リンク先の体験談サイトも広告の一部?景品表示法・薬機法における「広告の一体性」の罠

自社のランディングページ(LP)さえ法令に準拠していれば、広告として問題ない。

——本当にそうでしょうか?

「お客様のリアルな声はこちら!」とリンクを貼った先の口コミサイト。

「人気ブロガー〇〇さんの愛用レビュー」として紹介した外部ブログ。

実は、これらのリンク先のコンテンツも、あなたの会社の「広告の一部」とみなされ、法規制の対象となる可能性があります。

この論点の鍵を握るのが、景品表示法や薬機法における「広告の一体性」という考え方です。

今回は、事業者が意図せず法令違反を犯すリスクが潜む「広告の一体性」について、特に外部サイトとの連携に焦点を当て、その判断基準と実務上の注意点を解説します。

目次

「広告の一体性」の基本原則:消費者の“認識の流れ”がすべて

広告が景品表示法や薬機法の規制に違反するかどうかは、広告の一部分を切り取って判断されるわけではありません。

原則として、「表示全体から一般消費者が受ける印象・認識」が基準となります。

ここでいう「表示全体」とは、一枚のLPや一つのバナー広告に閉じた話ではありません。消費者が商品を認知し、興味を持ち、購入に至るまでの一連の流れで触れる情報全体を指します。

例えば、以下のような複数の媒体は、消費者の認識の流れの中で一体のものと判断されれば、全体で一つの広告として扱われるのです。

  • バナー広告 → ランディングページ(LP)
  • LP → リンク先の体験談・口コミサイト
  • インフルエンサーのSNS投稿 → リンク先の販売サイト
  • テレビCM → QRコードで誘導した先のキャンペーンサイト

行政や裁判所は、「その広告に接した一般消費者が、全体としてどのような認識を持つか」という視点で評価します。事業者が「リンク先は別サイトであり、当社の広告ではない」と主張しても、消費者の目から見て、事業者が一体となって商品の購入を促していると見えれば、その主張は通用しないのです。

リンク先はどこまで「広告」と見なされるのか?

では、どのような場合に、リンク先の外部サイトが自社の広告と一体だと判断されるのでしょうか。

明確な線引きは難しいですが、実務や裁判例では、主に以下の要素が総合的に考慮されます。

広告からリンク先への誘導の態様

LPなどから外部サイトへ、どのようにリンクが設定されているかが重要なポイントです。

  • 一体性が認められやすい例:
    • 「驚きの実績!お客様の喜びの声はこちら」といった文言とともに、特定の体験談サイトへ直接リンクしている。
    • 商品の購入ボタンのすぐ近くに、アフィリエイトサイトのレビュー記事へのリンクが貼られている。

このように、事業者が意図的に、かつ積極的に消費者を特定の外部サイトへ誘導している場合、一体性は強く認められる傾向にあります。

リンク先サイトの表示内容や構成

リンク先サイトの内容が、あたかも事業者の広告の一部であるかのような構成になっている場合も、一体と見なされるリスクが高まります。

  • 一体性が認められやすい例:
    • リンク先の体験談サイトのデザイン(色使いやフォント)が、事業者のLPと酷似している。
    • 体験談の中で、事業者のLPで訴求している内容が繰り返し強調されている。
    • アフィリエイトサイトでありながら、客観的なレビューを装い、商品の効果を過剰に謳っている。

消費者から見た一体性

最終的には、消費者にとって、それらの情報源が「一連の広告宣伝活動」として認識されるかどうかが決め手となります。

裁判例においても、「広告の全体から一般人が受ける印象、認識が基準とされるべき」とされており、事業者の主観的な区分けは重要視されません。

特に注意すべき健康食品・化粧品広告(薬機法)

健康食品や化粧品などの広告を規制する薬機法では、この「広告の一体性」がより厳格に解釈される傾向があります。

特に問題となりやすいのが、承認されていない医薬品的な効果効能をうたう体験談の扱いです。

薬機法では、個人の感想であったとしても、疾病の治療・予防や身体機能の増強などを暗示・保証するような体験談を広告に掲載することは、厳しく禁止されています。

そこで、一部の事業者は、自社のLPでは認められた範囲の表現に留め、リンクを貼った外部の口コミサイトやアフィリエイトサイトで、薬機法違反となるような過激な体験談(例:「このサプリを飲んだら長年の持病が治りました!」「シミが消えて10歳若返りました!」)を掲載させるという手法を取ることがあります。

しかし、これは「広告の一体性」の観点から見れば、典型的な法令違反の手法です。

消費者がLPからその口コミサイトへスムーズに移動でき、両者が一体となって商品の購入を促していると評価されれば、その口コミサイトの違法な体験談も、事業者の広告表現の一部とみなされ、事業者がその責任を問われることになります。

事業者が講じるべきリスク管理策

では、事業者はどのようにして「広告の一体性」に関するリスクを管理すればよいのでしょうか。

  • すべての外部リンクを棚卸しする

自社のLPや広告から、どこへリンクが設定されているかをすべてリストアップし、リンク先の内容を精査します。特に、体験談やレビューを紹介するサイトは重点的にチェックが必要です。

  • アフィリエイター等への広告ガイドラインを徹底する

アフィリエイトプログラムを利用している場合、アフィリエイターに対して広告表示に関する明確なガイドライン(薬機法や景品表示法で禁止される表現の具体例など)を提示し、契約でその遵守を義務付けることが不可欠です。

  • 定期的なモニタリングを行う

リンク先サイトの内容は、いつの間にか変更されている可能性があります。一度確認して終わりではなく、定期的にリンク先の内容をパトロールし、問題のある表現がないかを確認する体制を構築しましょう。

  • 「広告であること」を明確にする(ステマ規制対応)

インフルエンサーやアフィリエイターに依頼した投稿には、「#広告」「#PR」といった表示を、消費者が明確に認識できる方法で付記させることが法律で義務付けられています。この明示を怠ると、それ自体が法令違反となります。

まとめ

デジタルマーケティングが主流となった現代において、「広告」の範囲は、自社が直接管理するウェブサイトだけに留まりません。リンクで繋がれた先にある口コミサイト、レビューブログ、SNS投稿まで含めた全体が評価の対象となります。

事業者は、この「広告の一体性」の原則を深く理解し、消費者に誤解を与えない、誠実で透明性の高い情報発信を心がける必要があります。

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