事故では、壊れた車両の修理費や代車費用などが賠償の対象です。
しかし人身事故では、それらに加えて、被害者の身体や生命に対する損害を賠償する必要が生じます。
特に、物損事故では一般的に認められにくい慰謝料の支払いが発生することが、人身事故で賠償額が大きく増える要因の一つとなります。
人身事故で問題となる「慰謝料」の内訳
慰謝料とは、事故によって被害者が受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。
人身事故における慰謝料には、主に3つの種類があります。

1つ目は、入院や通院による精神的負担に対して支払われる入通院慰謝料です。2つ目は、事故によって後遺障害等級が認定された場合に支払われる後遺障害慰謝料です。そして3つ目は、被害者が亡くなった場合に遺族に対して支払われる死亡慰謝料です。
これらの慰謝料は、怪我の程度や入通院期間などを基に、自賠責基準や裁判実務上の基準などに沿って算定されます。
交通事故慰謝料の計算方法については、「交通事故慰謝料の計算方法を詳しく解説【入通院・障害・死亡別】」で詳しく解説しています。
治療費や休業損害など賠償しなければならない範囲の拡大
人身事故では、慰謝料以外にも賠償すべき項目が多岐にわたります。
病院での診察費、手術費、薬代などの治療費は、事故との相当因果関係が認められる範囲で賠償対象となります。
また、怪我の治療のために仕事を休まざるを得なかった場合には、その間の減収分を補填する休業損害が発生します。
さらに、後遺障害等級が認定され、労働能力の低下によって将来の収入減少が認められる場合には、逸失利益の賠償が問題となるなど、賠償範囲は物損事故より大きく広がります。
物損から人身に変更された!加害者が今すぐやるべき3つの対応
警察から人身事故への切り替え連絡を受けたら、冷静かつ迅速に対応することが非常に重要です。
初期対応の誤りが、その後の行政処分、刑事処分、そして被害者側との示談交渉にまで悪影響を及ぼす可能性があります。
パニックにならず、まずは事故当事者として必要な対応を一つずつ着実に進めていきましょう。
ここでは、最優先で取り組むべき以下の3つの対応について解説します。

【最優先】加入している任意保険会社へ速やかに連絡する
最も優先すべき行動は、自身が加入している任意保険会社への連絡です。
物損事故として既に報告済みであっても、人身事故に切り替わった旨を改めて速やかに伝えましょう。
保険会社は人身事故対応の実務経験が豊富であり、今後の手続きの流れや被害者側への対応について具体的な案内をしてくれます。
また、その後の被害者との示談交渉も基本的には保険会社が代行してくれるため、精神的な負担を大きく軽減できます。
警察からの呼び出しに応じ、実況見分に誠実に協力する
人身事故に切り替わると、警察から実況見分や事情聴取のための出頭要請があります。
この要請には必ず応じ、誠実な態度で協力してください。
実況見分や事情聴取での供述内容は、後の過失割合の判断や刑事処分の判断資料となる重要な資料です。
記憶が曖昧な点を無理に断定したり、自身に有利になるような虚偽の供述をしたりすることは絶対に避けるべきです。
正直に、記憶している事実だけを正確に伝えることが、結果として不利益を最小限に抑えることにつながります。
被害者へ誠意ある謝罪と見舞いの連絡を入れる際の注意点
被害者への誠意ある謝罪は、円滑な示談解決に向けて重要な要素となります。
しかし、連絡のタイミングや方法には注意が必要です。
まずは保険会社の担当者に、被害者へ謝罪の連絡を入れたい旨を相談しましょう。
保険会社を通じて相手の意向を確認してから行動するのが賢明です。
直接謝罪に伺う場合には、必要に応じて手土産などを持参し、真摯に謝罪の気持ちを伝えることが一般策です。
ただし、その場で賠償額など具体的な金銭の話や、過失を認める発言を安易にすることは避け、示談交渉は保険会社に任せる旨を伝えましょう。
事故から時間が経っていても変更は覆せない?加害者側の疑問に回答
事故から数日、あるいは数週間が経過した後に人身事故へ切り替えられると、「なぜ今さら」「納得できない」といった感情を抱くことも無理はありません。
事故当日は症状を訴えていなかったため、不信感を覚えるケースもありますが、交通事故では後から痛みやしびれなどの症状が現れる場合もあります。
しかし、法的な手続きとして診断書が提出された以上、加害者側の感情や都合でその流れを止めることは困難です。
ここでは、加害者側が抱きやすい疑問について解説します。
人身事故への切り替えに法的な期限は設けられているのか
道路交通法や刑事訴訟法上、物損事故から人身事故へ切り替えるための明確な法的申請期限(時効を除く制限期間)は規定されていません。
一般的には事故発生から1週間〜10日程度までに医師の診断書が提出されるケースが多いですが、むちうち症等の特性により数週間後に提出・切り替えがなされるケースも存在します。(ただし、事故から長期間が経過している場合は事故と怪我の相当因果関係の証明が難しくなるため、警察が届出の受理に慎重になる実務傾向があります)。
警察が診断書を受理した時点で、手続きが進められます。
診断書が提出された場合、加害者側から変更を拒否することは困難
警察が被害者から提出された診断書と人身届を正式に受理した時点で、警察は刑事事件として捜査を開始する法的義務を負うため、手続きが進められます。
被害者から医療機関を受診し、事故に起因する傷害である旨の医師の診断書を警察へ提出した場合、加害者側が「相手に怪我はないはずだ」と主張しても、人身事故への切り替え手続自体を加害者の一方的な意向で拒否することは実務上極めて困難です。
警察は、医師が作成した診断書を基に捜査を開始します。
診断内容に疑問点がある場合には、保険会社や弁護士へ相談することは可能ですが、人身事故への切り替え手続自体を止めることは一般的に困難です。
警察からの出頭要請を無視した場合に想定されるリスク
警察からの実況見分や事情聴取のための出頭要請を正当な理由なく無視し続けると、事態はさらに悪化します。
警察からの要請に対する正当な理由のない連続した出頭拒否は、警察や裁判所に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあると判断され、裁判官から逮捕状が発付されて逮捕(身体拘束)される恐れが高まります。
逮捕された場合には、身体拘束が続く可能性があるほか、その後の刑事手続や処分判断にも影響する可能性があります。
警察からの出頭要請には適切に応じ、誠実に対応することが重要です。
処分を軽くしたいなら弁護士への相談も有効な選択肢
人身事故への切り替えに伴う各種処分を少しでも軽くしたい、あるいは提示された過失割合に納得がいかないといった場合には、交通事故問題に精通した弁護士への相談が有効な手段となります。
保険会社は示談交渉の代行はしてくれますが、刑事処分の軽減に向けた弁護活動は行えません。
弁護士へ依頼することで、法的観点から状況を整理し、加害者側の立場を踏まえた適切な対応を進めやすくなります。
弁護士に依頼して示談交渉を適切に進めるメリット
刑事処分を判断する際、被害者との示談成立の有無は重要な考慮要素の一つとなります。
弁護士が代理人として交渉することで、被害者の感情を逆なですることなく、冷静かつ法的に適切な内容での示談成立を目指せます。
示談が成立し、被害届の取り下げや宥恕が得られれば、不起訴処分や罰金の減額につながる可能性が高まります。
このような刑事手続を見据えた対応は、弁護士へ相談することで進めやすくなる場合があります。
自身の過失割合に納得できない場合の対処法
保険会社から提示された過失割合に納得できない場合には、弁護士へ相談することで、客観的証拠に基づいた再検討を求められる可能性があります。
弁護士は、ドライブレコーダーの映像、実況見分調書、現場の状況などを専門的な観点から分析し、正当な過失割合を主張します。
その結果、過失割合が修正され、最終的な損害賠償額の負担軽減につながるケースもあります。
弁護士費用特約が利用できるか保険契約を確認しよう
弁護士への依頼をためらう理由の一つに、費用の問題があります。
自身が加入している自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、相談料や着手金、報酬金などの弁護士費用を保険で賄うことができます。
補償上限額は保険契約によって異なりますが、一般的には300万円程度まで補償されるケースが多く、範囲内であれば自己負担なく弁護士へ依頼できる場合があります。
まずは自身の保険証券を確認し、特約の有無を確かめてみましょう。
弁護士費用特約については、「交通事故における弁護士費用特約について詳しく解説」で詳しく解説しています。
物損事故から人身に変更された加害者側に関するよくある質問
物損事故から人身事故への切り替えについて、加害者側が抱きやすい具体的な疑問と回答をまとめました。
診断書が全治1週間の場合でも、人身事故として扱われますか?
一般的には、人身事故として扱われます。
怪我の程度にかかわらず、医師が作成した診断書が警察に提出されれば人身事故として処理されます。
たとえ全治1週間のような軽傷であっても、違反点数の加算や罰金といった行政処分・刑事処分の対象となる可能性があります。
被害者が警察に届け出ず、保険会社にだけ連絡してきた場合はどうすればいいですか?
まず自身の保険会社に状況を報告し、指示を仰いでください。
人身事故として自賠責保険や任意保険の対人賠償を利用するには、原則として「交通事故証明書」が必要です。
この証明書は警察への届出がないと発行されないため、保険会社を通じて被害者に警察への届出を促してもらうのが一般的です。
物損事故のまま示談してしまった後に、人身事故に切り替えたいと言われたら?
物損に関する示談が成立していても、その後に発覚した人身損害についての賠償請求が認められる可能性はあります。
物損の示談書に「今後一切の文句や請求をしない」といった清算条項(権利放棄条項)が記載されていたとしても、判例上、示談当時に当事者が予測・予見できなかった人身損害(後から発覚した怪我や後遺障害等)については清算条項の効力が及ばず、別途人身損害として賠償請求が認められるケースがあります。
こうした連絡を受けた場合には、速やかに保険会社へ報告し、対応方針を相談することが重要です。
まとめ
物損事故から人身事故への切り替えは、加害者側に行政上・刑事上・民事上の法的責任が生じる可能性を意味します。
突然の連絡に動揺するかもしれませんが、まずは落ち着いて、保険会社への報告、警察への誠実な対応、そして被害者への真摯な謝罪という基本的な行動を速やかに取ることが重要です。
処分の内容や過失割合に不安や不満がある場合は、弁護士への相談も有力な選択肢となります。自身の状況を正確に把握し、一つひとつ適切に対処していくことが、不利益を最小限に抑える鍵となります。
ネクスパート法律事務所では、初回相談は30分無料で実施しています。一人で悩まず、お気軽にお問い合わせください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。