オンライン診療で利用できる通信手段や、その際の注意点について解説します。
情報通信技術の発達により、自宅や職場などから医師の診察を受けられる「オンライン診療」が普及しつつあります。 場所を選ばず受診できる利便性がある一方、「どんな方法ならOKなの?」「電話だけでも大丈夫?」「普段使っているZoomやLINEは使える?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
オンライン診療は、厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」以下「指針」)とその「Q&A」に沿って、適切に行う必要があります。 本記事では、これらの公式な情報に基づき、オンライン診療の正しい実施方法と注意点を分かりやすく説明します。
オンライン診療とは?
まず、「オンライン診療」が何を指すのか確認しましょう。
指針によると、オンライン診療は「医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」と定義されています。
重要なのは、医師による「診察」「診断」「処方」といった診療行為を、リアルタイムのやり取りで行う点です。 単なる健康相談や一般的な受診勧奨(「遠隔健康医療相談」)とは区別されます。
電話のみでのオンライン診療は?
では、音声通話のみ、つまり電話だけでオンライン診療を受けることはできるのでしょうか。
結論から言うと、指針のQ&A(Q16)によれば、電話のみでのオンライン診療は原則として推奨されていません。
オンライン診療は、対面診療に代替し得る程度の情報(視覚・聴覚情報)を得る必要があるためです。電話(音声のみ)では、患者さんの表情、顔色、患部の状態といった視覚的な情報が得られません。
ただし、例外的に、医師が患者さんの既往歴や状態を十分に把握しており、視覚情報がなくても必要な診察が可能だと医学的に判断した場合には、電話のみでのオンライン診療が許容されることもあります。 しかし、これはあくまで医師の慎重な判断に基づく例外的なケースであり、基本的には映像と音声によるコミュニケーションが必要であると理解しておくべきです。
ZoomやLINEなどは使えるの?
次に、Zoom、LINE、Skypeといった、いわゆる「汎用サービス」を使ってオンライン診療を受けることは可能でしょうか。
これについて指針のQ&A(Q17)では、特定のアプリ名を挙げて可否を判断するのではなく、使用するツールが指針で定められたセキュリティ要件を満たしているかが重要であるとしています。
具体的には、医療機関は、オンライン診療に用いるシステムについて、以下の点などを確認し、対策を講じる責任があります。
- 通信の暗号化 第三者による盗聴を防ぐため、通信が適切に暗号化されていること。
- アクセス管理 不正アクセスを防ぐため、ID/パスワード認証、多要素認証などが導入されていること。
- 情報漏洩対策 患者さんの個人情報や医療情報が漏洩しないような対策が講じられていること。
つまり、ZoomやLINEといった汎用サービスであっても、医療機関がこれらのセキュリティ要件を満たしていることを確認し、適切な設定・運用を行えば、オンライン診療に使用することは可能です。 逆に、セキュリティが確保できないと判断されるツールは使用すべきではありません。
また、患者さん側でも、医療機関から指定されたツールを使用し、安全な通信環境(例:プライバシーが確保できる静かな場所、安全なWi-Fi環境)で利用すること、送られてきた招待URLなどを安易に第三者と共有しないことなどが求められます。
オンライン診療の重要な注意点
オンライン診療を安全かつ有効に活用するためには、以下の点に注意が必要です。
リアルタイムの映像・音声が基本
電話のみは例外。原則として映像と音声でやり取りできる方法を選びましょう。
セキュリティの確保
医療機関は安全なシステムを選定・運用する責任があります。患者さんも安全な環境で利用しましょう。
医師の判断の重要性
オンライン診療で十分な情報が得られない場合、医師は対面診療への切り替えを判断します。医師の指示に従いましょう。
対面診療との組み合わせ
オンライン診療は万能ではありません。指針では対面診療と適切に組み合わせることが基本とされています。
患者の同意と理解
オンライン診療の利点、欠点、利用するシステムのリスクなどを理解した上で、同意が必要です。
本人確認
原則として、医師・患者双方で本人確認を行います。
まとめ
オンライン診療は、利便性が高い一方で、適切な方法で行わなければ十分な診察ができなかったり、情報漏洩のリスクが生じたりする可能性があります。
電話のみでのオンライン診療は原則不可。
ZoomやLINEなどの汎用ツールも利用可能だが、医療機関によるセキュリティ確保が前提。
オンライン診療を受ける際は、必ず医療機関がどのような通信手段を用い、どのようなセキュリティ対策を講じているかを確認しましょう。 そして、患者さん自身もプライバシーとセキュリティに配慮し、医師と協力して、安全で質の高い医療を受けられるように努めることが大切です。