解決結果のサマリー
※プライバシー保護のため、事例の内容は特定できないよう一部変更し、金額は概数で記載しています。
※解決結果は個別の事案の内容に基づくものであり、同種の結果を保証するものではありません。
事例の概要
ご依頼者のAさんは、30代の家庭のある女性です。仕事を通じて知り合った既婚男性BさんとSNSで連絡を取り合い、互いに「好き」「会いたい」などのメッセージを送っていたところ、Bさんの妻Cさんの代理人弁護士から、このやり取りが婚姻関係を侵害する不法行為にあたるとして慰謝料100万円を求める通知が届きました。通知に肉体関係の主張はなく、メッセージのやり取りが原因でBさんがCさんに離婚を申し入れた、という構成でした。当事務所は受任後、Bさんの離婚の申し入れは本件が原因ではないこと、既に連絡をやめていることを示し、解決金として30万円を提示。相手方は50万円を示しましたが、当事務所は30万円を据え置くとともに、相手方の合意書案にあった「不貞行為」の文言の削除を求めました。相手方本人の心情が代理人を通じて伝えられる場面もありましたが、最終的に相手方は30万円・求償権放棄の合意書案を送付し、清算条項からも「不貞行為」の文言が外れた形で締結に至りました。担当は北條さやか弁護士です。
請求100万円に対し、合意額は30万円(70%減)。支払いは一括で、受任から締結まで数か月。手続はすべて代理人間の書面のやり取りで進み、訴訟にはなっていません。
ご相談時の課題
表面上の課題
- 相手方に弁護士が付き、100万円の請求が届いた
- 請求の理由は、SNSでのメッセージのやり取りだった
- 相手方は、このやり取りが原因で夫が離婚を申し入れたと主張していた
- 家庭があり、内密に進めたかった
本当の課題は3つ
- メッセージのやり取りは不法行為になるのか——肉体関係がなくても、婚姻共同生活の平和を侵害したとして損害賠償が問題になることはあります。ただし、その水準は不貞行為の事案とは異なります。本件がどこに位置するかを整理する必要がありました
- 離婚の申し入れとの因果関係——相手方は、メッセージのやり取りが原因で夫が離婚を申し入れたと主張していました。Aさんは、Bさんから本件とは関係なく離婚を考えていると聞いており、この因果関係を否定する必要がありました
- 合意書に何を書くか——肉体関係がない事案で、合意書に「不貞行為」と書かれれば、事実と異なる記録が残ります。金額だけでなく、合意書の文言も交渉の対象でした
Aさんはご相談時に「してしまったことは許されることでなく、深く反省しております」「きちんとお詫びし、奥様を傷つけてしまったことに対し、慰謝料をお支払いしたいと思っております」「請求金額は妥当なのかも精査していただけたらと思います」と話されていました。
弁護士の対応
(1) 因果関係を否定し、30万円を提示する
受任後、当事務所は、Bさんの離婚の申し入れは本件が原因ではないこと、Aさんは既にBさんとの連絡をやめていることを書面で示し、解決金として30万円を提示しました。肉体関係の主張がない事案であることを踏まえた水準です。
(2) 相手方の50万円に対し、金額を据え置き「不貞行為」の削除を求める
相手方は、離婚を申し入れた事実はないと反論し、50万円での解決を提案するとともに合意書案を送付してきました。当事務所は、Aさんが把握していた事情を示して因果関係の否定を維持し、30万円が妥当である旨を回答。あわせて、合意書案の清算条項に「本件不貞行為に関する」とあった点について、不貞行為を認めた事実はないとして文言の削除を求めました。
(3) 相手方本人の心情が伝えられる
その後、相手方代理人を通じて、相手方本人の心情を記したメッセージが伝えられました。当事務所は、これに書面で応酬することはせず、金額と条項についての当方の立場を維持しました。感情的なやり取りに書面で応じることは、交渉を長引かせるおそれがあるためです。
(4) 30万円・「不貞行為」削除の合意書案で締結
相手方は、30万円の合意書案を改めて送付してきました。対象は「『好き』『会いたい』などのメッセージのやり取り」と定義され、清算条項からも「不貞行為」の文言が削除されています。合意書には、謝罪、Bさんとの連絡をやめたことの表明と今後の面談・連絡の禁止、求償権の放棄、清算条項が置かれ、当事務所は条項の意味をAさんに説明したうえで応諾。双方が記名押印して締結し、Aさんは期限内に一括で振り込みました。
ご依頼中のやりとり——Aさんはどうサービスを使ったか
- 相手方代理人からの連絡を受けた後、LINEで相談し、依頼
- 受任後、相手方からの連絡はすべて事務所へ
- Bさんから聞いていた事情と、連絡をやめている事実を共有し、主張の土台に
- 合意書の文言(「不貞行為」の削除)の意味について説明を受けて確認
解決結果
ご依頼前、Aさんは肉体関係のないやり取りを理由とする100万円の請求を前に、支払う意思はあるものの、金額の妥当性と今後の見通しが分からない状態でした。
解決時には、金額は100万円から30万円へ。当方の提示額を据え置いたまま合意に至りました。合意書は、対象を「『好き』『会いたい』などのメッセージのやり取り」と定義し、相手方の当初案にあった「不貞行為」の文言は清算条項からも削除されています。合意書には、謝罪、慰謝料の一括払い、Bさんとの連絡をやめたことの表明と今後の面談・連絡の禁止、求償権の放棄、清算条項が置かれ、Aさんは期限内に振り込んで終結しました。相手方本人とAさんが直接やり取りする場面はありませんでした。
担当弁護士からのコメント(北條さやか弁護士)
肉体関係がなくても、メッセージのやり取りを理由に慰謝料を請求されるご相談があります。婚姻共同生活の平和を侵害したとして損害賠償が問題になることはありますが、その水準は不貞行為の事案とは異なります。本件では、離婚の申し入れとの因果関係を否定して金額を据え置き、合意書の対象をメッセージのやり取りに限定して「不貞行為」の文言を外しました。金額だけでなく、合意書に何が書かれるかも、ご依頼者の今後に関わります。文言まで確認してから締結してください。
この事例に関するよくある質問
Q1. 肉体関係はありません。メッセージのやり取りだけで慰謝料を払うのですか?
肉体関係がなくても、やり取りの内容によっては、婚姻共同生活の平和を侵害したとして損害賠償が問題になることがあります。ただし、その水準は不貞行為の事案とは異なります。本事例では、100万円の請求が30万円での合意となりました。結果は事案によって異なります。
Q2. 相手は「あなたのせいで夫が離婚を申し入れた」と言っています。
離婚の申し入れとメッセージのやり取りの因果関係は、争点になります。本事例では、依頼者が不倫相手から聞いていた事情を示して因果関係を否定し、金額を据え置いて交渉しました。事情の裏付けをどう示すかは、代理人と相談することをお勧めします。
Q3. 合意書に「不貞行為」と書かれるのは避けられますか?
合意書で確認する事実の範囲は、交渉の対象です。本事例では、不貞行為を認めた事実はないとして文言の削除を求め、合意書の対象は「メッセージのやり取り」と定義され、清算条項からも「不貞行為」の文言が外れました。
Q4. 相手方本人の感情的なメッセージが弁護士経由で届きました。返事をすべきですか?
書面で応酬すると、交渉が長引くおそれがあります。本事例では、相手方本人の心情が代理人を通じて伝えられた際、当事務所は金額と条項についての立場を維持し、書面で応酬しませんでした。対応は代理人に任せることをお勧めします。