更新日:2026年7月13日 (月)
公開日:2026年7月13日 (月)
飲食店の立ち退き料の相場はどれぐらい?相場感がわかる判例を紹介
飲食店経営者にとって立ち退きを求められた場合、立ち退き料の相場がどれぐらいになるか気になるところです。
この記事では、飲食店の立ち退き料について、以下の点を解説します。
- 立ち退き料の相場の金額
- 立ち退き料に含まれるもの
- 立ち退き料の相場をつかむための参考判例
- 立ち退き料を受け取った場合の税務上の注意点
飲食店の立ち退き料の相場は?
飲食店の立ち退き料について、法律で基準は定められていません。
一般的には、賃料の12か月36か月の金額が相場といわれているようです。
裁判実務では、賃料の36か月分以上の立ち退き料が認められるケースが多く、賃料の約150か月分に相当する金額の支払いが命じられた事例もあります。
飲食店の立ち退き料に含まれるものは?
飲食店の立ち退き料に含まれるのは、以下の内容です。
店舗の引っ越し費用
立ち退き料には、店舗の引っ越し費用が含まれます。
引っ越しにあたって、現在借りている物件の原状回復費用がかかったり、厨房機器のリース代の解約費用がかかったりする可能性があります。
規模の大きい飲食店であれば、このような費用は高額になりがちです。
新店舗の初期費用
立ち退き料には、新店舗の初期費用が含まれます。
新店舗を借りるにあたって必要となる以下のような費用が、立ち退き料の一部として考慮されます。
- 保証金
- 仲介手数料
- 家賃の前払い分
- 礼金
- 厨房機器
- 備品
- 内装工事費
- 看板設置費用
- 広告費
- 家賃保証:201万円
- 営業補償:2039万円
- 設備機器:317万円
- 容積率増加に依る増分価格:508万円
- 公共事業による立ち退きで土地や建物を売却した場合:5,000万円の控除
- 居住用の住宅を売却した場合:3,000万円の控除
- 特定土地区画整理事業などで土地を売却した場合|2,000万円の控除
新店舗の内装工事費用
立ち退き料には、新店舗の内装工事費用が含まれます。
新店舗を開業するにあたり、以下の費用が必要になるからです。
休業補償
立ち退き料には、休業補償の費用が含まれます。
店舗の移転に伴う休業期間に見込めた営業収益の補償をしてもらわなければなりません。
立ち退きで生じる逸失利益
立ち退き料には、立ち退きで生じる逸失利益の費用が含まれます。
飲食店には、定期的に通う常連客がいる場合が多く、移転によって顧客を失う可能性が高いです。引き続き同じ場所で営業した場合に得られたはずの営業利益を、立ち退き料として補償してもらいます。
立ち退きへの協力金
立ち退き料には、立ち退きへの協力金が含まれます。
移転の手間や常連客を失うといったデメリットがあるにも関わらず、協力してもらうことへのお礼の意味があります。
飲食店の立ち退き料の相場感をつかむための参考判例
飲食店の立ち退き料の相場感をつかむため、参考になる判例を紹介します。
蕎麦屋の立ち退き事例|約950万円
・賃料:月額18万円
・立ち退き料:賃料の約53か月分
築52年の建物で、長年蕎麦屋を営んでいた賃借人に対し、賃貸人が老朽化を理由に建物の明け渡しを求めた事案です(東京地裁令和6年2月19日判決)。
本件建物は耐震性に問題があり、賃貸人は建替えのために立退きを請求しました。賃借人は、先代から60年続く店舗の歴史や地元商店街とのつながりを理由に、立退きを拒否しました。
裁判所は、本件建物が老朽化により倒壊の可能性が高く、多額の費用をかけて補強工事を行っても適切な耐震等級を満たせない一方で、本件店舗は一般的な料理を提供する蕎麦屋で、本件建物の周辺地域には、蕎麦屋の営業が可能な店舗が複数あると認められることから、賃貸人に対し、約950万円の立ち退き料の支払いを受けるのと引き換えに、本件建物の明け渡し命じました。
ラーメン屋の立ち退き事例|約856万円
・賃料:は月額19万円なので、
・立ち退き料は:賃料の約45か月分で算出されました。
築42年の建物で、地域密着型のラーメン屋を24年にわたり営んでいた賃借人に対し、賃貸人が、建物の老朽化を理由に建物の明け渡しを求めた事案です(東京地裁令和4年5月25日判決)。
本件建物は、もともと住宅用に建築された建物で、その構造や耐震性に問題がありました。さらに、耐火被覆材には発じん性が著しく高いアスベストが使用されていることから、これらの除去や補強工事には多額の費用を要する状況でした。
裁判所は、賃借人側の事情については、生計の維持のために建物を使用する必要があるとはいえるものの、移転ができないという程度ではないとして、賃貸人に対し、約856万円の立ち退き料を支払いを受けるのと引き換えに、本件建物の明け渡しを命じました。
立ち退き料の内訳は、以下のとおりです。
賃貸借契約初期費用:204万5,000円
移転費用:460万円
動産解体費用及び雑費:100万円
休業補償(3か月分):30万4,695円
営業利益の補填分(売上の25%の2年分):60万9,391円
カフェバーの立ち退き事例|約2100万円
・賃料:は月額28万5,715円なので、
・立ち退き料は:賃料の約73か月分で算出されました。
都内の繁華街でカフェバーを営んでいた賃借人に対し、賃貸人が、建て替えのために建物の明け渡しを求めた事案です(東京地裁令和6年2月16日判決)。
本件建物は、賃貸人が以前より周辺の複数の不動産を取得・管理し、将来的な再開発を念頭に建替え計画を進めていたエリア内に所在していました。大手企業(テナント)の撤退を契機として、賃貸人は老朽化した商業施設全体の建替えに着手し、本件建物もその対象に含まれていた。
裁判所は、以上の点を踏まえ、賃貸人の更新拒絶には正当事由が認められると判断しました。
賃貸人による建替え計画には一定の合理性があること
カフェバーという営業形態の性質上、他の建物においても営業継続が可能であること
十分な立退き料の支払いが予定されていること
そして、約2100万円の立ち退き料の支払いを受けるのと引き換えに、賃借人に対し、本件建物の明け渡しを命じました。
居酒屋の立ち退き事例|約3060万円
・賃料は:月額20万2,000円なので、
・立ち退き料は:賃料の151か月分で算出されました。
築58年の建物で居酒屋を営んでいた賃借人に対し、賃貸人が、老朽化による建て替えを理由に、建物の明け渡しを求めた事例です(東京地裁令和4年10月28日判決)。
同建物は鉄筋コンクリート造で老朽化が著しく、外壁のクラック、不同沈下、耐震性不足などの問題がありました。耐震補強を施すには高額な費用がかかり、建物周辺は高度利用が望ましい地域とされていたため、賃貸人側は建替えを予定していました。
賃借人側の事情としては、父親の代から半世紀にわたって営業してきた居酒屋であり、常連客も多数存在するため、営業の継続に一定の必要性が認められるものの、本件建物でなければ営業を継続できないとまでは認められませんでした。
裁判所は、賃貸人が移転によって生じる経済的損失を考慮した上で、賃借人に対し、約3,060万円の立ち退き料の支払いを受けるのと引き換えに、本件建物の明け渡しを命じました。
この事案における立ち退き料の内訳は、以下のとおりです。
店舗立ち退き料の相場はいくら?適正な金額を得るためにできること
飲食店が立ち退き料を受け取ったときの税務上の注意点
飲食店が立ち退き料を受け取ったときに、税務上気を付けるべき点があります。
以下でそれぞれ解説します。
飲食店の立ち退き料に税金はかかる
受け取った立ち退き料には、税金がかかります。
申告期限は、立ち退き料を受け取った翌年の3月15日までです。
なお、立ち退き料が一時所得として扱われる場合、50万円以下であれば税金はかかりません。
立ち退き料の税金に適用できる控除制度
以下に該当する場合は、控除が受けられます。
まとめ
飲食店経営者にとって、立ち退きを求められるのは負担になります。
特に長年同じ場所で経営していた場合、常連客が離れる可能性があるなど痛手が生じます。立ち退き料にはこうした事情が考慮されなければいけません。
適切な立ち退き料を受け取るためにぜひこの記事を参考にしてください。
ネクスパート法律事務所には、不動産案件を多数手掛けた経験のある弁護士が在籍しています。立ち退き料が少ないのではないかなど、お悩みの方はぜひご相談ください。[source: 1]