更新日:2021年7月16日 (金)
公開日:2021年7月16日 (金)
遺産分割について解説|方法や協議の流れ・注意点
サマリー
被相続人が亡くなり、遺言書が遺されていない場合や一部の財産しか指定されていないときは、相続人全員で遺産分割を行う必要があります。
しかし、財産をどのように分ければよいのか、話し合いをどのように進めるべきか悩む方も少なくないでしょう。
遺産分割には主に3つの方法があり、未成年者や認知症の方がいる場合にはそれぞれに応じた手続きも求められます。
この記事では、遺産分割の基本的な方法や法定相続分の割合、協議の進め方と注意点を解説します。
遺産分割の概要と主な3つの分割方法

相続が発生した際、遺産の帰属先を確定させるために行われるのが遺産分割です。
被相続人の遺言書が残されていない場合や、遺言書が存在していても一部の財産についての記載にとどまる場合には、相続人全員による話し合いを通じて財産の分け方を決める必要があります。
遺産分割の具体的な方法には、主に「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3つがあります。
それぞれの方法に特徴やメリット・デメリットがあるため、財産の種類や相続人の状況に応じた適切な選択が重要です。
1. 現物分割
現物分割は、土地や建物、預貯金などの遺産をそのままの形で各相続人に割り振る方法です。
例えば「自宅土地・建物は相続人Aが取得し、預貯金は相続人Bが取得する」といった形で分配を行います。
財産を売却したり金銭を新たに工面したりする必要がないため、手続きが比較的簡便である点がメリットです。
一方で、不動産のように物理的に分割しにくい財産が含まれる場合、相続人間で取得額に差が生じ、不公平になりやすい点がデメリットといえます。
2. 換価分割
換価分割は、不動産や有価証券などの現物財産を売却して金銭に換え、その売得金を相続人間で分ける方法です。
現物のままでは公平に分けることが難しい財産がある場合によく利用されます。
金銭として分けるため、法定相続分などの割合に応じた公平な分配を行いやすい点がメリットです。
一方で、買い手が見つかるまで売却に時間を要する場合があるほか、譲渡所得税や仲介手数料などの諸費用が発生する点、建物に居住者がいる場合の調整が必要になる点などがデメリットとして挙げられます。
3. 代償分割
代償分割は、特定の相続人が特定の財産(自社株式や事業用店舗、不動産など)をそのまま取得する代わりに、他の相続人に対して自己の資金から金銭などの代償財産を支払う方法です。
事業用資産や自宅などの分散を防ぎ、事業の継続や生活基盤の維持を図りやすい点がメリットです。
ただし、財産を取得する相続人に代償金を支払う十分な資金力がない場合、資金調達の負担が生じる点や、相続税の納税資金の確保も含めて慎重な検討が求められる点がデメリットとなります。
法定相続人と法定相続分の基本的なルール
民法では、誰が遺産を受け継ぐ権利を持つか、またそれぞれが受け継ぐ財産の目安となる割合が明確に定められています。
遺産分割協議を進めるにあたっては、まず誰が相続人となるのか、その法定相続分がどの程度なのかを正確に把握しておくことが基本となります。
法定相続人の定義と優先順位
「法定相続人」とは、民法で定められている遺産を相続する権利がある人を指します。
被相続人の配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の血族相続人については、被相続人と血縁関係の近い順に優先順位(第1順位から第3順位まで)が定められています。
先順位の血族相続人が1人でもいる場合、後順位の血族は相続人になりません。
例えば、被相続人に子ども(第1順位)がいる場合、父母(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)には相続権が回ってこない仕組みになっています。
各順位における法定相続分の割合
法定相続分とは、遺産を分ける際に基準となる民法上の取り分です。相続人の組み合わせによって以下のように割合が定められています。
| 順位 | 相続人の組み合わせ | 法定相続分の割合 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 配偶者と子ども | 配偶者:1/2、子ども:1/2(複数いる場合は等分) |
| 第2順位 | 配偶者と直系尊属(父母・祖父母) | 配偶者:2/3、直系尊属:1/3(複数いる場合は等分) |
| 第3順位 | 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4(複数いる場合は等分) |
第1順位である子どもがいる場合、配偶者と子どもで2分の1ずつ分け合います。
子どもが複数人いるときは、子どもの取り分である2分の1を人数に応じて均等に分割します。
配偶者が既に亡くなっている場合は、子どもたちだけで均等に分けることになります。
子どもがおらず第2順位の直系尊属が相続人となる場合は、配偶者が3分の2、父母が3分の1となります。
父母が既に亡くなっていて祖父母が存命であれば、祖父母が相続人となります。
子どもも直系尊属もいない場合には、第3順位として兄弟姉妹が相続人となります。
この場合の割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。
なお、配偶者がおらず血族相続人のみの場合や、血族相続人がおらず配偶者のみの場合は、その相続人がすべての遺産を相続します。
法定相続分は協議における公平な分配の目安となりますが、相続人全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能です。
遺産分割協議の進め方と注意すべきポイント
遺産分割協議とは、被相続人の遺産をどの相続人がどのように取得するかを話し合う手続きです。
遺言書がない場合や、遺言書で指定されていない財産がある場合に実施されます。
遺産分割協議を有効に成立させるためには、原則として法定相続人全員が参加し、全員の合意を得る必要があります。
多数決で決めることはできず、一人でも反対している相続人がいる場合は協議が成立しません。
相続人の調査と確定の重要性
遺産分割協議を進めるにあたり、最初に行うべき重要な作業が「相続人の調査と確定」です。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本等を取り寄せ、相続関係を正確に把握します。
家族が把握していなかった認知された子ども(いわゆる隠し子)が存在したり、前婚での子どもがいるケースもあります。
また、行方不明になっている親族がいる場合などもあるため、戸籍の確認を通じて所在や連絡先を慎重に調査することが求められます。
相続人に漏れがあった場合のリスク
相続人の調査が不十分なまま遺産分割協議を進め、一部の相続人を除外して合意を形成してしまった場合、その遺産分割協議は法律上無効となります。
協議後に新たな相続人が判明した場合は、それまでにまとまった合意内容を白紙に戻し、新たに判明した相続人を加えた全員で協議を一からやり直さなければなりません。
協議のやり直しを防ぎ、スムーズな遺産分割を行うためにも、財産の話し合いを始める前に戸籍関係書類を揃えて相続人を確実に確定させることが重要です。
相続人に未成年者・不在者・認知症の方がいる場合の手続き
相続人の中に、未成年者や行方不明者、認知症などで判断能力が十分でない方が含まれている場合、通常の遺産分割協議をそのまま進めることはできません。
それぞれ法律に基づいた適切な手続きを経る必要があります。
未成年者がいる場合の特別代理人選任
未成年者は単独で遺産分割協議を行うことができません。
通常は親権者などの法定代理人が代理しますが、親権者自身も同じ相続の当事者である場合、親と子の利害が対立する「利益相反」が生じます。
利益相反にあたる場合、親権者は子を代理できないため、家庭裁判所へ「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。
未成年者の相続人が複数いるときは、未成年者ごとにそれぞれ異なる特別代理人を選任しなければなりません。
家庭裁判所は遺産分割協議書の案を確認し、未成年者に不利益な内容になっていないかを審査したうえで選任を決定します。
選任後は、特別代理人が未成年者に代わって遺産分割協議書への署名・押印を行います。
不在者(行方不明者)がいる場合の対応
相続人の中に所在が分からない不在者がいる場合、行方不明となってからの期間や状況に応じて「失踪宣告」または「不在者財産管理人の選任」の手続きを検討します。
生死不明の状態が7年以上続いている場合(戦争や遭難などの危難の場合は1年以上)は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることが可能です。
失踪宣告が確定すると法律上死亡したものとみなされ、残りの相続人で協議を進めることになります。
失踪宣告の要件を満たさない場合などは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。
管理人が不在者に代わって遺産分割協議を行うには、家庭裁判所から権限外行為の許可を得る必要があります。
なお、不在者が現れるまでの管理負担を考慮し、他の相続人が法定相続分相当の金銭を預かり、本人が現れた際に支払う「帰来時弁済型」の分割方法が取られることもあります。
この場合、預かる相続人に十分な資力があることの証明が求められます。
認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合の成年後見制度
認知症や精神上の障害などにより意思能力を欠く状態で行われた遺産分割協議は、原則として無効となります。
そのため、家庭裁判所に成年後見人等の選任を申し立て、後見人が協議に参加する形を取ります。
成年後見制度には本人の判断能力の程度に応じた法定後見(後見・保佐・補助)などの区分があります。
選任の申立てには医師の鑑定等が必要となり、決定までに数か月を要する場合もあるため、計画的に準備を進めることが大切です。
遺産分割に関する手続きと弁護士への相談

遺産分割手続きで直面しやすい負担と課題
遺産分割を進めるにあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集して相続人を正確に確定させる作業や、預貯金や不動産といった相続財産の調査など、多くの手間と時間を要します。
また、相続人の間で財産の評価や分割方法に関する意見が合致しない場合、当事者同士の話し合いでは感情的な対立が生じて協議が難航するおそれもあります。
さらに、未成年者や不在者、認知症の相続人がいる場合には、家庭裁判所での特別代理人や不在者財産管理人、成年後見人の選任といった申立て手続きが求められ、手続きの負担が重くなる傾向があります。
後日の紛争を防ぐためにも、法的な要件を正しく満たした遺産分割協議書を作成し、手続きを円滑に進めることが重要です。
状況に応じた適切な対応と弁護士への相談
相続財産の全容が明確でない場合や、相続人間の協議がまとまらないときは、客観的かつ法的な視点から状況を整理することが有用です。
弁護士に相談することで、事案に応じた適切な分割方法の検討や、家庭裁判所に対する各種申立て手続きについてアドバイスを受けることができます。
遺産分割に関する手続きや相続人間の話し合いに不安や疑問がある場合は、事態の長期化やトラブルの激化を防ぐためにも、早い段階で弁護士へ相談することを検討してみるとよいでしょう。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。