更新日:2024年7月6日 (土)

公開日:2024年7月6日 (土)

弁護士が成年後見人になるメリットと弁護士を後見人に選任する方法

弁護士が成年後見人になるメリットと弁護士を後見人に選任する方法 弁護士が成年後見人になるメリットと弁護士を後見人に選任する方法

サマリー

成年後見人は、認知症などで判断能力が低下した人に代わって、本人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行います。

成年後見人になるのに特別な資格は不要です。本人の親族が後見開始の審判を申立てる場合、申立人自らが後見人候補者になれますし、申立人と候補者が異なっても構いません。

親族に適任者がいない場合は、専門家(弁護士・司法書士・社会福祉士等)に候補者を依頼する方法があります。

この記事では、弁護士が成年後見人になるメリットと弁護士に候補者を依頼する方法について解説します。

弁護士が成年後見人につくメリット4つ

ここでは、弁護士が成年後見人につくメリットを紹介します。

適切な財産管理・身上監護ができる

成年後見人の職務は、被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うことです。後見人はその職務を遂行する上で、被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態や生活状況に配慮する義務を負います。

後見人が適切に事務を行わず、被後見人に損害を与えた場合は、民事責任や刑事責任を問われることや、家庭裁判所に解任されることがあります。

弁護士を成年後見人につければ、民法の規定に従って適切に後見事務を遂行してもらえます。

煩雑な事務手続きを一任できる

成年後見人は、家庭裁判所に後見事務の状況を報告する義務があります。通常は、年1回程度、以下の書類を家庭裁判所に提出します。

  • 後見等事務報告書
  • 財産目録
  • 収支報告書(収支予定表)
  • 被後見人名義の預貯金通帳・預金証書の報告対象期間中のコピー
  • 本人名義の株式・投資信託・国債等の有価証券の取引残高証明書等のコピー
  • 報告書・財産目録・収支報告書で変化があった旨の報告をした事項の裏付けとなる資料

弁護士が成年後見人に選任されれば、これらの収集・作成など煩雑な事務手続きを一任できるため、親族の負担を軽減できます。

法的トラブルを適切に対処してもらえる

判断能力が低下すると、法的トラブルに遭遇するリスクが高くなります。被後見人は、自身が法律トラブルに遭っているのに気づけないこともあります。

弁護士は、紛争の解決に強く、あらゆる法的トラブルに対応できます。トラブルの未然防止・早期発見のために、定期的に被後見人と面会し、生活状況や心身の状況に変化がないかを見守ります。

本人が遠方に住んでいても対応してもらえる

本人と親族が離れて暮らしている場合は、適切な財産管理や身上監護が困難でしょう。

本人が居住する地域を拠点とする弁護士に依頼すれば、きめ細やかにサポートしてもらえるので、離れて暮らす親族も安心感を得られます。

弁護士が成年後見人につくデメリット

ここでは、弁護士が成年後見人につくデメリットについて解説します。

後見人の報酬額は、後見人の申立てにより、家庭裁判所が被後見人の資力その他の事情を勘案して決定します。通常の後見事務を行った場合に、基本報酬(月額×対象期間の月数)が認められ、特別の事務を行った場合は付加報酬を含めて報酬付与の審判がなされます。

親族が後見人についた場合も報酬付与の申立てを行えますが、本人の財産の減少を避けるために、報酬を求めないケースが多いようです。

弁護士等の専門職後見人は、年1回の家庭裁判所への定期報告に併せて、家庭裁判所に報酬付与の申立てを行います。

基本報酬額および付加報酬額の目安は、以下のとおりです。

基本報酬 管理財産額 1,000万円以下 月額2万円
1,000万円~5,000万円 月額3万円~4万円
5,000万円超 月額5万円~6万円
付加報酬 身上監護等に特別困難な事情があった場合 基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加
特別の行為(訴訟、調停、遺産分割、不動産の任意売却、不動産の賃貸管理等)をした場合 相当額の報酬を付加

成年後見人選任の申立てを依頼した場合の弁護士費用相場

ここでは、後見等開始の審判申立てを弁護士に依頼する場合の弁護士費用の相場を紹介します。

弁護士費用の相場

後見等開始の審判申立ての弁護士費用の相場は、10万円~30万円程度です。

弁護士費用は、依頼する弁護士や後見制度の対象となるご本人の財産状況等によって異なります。

実費

後見等開始の審判を申立てる際には、弁護士費用の他に以下の費用がかかります。

  • 収入印紙(申立手数料・登記手数料):3,400円分
  • 郵便切手:3,000円~4,000円分(家庭裁判所によって異なる)
  • 鑑定費用:5~10万円(鑑定が行われる場合)
  • 添付書類の取得費用:数千円~数万円程度(事案によって異なる)

これらの費用は、原則として申立てを行う人が負担します。

 

弁護士を成年後見人に選任する方法は?

ここでは、弁護士を成年後見人に選任する方法を解説します。

弁護士に候補者を依頼する

成年後見人が後見事務を遂行する上では、本人や親族との信頼関係が必要です。

事前に弁護士に依頼する方が、申立手続きや審判確定後の後見事務がスムーズに進みます。

本人の財産管理や身上看護を任せたい弁護士がいれば、候補者になってもらえないか事前に相談しましょう。弁護士を候補者にする場合は、煩雑な申立手続きも依頼できます。

候補者がいなくても専門家が選任される可能性もある

後見開始の審判申立書に候補者を記載しなかった場合は、家庭裁判所が専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士等)の中から適切な後見人を選任します。ただし、この場合は全く面識のない専門職後見人が選任されます。

弁護士以外の専門職が後見人に選任されることもあるため、専門職の中でも弁護士に後見人になってもらいたい場合は、事前に弁護士に依頼した方が確実です。

注意|候補者が必ず後見人に選任されるわけではない

親族を後見人候補者に挙げていても、専門職後見人が選任されることもあります。

成年後見人の選任は、家庭裁判所の専権事項です。候補者を挙げていても、家庭裁判所はこれに拘束されません。さまざまな事情を考慮して、候補者が後見人としてふさわしくないと思われる事由があれば、別の人を後見人に選任します。

成年後見人に弁護士が選任されやすいケース

ここでは、親族を後見人候補者に挙げても専門職後見人が選任される傾向があるケースを紹介します。

候補者が高齢

候補者が高齢の場合は、本人より先に後見人が死亡するなど後見人が欠けるリスクが生じます。そのため、親族を候補者としていても、家庭裁判所が専門職後見人を選任することがあります。

親族間に紛争がある

親族間が不仲なケースや、本人の財産の管理方法等に意見の対立がある場合は、特定の親族が候補者になることを希望していても、後見人に選任されない可能性があります。

本人の資産が多額・多岐にわたる

本人の資産が多額・多岐にわたる場合は、財産管理が複雑になる傾向があります。

親族後見人では適切な財産管理が難しいと判断されると、専門職後見人が選任される可能性があります。

候補者である親族が後見人に選任されても、後見監督人が選任されることや、後見制度支援信託の利用を勧められることもあります。

 

不動産売買や訴訟等の重要な法律行為を予定している

不動産の売買や訴訟などの専門的な知識が必要な事務が予定されている場合は、専門職後見人が選任される傾向があります。

後見人候補者と本人に利害関係がある

後見人候補者と本人との間でお金の貸し借り等があり、その清算について本人の利益を特に保護する必要があると家庭裁判所が判断した場合は、専門職後見人が選任されたり、後見監督人が選任されたりする可能性があります。

成年後見人の候補者にする弁護士選びのポイント

ここでは、後見人候補者を依頼する弁護士選びのポイントを解説します。

信頼できる弁護士を探す

成年後見人には財産管理等の広範な権限が与えられます。

本人の財産管理を任せることになるので、お金に関して信頼をおける弁護士を探しましょう。

成年後見制度は、本人の権利保護を目的とする制度です。財産を管理・処分すること自体が目的ではありません。そのため、本人の立場で、本人の利益のために動いてくれるかどうかを意識しながら弁護士を選ぶことをおすすめします。

後見事務に明るい

後見事務の経験が豊富な弁護士を選びましょう。

成年後見人は、被後見人が不利益を被らないよう、生活面・財産面で必要なサポートを行わなければなりません。

後見人として求められる知識や経験が乏しければ適切に対応できないおそれがあります。

福祉サービスに詳しい

介護・福祉サービスを利用するために、成年後見人が利用契約を結ぶ場面は多くの事案で発生します。居宅支援事業者やサービス事業者との契約時に、契約書の内容や重要事項説明書の説明を受け、確認することは成年後見人の責務です。

福祉サービスの内容や対象者については、自治体ごとに異なります。

後見実務だけでなく、各種福祉制度や減免制度に詳しい弁護士に依頼すれば、速やかに手続きを進められます。

まとめ

弁護士が成年後見人に選任されれば、親族の負担は軽減され、かつ適切に財産管理等を行ってもらえます。後見人候補者を弁護士にすることで、煩雑な申立手続きを依頼できるのもメリットの一つです。

ただし、成年後見の業務を扱っていない弁護士も多く存在します。専門家であることだけで信頼するのではなく、法律相談を通じて後見事務の経験が豊富か、信頼関係を築けるかどうかを確認して依頼することをおすすめします。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京オフィス

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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