更新日:2021年7月16日 (金)
公開日:2021年7月16日 (金)
不動産相続の手続きと流れ|分割方法・税金・登記を解説
サマリー
被相続人の自宅や土地などの不動産を相続する際、名義変更の手続きや遺産の分け方、相続税の申告など、何から手をつければよいか分からず戸惑う方も多いのではないでしょうか。
不動産は現金と異なり単純に切り分けることが難しいため、分割方法の選択や税金の計算、名義変更(相続登記)の進め方を事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、不動産相続の全体的な流れをはじめ、分割の選択肢や各種税金の基本、注意すべきトラブルへの対策について解説します。
不動産相続手続きの全体的な流れと進め方

遺産に不動産が含まれている場合、遺産分割の話し合いから名義変更、税金の申告に至るまで、順を追って手続きを進める必要があります。
1. 相続人の確定と遺言書の確認
最初に行うのが、法律上の相続人を確定させる作業です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、配偶者や子、直系尊属、兄弟姉妹などの関係を確認します。
前妻との間の子や養子の存在など、把握していなかった相続人が見つかる場合もあるため、戸籍による確認が重要となります。
あわせて遺言書の有無も確認します。公正証書遺言であれば公証役場で照会が可能です。
自筆証書遺言が手元で見つかった場合は、法務局の保管制度を利用している場合を除き、開封せずに家庭裁判所での検認手続きを行う必要があります。
2. 不動産を含む相続財産の調査
次に、被相続人が遺した財産の全体像を把握します。自宅や賃貸物件などの不動産は、毎年届く固定資産税の納税通知書を手がかりに特定できます。
山林や非課税地など納税通知書に記載されない不動産がある可能性がある場合は、市区町村で「名寄帳」を取得して調査を進めます。
不動産の取得に伴う借入金など、マイナスの財産(負債)の有無も確認し、債務超過が疑われる場合は相続放棄や限定承認の検討も視野に入れます。
3. 遺産分割協議の実施と合意内容の書面化
遺言書がない場合や遺言書に記載のない財産がある場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。
協議が成立した後は、合意内容を明確にするために遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名および実印での押印を行います。
4. 法務局での所有権移転登記(名義変更)
遺産分割によって不動産を取得する人が決まったら、管轄の法務局で所有権移転登記(相続登記)を申請します。
登記申請には、被相続人および相続人全員の戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書、印鑑登録証明書などの書類が必要です。
登記を行わずに放置すると、他の相続人の債権者によって持分を差し押さえられるなど、権利関係のトラブルに巻き込まれるリスクが生じます。
5. 相続税の申告・納付
遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告および納付が必要となります。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。
もし期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は、いったん法定相続分で取得したと仮定して申告書を作成し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出する手続きをとることが一般的です。
不動産を分ける4つの遺産分割方法
不動産は現金のように物理的に切り分けて分けることが難しいため、遺産の分け方をめぐって検討すべき事項が多くなります。
遺産の構成や各相続人の希望を踏まえ、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法から適した形を選択していくことになります。
現物分割:不動産をそのまま特定の相続人が引き継ぐ
現物分割は、1つの不動産を特定の相続人が単独で取得する方法です。権利関係が複雑にならず、手続きとしても分かりやすい形式といえます。
不動産のほかに預貯金などの遺産が十分にある場合は、不動産を取得しない相続人に対しても同等の価値の財産を分配できるため、円滑に合意しやすい傾向があります。
代償分割:不動産を取得した人が他の相続人に金銭を支払う
代償分割は、特定の相続人が不動産を単独で引き継ぐ代わりに、他の相続人に対して相続分に応じた金銭(代償金)を支払って調整する方法です。
遺産の大半を自宅不動産が占めており、現物分割では他の相続人との配分に大きな不均衡が生じるケースなどで広く活用されます。
ただし、不動産を取得する側に代償金を支払うだけの資金力が必要となります。
換価分割:不動産を売却して現金で分配する
換価分割は、相続した不動産を第三者に売却し、諸経費などを差し引いた売却代金を相続人間で分配する方法です。
相続人全員の合意に基づいて進められます。
現金を公平に分け合えるため公平感を保ちやすい利点がある一方、被相続人の自宅などを手放すことになります。
また、売却によって利益が生じた場合には譲渡所得税が課される点にも留意が必要です。
共有分割:複数人で持分を定めて共有名義にする
共有分割は、1つの不動産について各相続人が法定相続分などの割合に応じて共有持分権を取得する方法です。
現物分割や代償分割での合意が難しい場合の選択肢となることがあります。
共有不動産を売却や賃貸などの形で活用・処分する際は共有者全員の合意が求められるため、将来的に意見が対立したり、次の世代への相続によって権利関係が細分化・複雑化したりするリスクを伴います。
| 分割方法 | 概要 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 特定の相続人が不動産をそのまま取得する | 不動産以外の遺産が少ないと不公平になりやすい |
| 代償分割 | 不動産を取得した人が他の相続人に代償金を支払う | 不動産取得者に代償金を支払う資金力が必要 |
| 換価分割 | 不動産を売却して代金を各相続人で分配する | 不動産を手放す必要があり譲渡所得税が課される場合がある |
| 共有分割 | 各相続人が持分を決めて共有名義にする | 売却などの処分に全員の合意が必要で将来トラブル化しやすい |
不動産相続にかかる税金と評価方法の基礎知識
不動産を相続する際には、相続税や名義変更に伴う登録免許税などの税金が発生することがあります。
まずは課税の基準となる基礎控除額や、不動産の評価方法を押さえておくことが大切です。
相続税の基礎控除額と課税対象の判定
相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額に対して課税されます。
遺産総額が基礎控除額以下である場合は、原則として相続税の申告や納税は不要です。
基礎控除額は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で算出されます。法定相続人の数が多いほど控除額は大きくなります。
相続不動産の評価方法
相続税を計算する際、不動産の価格は実際の売買価格ではなく、国税庁が定める基準等に基づいて評価額を算出します。
土地と建物では評価方法が異なります。
| 対象 | 評価方法 | 概要 |
|---|---|---|
| 土地(市街地など) | 路線価方式 | 道路ごとに設定された路線価に土地面積を乗じて計算(形状に応じた補正あり) |
| 土地(郊外など) | 倍率方式 | 固定資産税評価額に地域ごとの一定倍率を乗じて計算 |
| 建物(家屋) | 固定資産税評価額 | 市町村から通知される固定資産税評価額をそのまま使用(評価倍率1.0倍) |
| マンション(区分所有) | 敷地権+建物 | 敷地全体の評価額に敷地権割合を乗じた額と、専有部分の建物の評価額を合算 |
名義変更時にかかる登録免許税
不動産の所有権移転登記(相続登記)を行う際には、法務局へ登録免許税を納める必要があります。
税額は、市区町村が発行する固定資産評価証明書に記載された固定資産税評価額を基準に算出します。
相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税率は「固定資産税評価額 × 0.4%」です。
不動産の評価額が高額になるほど税額も増加するため、あらかじめ納税額を見積もっておくと手続きがスムーズです。
税負担を軽減できる可能性がある主な特例制度
一定の要件を満たす場合、特例制度を活用することで相続税や譲渡時の税負担を軽減できる場合があります。
代表的な制度として以下のようなものが挙げられます。
- 小規模宅地等の特例:被相続人の居住用や事業用などに使われていた土地について、限度面積まで評価額を最大80%(貸付事業用は50%)減額できる制度
- 配偶者の税額軽減(配偶者控除):配偶者が取得した遺産の額が1億6,000万円、または法定相続分相当額のいずれか多い額まで相続税が課されない制度
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例:相続税の申告期限から3年以内に相続不動産を売却した場合、納付した相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得税を軽減できる制度
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除:一定要件を満たす空き家やその敷地を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度
これらの特例を適用するためには、原則として期限内に相続税や所得税の確定申告を行う必要があります。
要件や適用可否の判断は事案によって異なるため、慎重な確認が求められます。
不動産の相続で注意したいトラブルと事前対策
不動産の相続では、権利関係や物件の状態によって思わぬトラブルに発展することがあります。
後々の紛争や手続きの停滞を防ぐためには、あらかじめ注意すべきポイントを把握し、適切な対策を講じておくことが重要です。
未登記建物や増築部分がある場合の確認事項
被相続人の自宅敷地内にある車庫や倉庫、過去に増築した建物の一部などが未登記のまま残されているケースがあります。
登記簿と現況が一致していない場合、将来的な売却や建て替えの際に手続きが円滑に進まなくなるおそれがあります。
このような未登記建物がある場合は、遺産分割協議において承継者を明確に取り決めた上で、建物の表題登記や所有権保存登記の手続きを進めることが望ましい対応といえます。
抵当権などの担保が設定されている場合の債務確認
住宅ローンの場合は団体信用生命保険により完済されるケースも多いですが、賃貸物件や事業用不動産では、購入資金や建築資金の借入のために抵当権が設定されていることがあります。
担保が付いた不動産をそのまま相続する場合、付随する借入金の返済義務もあわせて引き継ぐことになります。
負債が残っている可能性がある不動産を相続する際は、事前に抵当権者である金融機関などに問い合わせを行い、借入残高や返済状況を正確に把握した上で遺産分割の方向性を判断することが大切です。
遺言書の作成形式と遺留分への配慮
不動産を特定の相続人に承継させたい場合は遺言書の作成が有効ですが、内容によっては他の相続人の「遺留分」を侵害してしまうことがあります。
遺留分を侵害された相続人から金銭の支払いを求められ、不動産を取得した相続人が支払資金を工面できずに紛争化する事例も見られます。
遺言書を作成する際は、遺留分に配慮した資産配分を検討するとともに、遺言の形式ごとの特徴を理解しておくことが重要です。
| 遺言の形式 | 主な特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 費用をかけずに自身で作成可能。
法務局の保管制度を利用しない場合は家庭裁判所の検認が必要。 |
形式の不備により無効となるリスクや、紛失・改ざんの懸念がある。 |
| 公正証書遺言 | 公証人が関与して作成し、原本が公証役場に保管されるため有効性に疑義が生じにくい。 | 作成にあたり公証人手数料などの費用や必要書類の準備が必要。 |
不動産相続の手続きで迷った場合の相談先

不動産の相続手続きは、名義変更を行う登記手続きや相続税の申告、相続人間の遺産分割協議など、対応すべき内容が多岐にわたります。
手続きを進める中で判断に迷う点やトラブルが生じた場合は、状況に応じて適切な専門家に相談することを検討するとよいでしょう。
各士業の主な役割と相談できる内容
不動産相続に関わる主な相談先には、弁護士、司法書士、税理士などが挙げられます。
それぞれ取り扱う業務領域が異なるため、自身が抱える課題に合わせて相談先を選択することが一般的です。
| 相談先 | 主な対応業務 | 相談が適している主な場面 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割協議の交渉代理、調停・審判手続き、遺留分侵害への対応、権利関係の調整 | 相続人間で意見が対立している場合や、法的な紛争に発展する恐れがある場合 |
| 司法書士 | 不動産の所有権移転登記(相続登記)の申請代行、必要書類の収集・作成 | 遺産の分け方が合意できており、法務局での名義変更手続きを円滑に進めたい場合 |
| 税理士 | 相続税の試算、不動産の評価額計算、相続税申告書の作成・提出代行 | 遺産総額が基礎控除を超えており、相続税の申告や各種特例の適用を検討したい場合 |
遺産分割の対立や複雑な権利関係における弁護士への相談
不動産は現金のように均等に分けることが難しいため、評価方法や取得希望者を巡って相続人間で話し合いが難航することがあります。
また、抵当権の設定された物件や未登記建物が含まれている場合など、権利関係が複雑なケースも存在します。
相続人間での直接の話し合いがまとまらない場合や、過剰な要求を受けて合意に至らない場合などは、弁護士への相談が選択肢となります。
弁護士は代理人として他の相続人との協議を進めたり、家庭裁判所における調停や審判の手続きに対応したりすることが可能です。
相続人間で意見の対立がある場合や法的な整理が必要な場合は、弁護士への相談を検討すると手続きを適切に進めやすくなります。
また、将来のトラブルを防ぐための遺言書作成や遺留分への配慮など、生前の相続対策についても法的な助言を受けることができます。
手続きの段階や直面している問題の内容に応じて、各士業のサポートを活用することが大切です。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。