サマリー
養育費の取り決め率が75%に上昇したという報道を踏まえ、共同親権導入後の養育費の取り決め方法・法的効力・強制執行の手続きを弁護士が解説します。
離婚時に養育費の取り決めをする夫婦の割合が上昇しているという調査結果が報じられました。
離婚後の養育費、取り決め率75%に上昇 共同親権導入が影響か
出典:毎日新聞(Yahoo!ニュース)
2026年10月9日に配信されたこの報道によれば、離婚後の養育費の取り決め率が75%まで上昇しており、その背景には共同親権制度の導入が影響しているとの見方が示されています。本コラムでは、この統計を踏まえ、養育費の取り決め方法や法的効力について、民法の規定を交えながら詳しく解説します。
養育費の取り決め率上昇の背景にある共同親権導入
従来、日本の離婚後の養育費の取り決め率は約4割前後にとどまっていたとされ、支払いが継続されないケースも多く社会問題となっていました。今回の報道では取り決め率が75%まで上昇したとされており、共同親権制度の導入が養育費の取り決めを促す契機になった可能性が指摘されています。
2024年の民法改正により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できる仕組みが整備されました(改正民法第819条等)。共同親権を選ぶ場合には、子の監護に関する事項として養育費の分担についても協議することが前提となるため、離婚協議の段階で養育費が話し合われる機会が自然と増えたと考えられます。
共同親権・単独親権いずれを選択する場合でも、養育費は親権の有無にかかわらず父母双方が負担すべき子の扶養義務に基づくものである点を押さえておく必要があります。
養育費の法的根拠と取り決めるべき内容
養育費の支払い義務は、民法第877条に定める親族間の扶養義務、および民法第766条に定める「子の監護に関する事項」として根拠づけられます。民法第766条第1項では、父母が協議上の離婚をする際には、子の監護について必要な事項(養育費を含む)を協議で定めるものとし、協議が調わないときや協議できないときは家庭裁判所が定めるとされています。
養育費の取り決めにおいては、以下の事項を具体的に定めることが重要です。
| 取り決め事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 金額 | 月額〇万円(算定表を参考に協議) |
| 支払期間 | 子が成人(または大学卒業)に達するまで |
| 支払方法 | 毎月〇日までに指定口座へ振込 |
| 増減額事由 | 進学・病気等による臨時費用の扱い |
金額については、裁判所が公表している「養育費算定表」が実務上の基準として広く用いられています。これは父母双方の収入、子の人数・年齢をもとに標準的な金額を算出するもので、協議離婚の場面でも参考にされることが多くあります。
口約束では不十分?取り決めを書面化する重要性
養育費の取り決めは口頭の合意でも法的には成立しますが、後日の「言った・言わない」のトラブルを避け、未払いが発生した際に迅速に対処するためには、必ず書面化しておくことが不可欠です。特に推奨されるのが、公証役場で作成する「強制執行認諾文言付き公正証書」です。
この文言が付された公正証書があれば、養育費の支払いが滞った場合に裁判を経ずに相手方の給与や預金口座を差し押さえる強制執行の手続きに進むことができます(民事執行法第22条第5号)。通常の私文書による合意書では、未払い時にあらためて訴訟を提起して判決を得る必要があり、時間と費用がかかるため、公正証書化のメリットは大きいといえます。
また、離婚調停・離婚裁判を経て養育費を定めた場合には、調停調書や判決書自体に執行力があるため、別途公正証書を作成する必要はありません。
共同親権導入後に注意すべきポイント
共同親権が選択された場合でも、養育費の支払義務は非監護親(子と同居していない親)に当然に生じるものであり、親権の形態によって支払義務の有無が左右されるわけではありません。むしろ共同親権下では、進学や医療など子の重要事項について双方の同意が必要となる場面が増えるため、養育費の増減や臨時費用の分担についても、あらかじめ取り決めの中で明確にしておくことが従来以上に重要になります。
また、養育費はひとたび取り決めても、収入の変動や再婚など事情変更があった場合には、民法第880条の趣旨に基づき、家庭裁判所に「養育費減額(増額)調停」を申し立てることで見直しが可能です。取り決め時の内容を固定的なものと考えず、状況の変化に応じて適切に見直す視点も必要です。
まとめ
養育費の取り決め率が75%まで上昇した背景には、共同親権制度の導入により離婚協議の中で子の監護事項が丁寧に話し合われるようになったことが影響していると考えられます。もっとも、取り決めをしただけでは安心できず、強制執行認諾文言付き公正証書の作成など、未払いに備えた法的効力のある形にしておくことが何より重要です。
養育費の金額の決め方、公正証書の作成方法、共同親権下での取り決め内容の調整など、離婚に伴う養育費の問題でお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。