サマリー
会社の資金繰りが限界に達し、事業継続が困難(いわゆる事業継続不能)と判断せざるを得ない局面で経営者が深刻に思い悩むのは、長年苦楽を共にしてきた従業員の行く末ではないでしょうか。
「自分の経営判断によって従業員を路頭に迷わせてしまうのではないか」「倒産を伝えた場合、どのような混乱が生じるのか」といった自責の念や不安から、夜も眠れない日々を過ごされている経営者の方も少なくないでしょう。
しかし、法人破産の局面において経営者が最後に果たすべき最大の誠意とは、感情に流されて破産申立て等の判断を先延ばしにすることではありません。法律および実務に基づいた適切な手順で従業員を送り出し、失業等給付(いわゆる失業保険)や未払賃金立替払制度などの公的救済制度を活用できる環境を整えることが、経営者としての最後の責務であり、結果としてご自身の再出発につながる重要な対応といえます。
本記事では、会社が倒産した場合に従業員がどうなるのか(解雇の扱い)、給料の支払い(未払賃金)、不当解雇と評価されるリスク、そして経営者が取るべき実務上の対応について、弁護士実務の視点から詳しく解説します。
会社が倒産したら社員はどうなる?
会社が破産手続開始決定を受けると、最終的には法人格が消滅するため、従業員は原則として解雇の対象となります。
まずは、この現実と、なぜそのような措置が取られるのかという法的根拠を整理して把握しましょう。
全員解雇は避けられない?雇用契約はどうなるのか
結論として、法人が破産手続に入ると、正社員、アルバイト、パートタイム労働者、契約社員など雇用形態を問わず、原則として全員が解雇の対象となります。
破産により最終的に法人格が消滅し、雇用契約を維持する主体が法的に失われるためです。
事業を継続すると賃料や社会保険料などの負債が増加し、債権者へ配当すべき財産が減少するおそれがあるため、債権者平等の原則の観点からも、実務上は速やかな事業停止と解雇が求められます。
なぜ即日解雇が必要になるのか
実務上は、事業停止の発表と同時に即日解雇が行われるケースが一般的とされています。
破産手続が開始されると、裁判所により選任された破産管財人が、会社の財産を換価(現金化)し、債権者に公平に配当する任務を負います。事業を不必要に継続することは債権者の利益を害する財産の散逸と評価されるおそれがあるため、破産管財人は速やかな支出削減を図ります。そのため、雇用契約は速やかに解消されるのが通常です。
破産しても解雇できない例外はあるか
原則として従来の雇用契約を維持できるケースはありませんが、破産手続上の残務処理のために、例外的に一時的な再雇用や業務委託が行われるケースが稀にあります。
例えば、破産手続に伴う残務整理(経理データの整理、在庫の棚卸し、売掛金回収の確認など)のために、特定の従業員に短期間のみ従事してもらう場合がこれに当たります。
ただし、これはあくまで破産管財人の業務を補助するための例外的な措置であり、経営者の独断で判断するのではなく、申立代理人弁護士や破産管財人の指揮・指示のもとで、期間や労働条件・賃金を明確にした新たな契約とする必要があります。
倒産に伴う解雇は不当解雇に当たる?整整理解雇との違いと経営者が知るべき法的解釈
「突然解雇を告げた場合、労働組合や従業員から不当解雇として訴えられるのではないか」「労働審判や解雇無効を争われるのではないか」といった不安は、破産を検討する経営者にとって大きな懸念事項の一つでしょう。
しかし、会社の消滅を前提とする解雇は、通常の解雇とは法的評価が大きく異なります。
会社倒産による解雇はやむを得ない事情として認められる
結論として、会社の倒産(事業廃止)に伴う解雇は、実務上および裁判例の傾向として客観的に合理的な理由があるものと評価され、不当解雇には当たらないと判断されるケースが多いとされています(ただし、個別事情により判断が異なる可能性はあります)。
労働契約法16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効(解雇権濫用の法理)と定められています。しかし、会社自体が消滅し、雇用関係を存続させる事業基盤そのものが失われる場合には、雇用の維持は極めて困難であると評価されます。したがって、事業停止に伴う全員一斉解雇は、客観的合理性・社会通念上の相当性が認められやすく、いわゆる整理解雇の4要件(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性)との関係でも、これを充足すると判断される可能性が高いと考えられます。
解雇権の濫用を疑われないためのポイント
不当解雇(解雇権濫用)と評価されるリスクを回避するためには、手続の公平性・透明性を確保することが重要です。
通常の経営不振や経営悪化による人員削減(いわゆるリストラ)では、解雇回避努力(役員報酬の削減や希望退職の募集など)が厳しく問われますが、破産の場合には人員削減の必要性自体は明白と評価されやすい状況にあります。
ただし、特定の従業員のみを恣意的に選定するような対応は、被解雇者選定の合理性を欠くとしてトラブルの原因となり得ます。そのため、弁護士の助言のもとで全員一斉解雇とするなど、手続の相当性と公平性を確保することが実務上の安全策といえます。
裁判リスクを最小限にするための納得感のある説明
たとえ法的に正当と評価され得る場合であっても、従業員が「不意打ちで解雇された」と受け止めれば、感情的対立から労働審判や訴訟といった紛争に発展する可能性があります。
紛争リスクを低減するためには、説明会等で倒産に至った経緯を誠実に説明するとともに、未払賃金立替払制度や雇用保険(失業等給付)の手続について適切に案内・準備を行うことが重要です。
経営者が誠実に対応し、弁護士を窓口として法的根拠に基づく説明を行うことで、従業員の理解を得やすくなり、結果として紛争予防や訴訟リスクの低減につながると考えられます。
【重要】会社の倒産はいつ社員に伝えるべきか?解雇通知の最適なタイミングと注意点
従業員への公表タイミング(いわゆるXデー)の設定は、破産申立てやその後の手続進行が円滑に進むか、あるいは現場の混乱を招くかを左右する重要な戦略的判断となります。
なぜ事業停止の当日の公表が実務上の鉄則なのか
結論として、従業員への公表と解雇通知は、弁護士と事前に協議して設定した事業停止日(Xデー)の当日に一斉に行う方法が、実務上は適切とされるケースが多いです。
これにより、情報の断片化や誤伝達を防ぎ、全従業員に対して公平かつ同時に、法的根拠に基づいた説明(手続的公正)を行いやすくなります。
早すぎる公表が招く情報の漏洩と現場の混乱
事前に一部の従業員にのみ倒産を伝える対応は、原則として避けることが望ましいとされています。
情報が不正確な形で広がると、現場に混乱が生じるだけでなく、噂を聞きつけた債権者による督促や事実上の回収行動(備品や商品への接触など)が発生するおそれがあります。
このような財産の散逸が生じると、破産手続の進行に支障をきたすおそれがあり、場合によっては経営者の財産管理に関する注意義務(善管注意義務等)との関係で問題となる可能性もあります。
弁護士と決めるXデー|公表から申立てまでのスケジュール
倒産の公表のタイミングは、破産申立予定日から逆算し、弁護士と協議のうえ戦略的に決定することが一般的です。
具体的に、以下のような事項を総合的に考慮して判断することが多いです。
- 売掛金の入金サイクル
- 在庫の棚卸し状況
- 店舗やオフィスの明渡し期限
- 従業員が次のステップ(雇用保険の失業等給付の受給など)に円滑に移行できる時期
経営者の独断で判断するのではなく、法的リスクへの備えを整えたうえで、弁護士同席のもとで一斉に発表する方法が、結果として紛争リスクの低減や円滑な再出発につながると考えられます。
未払いの給料や退職金は支払われる?破産手続における優先順位と労働債権の扱い
従業員が最も不安に感じる点の一つは、やはり金銭面でしょう。
「働いた分の賃金は支払いたい」という要請に対応するため、法制度上は労働債権(賃金・退職金等)について、銀行借入や取引先への支払いといった一般債権よりも優先して弁済される仕組みが設けられています。
給料は銀行や取引先への支払いよりも優先される
破産手続において、従業員の賃金や退職金は労働債権として、一般の買掛金や金融機関からの借入金などの一般破産債権よりも優先的に扱われます。
これは、賃金が労働者およびその家族の生活を支える重要な原資であることから、法的に特に手厚い保護が与えられているためです。
直近3ヶ月分が最優先(財団債権)になる理由
賃金のうち、破産手続開始前の直近3か月分は財団債権とされ、破産手続の中でも最も高い優先順位に位置付けられます。
財団債権は、配当手続を待つことなく、破産管財人により管理される財産から随時弁済される性質を有しており、他の債権に先立って支払われます。したがって、会社に一定の現預金が残存している場合には、この範囲の賃金は支払われる可能性が相対的に高いといえます。
退職金や解雇予告手当の支払いの見通し
直近3か月分を超える未払賃金や退職金の一部、さらに即日解雇に伴う解雇予告手当は、財団債権に次いで優先される優先的破産債権として取り扱われます。
優先的破産債権は、財団債権の弁済後に一般の取引先への債権より優先して配当されますが、会社の資産状況によっては十分な配当が行われない、あるいは無配となる可能性もあります。

注意すべき点として、経営者が特定の従業員に対して個別に現金を支払う行為があります。これは偏頗弁済と評価され、破産管財人により否認(取り消し)の対象となり、返還を求められる可能性があります。
また、経営者個人の責任追及(損害賠償責任や、場合によっては個人破産手続における免責判断への影響)につながるおそれもあるため、独断で行うことは避ける必要があります。
関連記事:偏頗弁済(へんぱべんさい)とは?用語の意味をわかりやすく解説
手元資金がなくても対応可能?未払賃金立替払制度の仕組みと従業員保護
従業員の賃金すら支払えないほど資金繰りが逼迫している(支払不能に近い)状況であっても、一定の公的支援制度が用意されています。会社に代わって国が賃金の一部を立て替える未払賃金立替払制度という公的なセーフティネットが存在します。
国が給料の8割を立て替えてくれる制度の仕組み
会社に資金がなく労働債権の支払いが困難な場合でも、未払賃金立替払制度を利用することで、国の制度として(独立行政法人労働者健康安全機構を通じて)、未払賃金や退職金の一定範囲について原則80%が立替払いされます(※要件あり)。
これは、倒産により収入が途絶えた労働者を救済するための公的制度であり、経営者側に十分な現金が残っていない場合でも、従業員の当面の生活を支える手段となり得ます。
立替払いが受けられる条件と上限額
未払賃金立替払制度を利用するためには、原則として事業主が1年以上事業活動を行っていたことや、裁判所による破産手続開始決定等を受けていること(または労働基準監督署長による事実上の倒産の認定を受けていること)などの法的要件を満たす必要があります。
対象となる金額は、未払の定期賃金(残業代を含む)および退職金の合計額のうち、原則80%です。対象となる金額には退職時の年齢区分に応じて上限額が設定されており、88万円(30歳未満)から最大296万円(45歳以上)まで(※年齢区分ごとに上限あり)となります。
なお、賞与(ボーナス)、解雇予告手当、ならびに総額2万円未満の未払分は原則として対象外です。
経営者が準備すべき賃金台帳などの必要書類
未払賃金立替払制度を従業員が円滑に利用できるかどうかは、経営者側で整備された資料の正確性・保存状況に大きく左右されます。
正確な賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、退職金規程などが整備されていれば、破産管財人による未払額の証明手続が円滑に進み、結果として従業員が早期に給付を受けられる可能性が高まります。一方で、資料が散逸していたり記録が不正確であったりする場合には、未払額の証明に支障が生じ、制度利用が困難になる可能性があります。
このように、資料の適切な整理・保全は、経営者が最後に果たすべき重要な対応の一つといえます。
倒産時に必要な失業保険・社会保険の手続き|離職票や切り替えのポイント
解雇された従業員が早期に再就職活動へ移行し、生活の安定を図るためには、行政手続の迅速な対応が重要となります。
会社都合での退職と失業保険(雇用保険)のメリット
倒産に伴う解雇は、ハローワークにおいて会社都合退職(特定受給資格者)として取り扱われるのが一般的です。
自己都合退職とは異なり、原則として給付制限期間が設けられず、7日間の待機期間経過後に失業等給付の受給が開始されます(※制度改正により給付制限期間はケースにより異なるため、最新情報の確認が必要です)。
この取扱いは従業員にとって有利に働くことが多く、適切な離職理由(倒産・解雇)として離職票に正確に記載されることが重要です。
離職票の発行を急ぐべき理由
失業等給付の受給開始は、従業員がハローワークで求職申込みを行い、離職票を提出した日を基準として進行します。
会社は、従業員の退職後速やかに(原則として10日以内に)雇用保険関係書類をハローワークへ提出する必要がありますが、倒産時には総務・経理担当者も退職していることが多く、実務が滞るケースも見受けられます。
弁護士と連携のうえ、離職票の発行・発送予定時期を説明会で共有しておくことが、従業員の不安軽減につながります。
健康保険・厚生年金の切り替えと住民税の手続き
解雇に伴い、健康保険・厚生年金保険の資格は喪失するため、従業員は国民健康保険や国民年金への切替手続を行う必要があります。
会社は、速やかに健康保険・厚生年金保険の資格喪失届を年金事務所へ提出する必要があります。
また、住民税についても、給与天引き(特別徴収)から本人納付(普通徴収)へ切り替わる点を説明会で周知し、市区町村から送付される納付書により支払う必要があることを案内しておくことが望まれます。
倒産時の従業員説明会で伝えるべきこと|解雇通知と実務対応のポイント
倒産を公表する従業員説明会は、経営者にとって大きな負担となる場面ですが、この場で誠実かつ冷静に対応できるかどうかが、その後の混乱や紛争の発生に大きく影響します。
弁護士を同席させるべき3つのメリット
経営者が単独で説明を行うことは、実務上リスクが伴うため、専門の弁護士を同席させることが望ましいとされています。
弁護士を同席させる具体的なメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 感情的対立の緩和・収束:専門家である第三者の弁護士が法的な手続きや事実関係を客観的に説明することで、会場内の過度な混乱や経営者への感情的な対立・紛糾を抑制する効果が期待できます。
- 法的誤解やトラブルの防止:破産法、労働法、未払賃金立替払制度などの専門的な質問に対しても、弁護士がその場で法的な見解や手続きの流れを正確に回答・説明できます。
- 実現不可能な口約束の回避:従業員からの強い糾弾や要望を受けた際に、経営者個人の資産で未払給料を補填・全額返済するなど、実現困難または破産法上不適切な約束(偏頗弁済等)をしてしまうリスク防ぐことができます。
社員に伝えるべき5つの項目
説明会では、謝罪にとどまらず、以下のような実務的かつ具体的な情報を網羅的に伝えることが重要です。
- 倒産に至った経緯:経営改善に努めたものの、資金繰りが限界に達し、事業継続が困難となった事実関係。
- 全員解雇の通知:当日付での解雇の告知と、解雇通知書の交付。
- 金銭面の見通し:賃金・退職金の支払見込み、および未払賃金立替払制度の具体的な案内。
- 行政手続の案内:離職票の発行スケジュール、雇用保険(失業等給付)や社会保険の切替手続。
- 私物の整理と備品返却:当日中の私物持ち帰りと、健康保険証や社用PC等の返却方法。
質疑応答:想定される質問への向き合い方
「なぜもっと早く知らせなかったのか」「来月の住宅ローンが支払えない」といった切実な質問に対しても、可能な範囲で誠実に対応する姿勢が求められます。
弁護士と事前に打ち合わせし、冷静かつ真摯に事実関係を説明することが重要です。
経営者自身の経済的状況(私財の状況など)について率直に説明することで、一定の理解が得られる場合もありますが、受け止め方は個々の従業員によって異なる点には留意が必要です。
社長個人が訴えられる?倒産時の損害賠償リスクと代表者責任を避ける方法
「会社が倒産・廃業した後、社員から社長個人に損害賠償を請求されることはあるのか?」という不安に対し、会社と代表者の法的責任の範囲(代表者責任)を実務上の考え方に沿って明確にします。
法人と個人は別物(法人格の独立・有限責任)が原則|ただし例外あり
原則として、会社と代表者は別人格であるため(法人格の独立・有限責任の原則)、会社の負債や未払賃金を社長個人が肩代わりして支払う法的義務はありません。
もっとも、経営者に悪意または重大な過失があると評価される場合には、会社法第429条(取締役等の第三者に対する損害賠償責任)に基づき、任務懈怠責任として、経営者個人が従業員などの第三者に対して損害賠償責任を負うと判断される可能性があります。
社長個人の責任(任務懈怠責任・善管注意義務違反)が問われやすいNG行動
以下のような行動は、経営者としての善管注意義務違反(任務懈怠)に該当すると評価される傾向があり、第三者責任が問題となる可能性があります。
- 悪質な賃金不払い:支払不能であることを認識しながらその事実を隠し、従業員に就労を継続させたにもかかわらず賃金(労働債権)を支払わなかった場合
- 不適切な資産流用:会社財産を私的に流用したり、親族等に不当な利益供与を行ったりすることで、労働債権の弁済原資を減少させるなど、債権者を害する財産減少行為を行った場合
- 計画倒産が疑われる行為:債権者を害する目的で資産を隠匿する(詐害行為)や、特定の債権者のみに優先弁済を行う(偏頗弁済)などの行為があった場合
破産手続中の資産隠し・偏頗弁済と否認リスク
お世話になった特定の社員にだけ、こっそり給料を支払う行為は、一見すると配慮のある対応に見えますが、法的には偏頗弁済と評価される可能性が高く、破産法上問題となる行為に該当し得ます。
このような独断的な対応は、破産管財人による否認権行使を招く要因となり得て、結果として経営者個人の責任追及につながるリスクを高めます。
実務上は、すべての対応を弁護士等の専門家の助言のもとで、透明性を確保しながら進めることが、経営者自身の法的リスクを適切に抑えるための有効な対応といえます。
弁護士に依頼するメリット|倒産・破産手続で経営者の再出発を支えるパートナー
業績悪化に苦しむ事業主にとって、弁護士費用の負担に躊躇を感じることは少なくありません。しかし、従業員対応や法的手続が複雑に絡む破産手続において、弁護士は単なる事務代行にとどまらず、経営者の法的リスクや精神的負担の軽減を支える重要な専門家といえます。
ここでは、倒産・破産手続を弁護士に依頼する具体的なメリットとして、以下の3つを詳しく紹介します。

借金の督促を止める方法|受任通知による督促停止の仕組み
弁護士に依頼する大きなメリットの一つは、受任通知を債権者に送付することで、貸金業者等からの督促が原則として停止される点にあります(貸金業法第21条等の規制に基づく実務運用)。
催促の電話や訪問対応の負担が軽減されることで、経営者は精神的な余裕を取り戻し、従業員対応や必要な手続に集中しやすくなるとされています。
複雑な書類作成や交渉を専門家に任せられる安心感
離職票の発行手続のサポート、未払賃金立替払制度の利用に関する証明支援、破産管財人との調整など、専門的な実務について弁護士が包括的にバックアップします。
特に、従業員とのトラブルを未然に防ぐための説明方法のアドバイスや説明会への同席は、経営者の精神的負担の軽減につながると考えられます。
独力で倒産対応を進めようとして心身に大きな負担がかかるケースもある中で、専門家の関与は再起に向けた重要な支えとなり得ます。
経営者自身の自己破産と免責許可決定(借金の帳消し)
中小企業の多くでは、経営者自身が会社の銀行融資や取引先債務について個人で連帯保証人(保証人)となっており、法人倒産に伴い個人としても多額の連帯保証債務を背負うケースが一般的です。
弁護士は法人の破産手続だけでなく、代表者個人の自己破産手続も同時に進め、裁判所から経済的再生のための免責許可決定(保証債務の支払い義務の免除)が得られるよう、法律面・手続面から総合的に支援します。
免責許可の判断は裁判所により個別の事情や免責不許可事由の有無を審査したうえでなされますが、専門家の指導のもとで適切な手続を行えば、法律上の経済的再スタート(免責)を図ることが十分に可能となります。弁護士の関与のもとで倒産手続を適正かつ公正に進めることで、経営者自身の人生やご家族の生活の再出発に向けた現実的な選択肢を確保しやすくなるといえます。
まとめ|社員への責任を果たすための適切な破産手続(法的整理)
「会社を潰すのは経営者として失格ではないか」「社員を裏切る行為ではないか」といった自責の念を抱くことは、誠実に経営に向き合ってきた結果ともいえます。しかし、本稿で説明してきたとおり、破産とは、破綻した経済関係を法的に清算し、債務者および関係者の再出発を図るための制度です。
経営者が最終局面で検討すべき責任のあり方は、無理に事業を延命させて負債を拡大し、賃金未払いを長期化させることではないと一般に考えられています。適切なタイミングで専門家に相談し、法に基づいた手続(法的整理)を通じて、従業員が次のステップへ進みやすい環境を整えることが、実務上は重要とされています。
従業員にとっても、状況を曖昧にするのではなく、現実を踏まえた適切な手続と今後の見通しが示されることは重要です。一人で抱え込まず、まずは弁護士などの専門家に相談することが重要です。こうした一歩が、経営者自身と従業員双方の将来に向けた現実的な解決につながる可能性があります。
ネクスパート法律事務所は、初回相談は30分無料です。費用を心配することなく相談できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。