インフルエンサーにサプリメントのPRを依頼する場合、取り扱う製品によっては、PR投稿そのものが医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)に違反することがあります。しかも問題となるのは広告表現の巧拙ではなく、製品に含まれる成分です。成分によっては製品自体が「未承認医薬品」に該当し、表現をどう工夫しても広告が一切禁止される場合があります。
本記事では、インフルエンサーマーケティング事業を運営する企業からのご相談事例をもとに、SNSでのPR投稿にかかる薬機法上のリスクを整理します。
相談事例
インフルエンサーを起用してサプリメント製品X(一般食品)のPRキャンペーンを実施することが検討されていました。
この製品には特定の成分(成分A)が含まれており、法的な観点からSNSでのPR投稿が可能かどうかについて確認を求められました。
また、もし当該製品のPRが薬機法上の広告規制に抵触し、投稿が不可能となる場合、その影響範囲についても論点となりました。
具体的には、規制の対象が一部の投稿にとどまるのか、それとも「SNSにおいてサプリメント製品XについてPR投稿を行ったすべてのインフルエンサー」に及ぶのかという点です。
結論:該当のサプリメント製品はPR投稿を含め一切の広告ができない
結論として、SNSにおいてサプリメント製品XについてPR投稿を行ったすべてのインフルエンサーが広告規制の対象になります。
その理由は、製品の成分です。
該当製品に含まれる成分が薬機法の基準に照らして医薬品とみなされ、製品自体が未承認医薬品に該当するためです。国内では、医薬品としての承認を受けていない製品(未承認医薬品)の広告が禁止されています。事業者から依頼を受けたインフルエンサーによるPR投稿も、この禁止される広告に該当します。
したがって、インフルエンサーのフォロワー数や影響力の規模、あるいは投稿の形式(テキスト、画像、動画など)にかかわらず、当該キャンペーンに関わるすべてのPR投稿が薬機法違反となるリスクがあります。
薬機法における広告の該当性と未承認医薬品の規制
インフルエンサーの投稿がなぜ薬機法の規制対象となるのか、そして一般の食品として販売されているはずのサプリメントがなぜ未承認医薬品とみなされてしまうのか、その法的な根拠と考え方を整理します。
①薬機法における広告の3要件とインフルエンサーPRの扱い
ある表示が薬機法上の「広告」に該当するかどうかは、以下の3つの要件を満たすかどうかで判断されます。
(参照:平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)
- 特定性
- 認知性
- 誘引性
本件のようなインフルエンサーによるSNS投稿において、特に問題となるのが3つ目の「誘引性」に該当するかどうかという点です。
一般の消費者が、自分自身で購入したサプリメントを使用し、「このサプリメントが良かった」などと純粋な感想をSNSに投稿するケースを想定してみます。
この場合、個人の感想を述べているに過ぎず、商品の購入を促す意図(誘引性)は認められないため、通常は薬機法上の広告には該当しません。
一方、今回のキャンペーンでは状況が異なります。
広告会社やメーカーから依頼を受け、インフルエンサーがPRとして投稿する仕組みだからです。依頼を受けて投稿する以上、販売促進の意図が含まれるとみなされ、誘引性が認められます。
以上から、対象製品にもよりますが、インフルエンサーマーケティング等のプラットフォームを利用した多くの広告対象製品の投稿は、薬機法上の広告に該当することになります。
②物の成分本質(原材料)による未承認医薬品への該当性
サプリメントの広告展開において非常に重要なポイントとなるのが、その製品が「医薬品に該当しないか」、あるいは「医薬品的な効能効果を表示していないか」という点です。
製品が医薬品に該当するかどうかの判断基準の一つとして、「物の成分本質(原材料)」という考え方があります。
厚生労働省は成分本質に関するリストを作成しており、その中で「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に該当する成分が製品に含有されている場合には、原則として医薬品としてみなされることになっています。
(参照:令和8年5月28日医薬監麻発0528第1号「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示」)
サプリメント製品Xは、「成分A」という成分を含有した製品でした。
この成分Aは、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に該当する成分です。
そのため、サプリメント製品Xは法律上、医薬品としての承認を受けていない製品であるため、結果として未承認医薬品に該当します。
薬機法68条においては、承認前の医薬品等の広告が禁止されています。
以上のことから、本製品は未承認医薬品に該当するため、広告(=SNSにおけるキャンペーン投稿)は行うことができないという結論になります。
サプリメントの広告表現や成分における注意点
本件のように、含有されている成分そのものが原因で製品自体が未承認医薬品に該当してしまうケースでは、広告の表現をどれほど工夫したとしても、広告を出すこと自体が薬機法違反となってしまいます。
インフルエンサーマーケティングを実施する前段階として、取り扱う製品の成分本質を正確に確認し、法的リスクを把握しておく必要があります。
成分本質が医薬品に該当しない場合(リスト外の食品成分などの場合)であっても、広告における表現には十分な注意が求められます。
サプリメントはあくまで食品であるため、特定の疾病の治療や予防、身体の組織機能の増強などを暗示するような「医薬品的な効能効果」を標榜することは認められていません。
インフルエンサーの投稿文や画像、動画内にそのような表現が含まれていれば、薬機法違反となるおそれがあります。
さらに、事実と異なる過剰な効果を標榜すれば、健康増進法などの他の規制対象となることもあります。
(参照:健康食品とは?健康食品の広告の留意点)
類似のケースであっても、製品に含まれる成分の構成、表示するパッケージの記載内容や、インフルエンサーの具体的な投稿文言によって法的な判断は変わります。必ずしもすべての事案で同じ結論になるわけではない点にご留意ください。
広告展開やプラットフォーム運営において弁護士に相談するメリット
インフルエンサーマーケティングにおいては、広告主となる企業はもちろんのこと、仲介するプラットフォーム事業者やキャスティング会社も法的なトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
特に薬機法や健康増進法などの規制は基準が複雑であり、成分の該当性判断や広告表現の適法性を社内だけで正確に完結させるのは難しい場合があります。
このような場面で弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
第一に、キャンペーン開始前に製品の成分や表示内容を法的にチェックすることで、未承認医薬品の広告禁止規定に抵触するリスクを未然に防ぎやすくなります。
第二に、インフルエンサーに向けた投稿ガイドラインやマニュアルの策定において、適法な範囲での表現方法や注意事項を整理するためのサポートを受けることが可能です。
第三に、万が一、表現の行き違いなどにより法的リスクが浮上した場合でも、法的な見地に基づいた適切な対応方針を迅速に立てやすくなります。
健全な事業運営とブランドリスクの回避に向けて、実績豊富な弁護士の知見を活用することは有効な選択肢の一つです。
まとめ・ご相談はネクスパート法律事務所へ
本記事では、インフルエンサーを起用したサプリメントPRにおける薬機法上の留意点について、ご相談事例をもとに解説しました。要点は以下のとおりです。
- 事業者からの依頼によるインフルエンサーのPR投稿は、誘引性が認められ薬機法上の広告に該当することがある。
- 「専ら医薬品として使用される成分」を含むサプリメントは未承認医薬品とみなされ、承認前の医薬品等の広告として禁止される。
- 未承認医薬品の広告制限は、当該キャンペーンに関わるすべてのインフルエンサーのPR投稿に及ぶ。
- 成分だけでなく、医薬品的な効能効果をうたう表現にも注意を払う必要がある。
※本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。