ここでは、厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「ガイドライン」)が、どのような行為や人に適用されるのか、また国内外での適用について解説します。
オンライン診療は便利な反面、適切なルールに従って行われなければなりません。 ガイドラインはそのための重要な道しるべですが、「どんな場合にこのガイドラインが関係するの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、ガイドラインの「適用範囲」に焦点を当て、その対象を明確にしていきます。
ガイドラインが対象とする「行為」は?
ガイドラインが対象とする医療関連行為は、大きく分けて2つあります。
対象となる行為:「オンライン診療」と「オンライン受診勧奨」
オンライン診療
医師が、情報通信機器を通して、患者さんの診察・診断を行い、その結果を伝えたり、薬を処方したりする診療行為をリアルタイムで行うものです。
医師による医学的判断(診断や治療方針の決定など)を伴います。
オンライン受診勧奨
医師が、情報通信機器を通して患者さんの診察を行い、医療機関への受診を勧める行為をリアルタイムで行うものです。
患者さんの症状などから疑われる疾患名を挙げ、受診すべき適切な診療科を選択するなど、最低限の医学的判断を伴います。
ただし、具体的な疾患名を断定したり、処方を行ったりすることはできません。これらは「オンライン診療」に分類されます。
これら2つの行為は、医師による医学的判断が介在するため、誤った情報が伝わると患者さんにリスクが生じる可能性があることから、ガイドラインの適用対象とされています。
対象とならない行為:「遠隔健康医療相談」
遠隔健康医療相談
医師または医師以外の者(看護師など)が、情報通信機器を用いて相談に応じますが、一般的な医学情報の提供や一般的な受診勧奨に留まり、相談者個人の状態を踏まえた具体的な診断などの医学的判断は伴いません。
例えば、「発疹がある場合は皮膚科を受診してください」といった一般的なアドバイスはこれに該当します。
医師が行う場合でも、患者個人の状態に応じた診断等を行わない点で「オンライン診療」や「オンライン受診勧奨」と区別され、ガイドラインの直接の適用対象外です。 (ただし、遠隔健康医療相談であっても、結果的に診断などを行わないよう注意が必要です。)
保険診療・自由診療どちらも対象
ガイドラインは、公的医療保険が適用される保険診療だけでなく、全額自己負担となる自由診療におけるオンライン診療・オンライン受診勧奨にも適用されます。
ガイドラインが対象とする「人」は?
ガイドラインは、主に以下の人々が遵守すべき事項を定めています。
- 医師
オンライン診療やオンライン受診勧奨を実施する医師は、ガイドラインに沿って診療を行う責任があります。
- 患者
オンライン診療等を受ける患者さんも、ガイドラインの趣旨を理解し、医師に協力することが求められます。
また、オンライン診療を提供する医療機関や、オンライン診療に使われる情報通信システムの提供事業者なども、ガイドラインの内容(特にセキュリティ関連)を理解し、適切な体制を整備する必要があります。
海外とのオンライン診療への適用は?
グローバル化に伴い、国境を越えたオンライン診療のニーズも考えられます。
ガイドラインのQ&A(Q28)によると、日本国内にいる医師が、海外にいる患者さんに対してオンライン診療やオンライン受診勧奨を行う場合には、日本の医師法や医療法、そして本ガイドラインが適用されます。
この場合、医師は日本の法律やガイドラインを遵守すると同時に、患者さんが所在する国の医療関連法規等も遵守する必要がある点に注意が必要です。
逆に、海外にいる医師が日本国内の患者さんをオンラインで診療する場合については、Q&Aには明確な記載がありませんが、一般的に日本国内での医療行為は日本の法律(医師法、医療法など)が適用されると考えられるため、ガイドラインの趣旨を踏まえた対応が必要となるでしょう。
まとめ
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、主に以下の範囲に適用されます。
- 行為
医師によるリアルタイムの「オンライン診療」および「オンライン受診勧奨」(保険診療・自由診療を問わない)。「遠隔健康医療相談」は対象外。 - 人
主に診療を行う医師と、それを受ける患者。医療機関やシステム提供事業者も関連。 - 場所
日本国内の医師が海外の患者を診る場合も適用(相手国の法律も遵守要)。
オンライン診療に関わる際は、ご自身の状況がガイドラインの適用対象となるかを確認し、そのルールを遵守することが、安全で適切な医療の提供・享受につながります。 詳細や具体的なケースについては、ガイドライン本文やQ&Aをご参照いただくか、専門家にご相談ください。