景表法の原則 ~消費者の認識と実際との不一致の有無
効果が一日持続します(強調表示)
効果には個人差があります。(打消表示)
今なら7日分が無料(強調表示)
*初めて購入の方に限ります。(打消表示)
景表法では、実際の商品・サービスよりも著しく優良・有利と誤認されるような表示をすると不当表示となり(いわゆる優良誤認・有利誤認表示。景表法5条)、措置命令、指導、課徴金納付命令の対象となります。
不当表示にあたるかどうかは、
- 一般消費者の認識
- 実際の商品・サービス
この2つを比べて不一致・ズレがないかどうか、という観点で判断されます。
打消し表示の必要性 ~強調表示と対の関係
事業者のみなさまは、広告効果を上げるために、品質や価格などの訴求したいポイントを強調して表示されるかと思います(いわゆる「強調表示」)。
もっとも、ここで立ち戻ってほしいのが、上記の「景表法の原則」です。
強調表示は、それを見た一般消費者としては、商品・サービスの全てについて無条件・無制約に当てはまるものと受け止めてしまうため、適切な打消し表示をしなければ、消費者の認識(①)と実際の商品・サービス(②)との間にズレが生じてしまう場合があります。
上記の例でいえば、効果が一日持続しますという表現は、どんな人でもどんな条件でもそうだというのであれば嘘になり、消費者の認識と実際の商品・サービスとの間にズレが生じてしまうという事態がありえます。
同様に、今なら7日分が無料というだけでは、リピーターもそれに含まれそうですが、初回の人だけなのだとすれば、消費者の認識と実際の商品・サービスとの間にズレが生じてしまうという事態がありえます。
そこで、いわゆる「打消し表示」として、強調表示からは消費者が通常予測できない事項であって、商品・サービスの選択にあたって重要な事項を補足説明する必要があります。
他方で、なんでもかんでも打消し表示をしていればよいというわけではなく、打消し表示を行うにあたっては、以下で説明するルールに従ったものである必要があります。このルールに沿わないものは、結局、上記の「景表法の原則」に照らし不当表示とされてしまいます。
強調表示自体のルール ~打消し表現の前提
まず、大前提として、
強調表示がサービスの実際を反映していること
が不可欠です。
そもそも強調表現がサービスの実際を反映していないのであれば、一般消費者の認識(①)と実際の商品・サービス(②)に不一致があるのは当然のことです。
この場合どのような打消し表示を施したとしても、①と②の不一致を無くすことはできないため、不当表示との評価をされ、優良誤認表示・有利誤認表示等となり、措置命令や課徴金の対象となりえます。
上記の例では、一日効果が持続するというのが全然嘘だというのであれば、強調表示がサービスの実際を反映しているとはいえません。また、今なら7日分が無料と言いつつ、実は他にも料金がかかるということであれば、実際を反映しているとはいえません。
このような場合は打ち消し表示の問題以前に、強調表示自体に問題があるということになります。
打消し表示のルール① 表示方法が適切であること ~明瞭な記載
ルールの内容
形式的に打消し表示があったとしても、消費者が容易に気がつくことができないようなものである場合、適切な表示方法とはいえません。
消費者が打消し表示に気付くことができるか、認識できるかどうかという観点から、具体的には以下のような要素を考慮して、表示方法の適切性が判断されます。
考慮される要素
- 打消し表示の文字の大きさ
- 強調表示の文字の大きさと打消し表示の文字の大きさのバランス
- 打消し表示の配置箇所
- 強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れていないか(WEB広告)
- 打消し表示が含まれる画面の表示時間(動画広告)
- 音声等による表示の方法(動画広告)
- 強調表示と打消し表示が別の画面に表示されていないか(動画広告)
- 複数の場面で内容の異なる複数の強調表現と打消し表現が登場しないか(動画広告)
打消し表示のルール② 表示内容が適切であること ~消費者に理解できること
たとえ打消し表現が明瞭に記載されていたとしても、それを消費者が理解できなければ、やはり上の「景表法の原則」に照らし、認識と実際とに不一致を生じることになります。
消費者が打消し表示の内容を理解できるか、という観点から表示内容の適切性が判断され、具体的には以下のような場合には不当表示・NG表示となりえます。
- 消費者の理解できない学術用語・専門用語が使われている場合
- 専門的な試験方法が記載されている場合
その他「景表法の原則」から導かれる不当表示
以上に述べたところは、景表法における打消し表示の考え方の大枠ですが、その他にも、不当表示となる打消し表示はあります。
たとえば、
強調表示と打消し表示が矛盾する場合は、
消費者としてはどちらを信用してよいかわからず、結局自らに有利な効果があると誤認するおそれがあります。
平成28年4月から景表法違反に課徴金制度の運用が開始され、景表法の優良誤認表示と有利誤認表示について、違反表示期間の売上の3%が課徴金命令として納付が命じられるようになっています。
事業者の皆様としては、不適切な打消し表示により一般消費者の誤解を招かないように、事前の広告チェック・検証の必要性は高まっています。
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