更新日:2026年3月4日 (水)
公開日:2022年4月4日 (月)
離婚協議書を公正証書にする方法と費用|作成手順と注意点
サマリー
協議離婚において取り決めた養育費や財産分与などの条件は、離婚協議書を公正証書にしておくことで将来の不払いやトラブルを防ぐ効果が期待できます。
しかし、公証役場での具体的な手続きの流れや、どの程度の公証人手数料・作成費用がかかるのか分からず不安な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、離婚協議書を公正証書にする手順や必要書類、手数料の計算方法、弁護士などへ相談・依頼する場合の費用相場について分かりやすく解説します。
離婚協議書と公正証書の違いと効力

離婚協議書とは、離婚に際して夫婦間で話し合って取り決めた条件を書面にまとめた合意文書です。
当事者同士で作成した離婚協議書は法律上「私文書」として扱われ、合意が存在した事実を証明する証拠となります。
しかし、私文書である離婚協議書だけでは、養育費や慰謝料などの支払いが滞った際に直ちに財産の差し押さえを行うことはできません。
未払い分を回収するためには、改めて裁判所に調停や訴訟を申し立てて確定判決などの債務名義を取得する必要があります。
私文書である離婚協議書と公文書である公正証書の違い
公正証書は、法律の実務経験を有する公証人が法令に従って作成する「公文書」です。公文書として高い証明力を持つため、後から「そのような約束はしていない」「勝手に署名・押印された」といった主張がなされるリスクを低減できます。
また、公正証書の原本は公証役場で原則20年間にわたり厳重に保管されます。
そのため、紛失や偽造、改ざんの恐れがなく、将来にわたる権利義務関係を安定して維持しやすい点も大きな違いです。
強制執行認諾約款による法的効力
離婚に関する公正証書を作成する最大のメリットは、「強制執行認諾約款」を記載できる点にあります。
これは、金銭の支払義務を負う側が「支払いを怠ったときは直ちに強制執行を受けても異議はありません」とあらかじめ承諾する文言です。
強制執行認諾約款が付された公正証書(執行証書)があれば、裁判を行わなくても給与や預貯金などの差し押さえ手続きを申し立てることが可能になります。
養育費のように将来にわたって長期間の分割払いが続く取り決めにおいては、支払いが滞った場合の権利保全としてこの約款を設けておくことが重要視されます。
公証役場と公証人の役割
公証人は、裁判官や検察官などを長く務めた法律実務家の中から法務大臣によって任命される公務員です。
中立的な第三者の立場から、当事者の真意や合意内容が法令に違反していないかを確認し、公正証書を作成する役割を担っています。
公証人が執務を行う公証役場は全国の主要都市に設置されています。
公正証書の作成は原則として公証役場に出向いて行うため、手続きを進める際は最寄りの公証役場の場所や受付体制を確認しておくとスムーズです。
離婚協議書を公正証書にする手順と必要書類
1. 夫婦間での合意内容の整理と事前準備
公正証書を作成する前段階として、まずは夫婦間で離婚条件について話し合い、合意した内容を離婚協議書の原案として整理しておくことが大切です。
公証役場では口頭の申し述立でも作成自体は可能とされていますが、当日に双方の認識の違いから意見が衝突したり、取り決めの漏れが生じたりするリスクがあります。
事前に合意事項を書面にまとめておくことで、当日の手続きを円滑に進めやすくなります。
2. 手続きに必要な書類・持ち物の準備
公証役場へ申し込む際には、本人確認や合意内容を証明するための書類が必要となります。
一般的に準備が求められる主な持ち物は次のとおりです。
- 夫婦双方の実印
- 印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
- 運転免許証やパスポートなどの本人確認書類(身分証明書)
- 戸籍謄本(離婚前の戸籍全部事項証明書など)
- 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本/財産分与で不動産を移転する場合)
- 公証人手数料(当日に現金で支払うのが一般的)
年金分割や特有財産の精算など、取り決める内容によって追加の疎明資料が求められる場合もあるため、事前に管轄の公証役場へ確認しておくと安心です。
3. 公証役場への申込みと当日の手続きの流れ
合意内容の整理と必要書類の準備が整ったら、公証役場へ連絡して作成の申込みを行います。大まかな手続きの流れは以下のようになります。
- 公証役場への事前相談・申込み(離婚協議書の文案や必要書類を提出)
- 公証人による公正証書案の作成および当事者による文案の事前確認
- 公証役場へ出向く日時の予約
- 予約当日に夫婦で公証役場へ出頭し、公証人の面前で内容を確認した上で署名・押印
- 公正証書の原本・正本・謄本の交付と手数料の支払い
公証役場の窓口は原則として平日の日中に限られているため、多忙などで本人が出向くことが難しい場合には、委任状を作成して代理人に手続きを委ねる方法も選択肢となります。
金銭の支払いに関する合意を含む場合は、将来の不払いに備えて強制執行を可能にする「強制執行認諾約款」を条項に盛り込むことが一般的です。
公正証書の作成にかかる公証人手数料と計算例
公証役場で離婚公正証書を作成する際には、法令で定められた公証人手数料を支払う必要があります。
この手数料は、記載する合意事項の「目的の価額」に応じて個別に計算される仕組みです。
離婚に伴う取り決めでは、財産分与の額、慰謝料の額、養育費の総額などがそれぞれ別個の事項として扱われます。
なお、定期金給付である養育費の目的価額は、最長で10年分(120か月分)を上限として計算されます。
公証人手数料令で定められている目的物の価額と手数料の基準は下表のとおりです。
| 目的物の価額 | 基本手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 23,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 29,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
公証人手数料の具体的な計算例
例として、「財産分与1,000万円」「解決金(慰謝料等)の取り決め」「養育費月額8万円(対象期間10年以上)」を取り決める手続のケースを見てみましょう。
まず、財産分与と慰謝料を合算した金額は1,200万円(1,000万円+200万円)となり、「1,000万円を超え3,000万円以下」の手数料区分に該当するため23,000円となります。
次に養育費は、10年分の上限で計算するため「8万円×12か月×10年=960万円」となり、「500万円を超え1,000万円以下」の手数料区分に該当して17,000円です。
これらを合算すると、公証人基本手数料の合計は40,000円(23,000円+17,000円)となります。
基本手数料以外に必要となる実費
公証人手数料のほかにも、公正証書の作成にあたってはいくつかの実費が発生します。
事前に用意しておく費用の目安として把握しておくと安心です。
- 正本・謄本の作成費用(用紙1枚につき250円)
- 強制執行の手続きに備える特別送達費用(約1,400円)
- 添付書類となる戸籍謄本の発行手数料(1通あたり450円)
公正証書の枚数や送達方法によって多少の増減はあるものの、公証役場へ直接納付する費用の総額は、基本手数料に数千円程度の実費を加えた金額になることが一般的です。
弁護士等にサポートを依頼する場合の費用目安と特徴

自分で作成する場合と弁護士等に依頼する場合の違い
離婚協議書を自分で作成して公証役場に持ち込む場合、公証人手数料などの実費のみで手続きが進められるため、費用を最小限に抑えられる点がメリットです。
しかし、取り決めた条項に漏れがないか、法的に問題のある表現になっていないかといった確認を自ら行う必要があります。
将来の紛争予防を重視し、適切な文案を整えたい場合は弁護士などへの相談が選択肢となります。
各士業の対応範囲と費用相場
| 相談・依頼先 | 費用の目安 | 主な対応範囲と特徴 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 10万〜20万円程度 | 条件交渉の代理、文案作成、離婚に関する法的相談全般 |
| 行政書士 | 4万〜10万円程度 | 離婚協議書・公正証書原案の作成サポート(交渉代理は不可) |
| 司法書士 | 5万〜15万円程度 | 不動産登記を伴う文案作成サポート(交渉代理は不可) |
弁護士は法律事務全般を取り扱うことができるため、公正証書の文案作成や手続きサポートに加え、相手方との条件交渉やトラブル時の対応まで一貫して依頼できます。
行政書士は合意内容に基づいた書類作成の支援を行い、司法書士は財産分与に伴う不動産の名義変更登記がある場合などに強みを発揮します。
ただし、行政書士や司法書士は相手方との交渉を代理することはできません。
公正証書の作成費用はどちらが負担すべきか
公証人手数料や弁護士等への依頼費用をどちらが負担すべきかについて、法律上の明確な決まりはありません。
実務上は、夫婦で折半して負担するケースや、公正証書化を希望した側が負担するケース、あるいは協議の中で一方の負担と定めるケースなどさまざまです。
費用の分担についても後々の行き違いを防ぐため、事前に夫婦間でしっかりと話し合って合意しておくことが大切です。
離婚協議書の作成に関する弁護士への相談
離婚協議を進める中で、財産分与や慰謝料、養育費などの条件について夫婦間で意見が対立し、話し合いが難航することがあります。
当事者同士では感情的な対立が生じやすく、合意に至らないまま時間だけが経過してしまうケースも少なくありません。
また、離婚協議書を作成すること自体には合意していても、公正証書にすることや強制執行認諾約款を付けることに相手方が難色を示すケースも見られます。
将来の支払義務に対する不安や不信感が背景にある場合、当事者間だけで説得を試みるのは困難を伴うことがあります。
対立がある場合の交渉と代理人による対応
夫婦間での話し合いが進まない場合や、相手方と直接顔を合わせて協議することが精神的な負担となる場合は、弁護士への相談が選択肢の一つとなります。
弁護士は法律業務全般を担うことができるため、離婚協議書の作成支援だけでなく、代理人として相手方との交渉窓口を務めることも可能です。
法的な根拠に基づいた客観的な主張を行うことで、冷静な話し合いによる合意形成を目指しやすくなります。
条項の不備や将来のトラブルを予防するための確認
離婚協議書に記載する条項は、将来にわたって効力を発揮する重要な取り決めです。
内容に曖昧な表現や記載漏れがあると、後々解釈をめぐって再び紛争が生じたり、強制執行の対象として認められなかったりするリスクがあります。
条項の不備や将来の解釈の食い違いを防ぐためには、法的な観点から書面の内容を精査することが重要です。
特に養育費の支払期間や金額、面会交流のルール、将来の事情変更に関する定めなど、長期的な影響がある項目については慎重な検討が求められます。
作成前に弁護士へ相談し、法的助言を活用することで、将来的なトラブルの防止に役立てることができます。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。