製薬会社必見!医療用医薬品プロモーションの法規制完全ガイド

製薬会社にとって医療用医薬品のプロモーションは、企業成長と国民健康への貢献を実現する重要な活動です。
しかし、薬機法による厳格な規制があり、一歩間違えれば重大な法的リスクを招きます。
特に一般人向け広告は原則禁止されており、医薬関係者向けプロモーションにも多くの制約があります。
本記事では、製薬会社が適法にプロモーション活動を行うための法的要件と実務上の注意点を、具体例を交えて詳しく解説します。
コンプライアンス体制の構築にお役立てください。

目次

医療用医薬品プロモーションの法的原則

ここでは、医療用医薬品プロモーションの基本的な法的原則について説明します。

医療用医薬品とは

医療用医薬品とは、医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品を指します。
その強力な作用と副作用のリスクから、その選択と使用は医師や薬剤師といった専門家の管理下に置かれるべきものとされています。

一般人向け広告の禁止

この専門家による管理という原則こそが、広告規制の根幹です。
医薬品等適正広告基準では、以下のように明確に定められています。

医師若しくは歯科医師が自ら使用し、又はこれらの者の処方せん若しくは指示によって使用することを目的として供給される医薬品及び再生医療等製品については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告を行ってはならない。

(出典:医薬品等適正広告基準第4の5)

したがって、一般人を対象に医療用医薬品の広告を行う行為は薬機法に反する重大な違反となります。

広告の定義と規制対象外となる情報提供活動

ここでは、法的に広告と判断される要件と、規制対象外となる活動について説明します。

広告の3要件

どのような活動が広告と見なされるのでしょうか。 全ての情報発信が規制対象となるわけではありません。

法的に広告と判断されるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 顧客を誘引する意図(誘引性)が明確であること
  2. 特定の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態にあること

規制対象外の活動

この定義に基づけば、これらの要件を満たさない学術目的や報道目的の情報提供は、広告には該当せず、適法に行えます。

  • 学会発表・学術論文

新薬の研究開発データや臨床試験の結果などを、医学・薬学系の学会や学術誌で発表する行為は、主目的が学術情報の共有であり、広告の3要件を満たさないため、規制の対象外です。

  • プレスリリース

報道機関向けに、新薬の承認取得や発売といった客観的な事実を情報提供するプレスリリースも、原則として広告には該当しません。

留意点

ただし、製薬会社が費用を負担して記事形式で掲載させる記事広告は、広告と見なされます
また、プレスリリースの内容が特定の医療機関や薬局を介した販売に強く結びつくなど、実質的に顧客を誘引する内容と判断された場合、広告と見なされるリスクがあるため、その表現には細心の注意が必要です。

医薬関係者を対象とした適法なプロモーション手法

ここでは、医薬関係者を対象とした適法なプロモーション手法について説明します。
一般人向け広告は禁止されていますが、本来の対象である医薬関係者へのプロモーションは、適切な方法であれば可能です。

専門媒体への広告

医事・薬事に関する記事を掲載する、医師や薬剤師向けの新聞・雑誌への広告掲載が可能です。

情報提供活動

以下の活動が適法とされています。

  • MR(医薬情報担当者)による情報提供活動
  • 医薬関係者のみを対象としたダイレクトメール
  • 文献及び説明書等の印刷物

ただし、カレンダーやポスターなど、医薬関係者以外の一般人の目に触れる可能性が高いものは、広告媒体として不適切とされています。

専門家向け説明会

主として医薬関係者が参集する学会、講演会、説明会等での情報提供が可能です。

専門家向けプロモーションで遵守すべき法令

ここでは、医薬関係者向けプロモーションで遵守すべき法令について説明します。

薬機法第66条の概要

対象が専門家であっても、プロモーションの内容は無制限ではありません。
薬機法第66条は、すべての広告活動に適用されるルールです。

何人も、医薬品(中略)の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

(出典:薬機法第66条

この条文に基づき、医薬関係者向けプロモーションにおいても、以下の点は厳格に遵守しなければなりません。

効能効果・安全性の表現

プロモーション内容は、必ず厚生労働省によって承認された効能効果、用法用量の範囲内でなければなりません。
承認範囲を超える効果を示唆したり、安全性について誤解を招く表現を用いたりすることは許されません。

特に、以下のような最大級・絶対的な表現は表示できません。

  • 最も安全
  • 画期的な効果
  • 副作用の心配なし

比較広告の制限

製品同士の比較広告を行う場合は、自社製品の範囲で、その対照製品の名称を明示する場合に限定し、明示的、暗示的を問わず他社製品との比較広告は行ってはいけません。
この場合でも説明不足にならないよう十分に注意する必要があります。

未承認医薬品の取り扱い

承認前の医薬品や、承認された効能効果以外の目的での使用(適応外使用)を推奨・プロモーションすることは、薬機法で厳しく禁じられている行為の1つです。

まとめ

医療用医薬品のプロモーションは、薬機法をはじめとする法規制を深く理解し、遵守することが大前提です。
一般人への広告が厳禁であることはもちろん、対象を専門家に限定した場合でも、その内容は客観的かつ公正でなければなりません。

最も安全かつ確実な方法は、プロモーションの対象を厳格に医師・薬剤師等の医薬関係者に限定し、その内容も承認された範囲内で、かつ誇張のないものとすることです。

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