更新日:2026年10月6日 (火)

公開日:2026年10月6日 (火)

原材料高騰による連鎖倒産リスクと法人破産の手続き|創業95年企業の破産申請事例から学ぶ

原材料高騰による連鎖倒産リスクと法人破産の手続き|創業95年企業の破産申請事例から学ぶ 原材料高騰による連鎖倒産リスクと法人破産の手続き|創業95年企業の破産申請事例から学ぶ

サマリー

創業95年の老舗シート製造卸会社がナフサ不足による原材料高騰を引き金に破産申請へ。法人破産の手続きの流れと経営者が取るべき対応を弁護士が解説します。

原材料価格の高騰は、企業体力を静かに、しかし確実に蝕んでいきます。2026年10月5日に報じられたニュースでは、創業95年を誇る建設・農業用等の各種シートの製造卸会社が、ナフサ不足を引き金とした原材料高騰の影響を受け、事業停止・破産申請に至ったことが伝えられました。

【倒産速報】ナフサ不足が引き金に…創業95年の建設・農業用等の各種シートの製造卸会社が事業停止→破産申請へ 負債総額は約2.5億円か【帝国データバンク】
出典:Yahoo!ニュース(RKB毎日放送配信)

報道によれば、同社は負債総額約2.5億円を抱え、帝国データバンクによって事業停止・破産申請へ向かう動きが確認されたとのことです。長年の歴史を持つ企業であっても、原材料市況の急変という外部要因によって経営が立ち行かなくなるケースは珍しくありません。本コラムでは、このような原材料高騰型の法人破産がなぜ起こるのか、そして実際に破産手続きを選択する場合にどのような流れ・注意点があるのかを、法的根拠とともに解説します。

ナフサ不足・原材料高騰が中小製造業を直撃する構造

ナフサは石油化学製品の基礎原料であり、シート材料をはじめとする樹脂製品の製造コストに直結します。原油価格の変動や供給網の混乱によってナフサが不足・高騰すると、製造業者は仕入れ価格の上昇分を製品価格に転嫁せざるを得ません。しかし、建設・農業資材のような価格競争の激しい業界では、取引先との力関係上、十分な価格転嫁ができないケースが多く見られます。

その結果、売上高は維持できていても粗利益率が急速に悪化し、資金繰りが行き詰まるという「黒字倒産」に近い構造に陥ることがあります。今回報じられた事例のように創業から長い年月を重ねた企業であっても、外部環境の急変による原材料費の上昇には対応しきれず、事業継続を断念せざるを得ない場合があるのです。

法人破産とは何か|破産法上の位置づけ

法人破産は、破産法15条に定める「支払不能」または破産法16条に定める「債務超過」(法人の場合)に該当する場合に、裁判所に破産手続開始の申立てを行う手続きです。支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態を指し(破産法2条11項)、単なる一時的な資金ショートとは区別されます。

破産手続開始の申立ては、債務者自身(自己破産)のほか、債権者も行うことができます(破産法18条)。もっとも、原材料高騰による資金繰り悪化が深刻化している企業の多くは、経営者自身が早期に弁護士へ相談し、自己破産を選択することで、従業員や取引先への影響を最小限に抑える対応を取るケースが大半です。

破産手続きの具体的な流れ

法人破産の一般的な流れは以下のとおりです。

段階 内容
1. 弁護士への相談・受任 資金繰り表・財務状況の確認、破産方針の決定
2. 受任通知の発送 債権者への通知、債権者からの個別取立ての停止(貸金業法21条等の趣旨を踏まえた実務対応)
3. 破産手続開始の申立て 裁判所へ申立書・財産目録・債権者一覧表等を提出
4. 破産手続開始決定 裁判所が支払不能等を認定し、破産管財人を選任(破産法31条)
5. 財産の調査・換価 破産管財人による会社財産の調査・換価、否認権行使の検討(破産法160条等)
6. 配当・手続終結 債権者への配当実施後、破産手続終結決定

負債総額が約2.5億円規模の中小企業の場合、申立てから開始決定まで概ね1〜2週間程度、手続全体の終結までは財産内容にもよりますが半年〜1年程度要することが一般的です。資金繰りが逼迫してから相談するのでは選択肢が狭まるため、資金ショートの兆候が見えた段階で早期に専門家へ相談することが極めて重要です。

経営者が負う責任と注意すべき法的リスク

破産手続きにおいて経営者が特に注意すべきは、破産法に定める免責不許可事由(破産法252条1項各号)です。財産を隠匿・毀損する行為(同項1号)、著しく不利益な条件で債務を負担する行為(同項2号)、特定の債権者にのみ弁済する偏頗弁済(同項3号)などに該当すると、法人代表者個人が連帯保証債務を負っている場合の自己破産において免責が認められないリスクがあります。

また、取引先への支払いを一部だけ先行して行う、在庫や設備を関係者に安値で譲渡するといった行為は、破産管財人による否認権行使(破産法160条〜176条)の対象となり得るほか、場合によっては詐欺破産罪(破産法265条)に問われる可能性もあります。経営悪化が明らかになった時点で独自の判断で特定債権者への弁済を進めることは避け、必ず弁護士の助言のもとで公平な手続きを進めることが、経営者自身の法的リスクを回避するうえでも不可欠です。

まとめ

ナフサ不足をはじめとする原材料高騰は、企業の努力だけでは防ぎきれない外部要因です。今回報じられた創業95年の企業の事例は、長年の信用や実績があっても市況の急変には抗えない現実を示しています。重要なのは、資金繰りの悪化を感じた早い段階で破産法上の選択肢を含めた対応を検討し、計画的に手続きを進めることです。

原材料高騰による資金繰り悪化、取引先への対応、代表者個人の保証債務の扱いなど、法人破産には専門的な判断が必要な場面が数多くあります。自社の資金繰りや今後の事業継続に不安を感じている、あるいは原材料高騰による債務の増大でお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

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