二重価格表示について

「二重価格表示」という言葉を聞いたことはありますか?

通常価格10,000円のところ、期間限定5,000円で販売!!

と、よく見るあれです。

消費者庁が出している『価格表示ガイドライン』では以下のとおり定義づけられています。

事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(以下では、「比較対照格」といいます。)を併記して表示するもの

価格表示ガイドライン |消費者庁

一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進に資する面があることから、比較対照価格の表示内容が適正な場合は問題ありません。

しかし、適正な表示が行われていない場合には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えるので、不当表示として違法となるおそれがあります。

比較対照価格(上の例だと「通常価格10,000円」の部分)には、どのようなものがあるでしょうか?

主な比較対照価格としては、次の5つがあります。

  1. 過去の販売価格
  2. 将来の販売価格
  3. 希望小売価格
  4. 競争事業者の販売価格
  5. 他の顧客向けの販売価格

今回は、これら5つの比較対照価格はどのようなものか、これらを表示するのが禁止される場合があるのはなぜなのかを、『価格表示ガイドライン』に沿って簡単に説明します。

目次

①過去の販売価格

需要喚起、在庫処分等の目的で行われる期間限定のセールで、販売価格を引き下げる場合に、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがあります。

「当店通常価格」、「セール前価格」などとよく表示されていますね。

一般的によく見る表示ですが、なぜ禁止される場合があるのでしょうか?

例えば、

紳士スーツ 当店通常価格58,000円の品 セール期間中38,000円

と表示していたとします。

これだけなら、

「2万円もお得だ!今のうちに買おう!!」

となる人も多いでしょう。

ですが、実際には、この商品と同一の商品について、58,000円で販売していた期間が2日間だけだったとしたら、どうでしょうか?

「58,000円の商品が2万円もお得になっていたから買ったのに、もともと38,000円なら買わなかった!!」

と怒る人もいるのではないでしょうか。

閉店セールを永遠にしていて閉店しない店、見たことありませんか?

あれも同じです。

比較対照価格がどのような価格であるか具体的に表示されていないと、同一の商品がその価格でセール前の相当期間販売されていて、セール期間中だから販売価格が当該値下げ分だけ安くなっていると考えますよね。

そのため、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行う場合には、同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえない価格を比較対照価格に用いるときは、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を正確に表示しない限り、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

②将来の販売価格

「将来の販売価格」に少し違和感を覚える人がいるかもしれませんが、簡単に言えば、セール期間経過後の価格のことです。

セール期間経過後も販売価格を引き上げる予定がないにもかかわらず、または、セール期間経過後ごく短期間しか表示された価格で販売しないにもかかわらず、セール期間経過後の将来の販売価格を比較対照価格に用いることは、禁止されています。

婦人ブラウス お試し価格4,800円 ○月○日以降は6,000円になります

と表示していましたが、

実際には、この商品と同一の商品について、○月○日以降も4,800円で販売していた場合などが例に挙げられます。

表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないとき等)には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

将来の価格設定は、将来の不確定な需給状況等に応じて変動するので、将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合(需給状況等が変化しても表示価格で販売することとしている場合など)以外において、将来の販売価格を用いた二重価格表示を行うことは適切でないと考えられています。

③希望小売価格

製造業者等が、小売業者に供給する商品について希望小売価格を設定している場合に、小売業者は、この希望小売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行うことがあります。

希望小売価格よりも高い価格を希望小売価格としたり、希望小売価格が設定されていない場合(希望小売価格が撤廃されている場合も含みます。)に任意の価格を希望小売価格として、比較対照価格に用いることなどは、禁止されています。

例えば、メーカーは希望小売価格を設定していないにもかかわらず、

メーカー希望小売価格3,000円 通常価格1,500円

というような表示がされていた場合がこれにあたります。

希望小売価格について、一般消費者は、通常、小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考情報の一つとしています。

製造業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を、希望小売価格と称して比較対照価格に用いるときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

④競争事業者の販売価格

自社の販売価格の安さを強調するために、市価や特定の競争事業者の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがあります。

もっとも、安さをアピールするあまり、最近のではない競争事業者の販売価格を比較対照価格として用いると、一般消費者に、自社の販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

競争事業者の最近時の販売価格を正確に調査するとともに、特定の競争事業者の販売価格と比較する場合には、当該競争事業者の名称を明示する必要があります。

⑤他の顧客向けの販売価格

同一の商品であっても、顧客の条件(顧客の購入時期も含みます。)に応じて、販売価格に差が設けられている場合に、特定の条件を満たす顧客向けの販売価格について、その安さを強調するために、他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われることがあります。

例えば次の2つがこれにあたります。

会員制の販売方法で、非会員価格を比較対照価格に用いる場合

会員様は1,500円で購入できます(非会員価格5,000円)

需要のピーク時における販売価格を比較対照価格に用いる場合

宿泊標準料金1人当たり40,000円のところ、○月○日~○日に限り20,000円

顧客の条件によって販売価格に差があると、それぞれの販売価格が適用される顧客の条件の内容や価格差を比較して、その商品を買うかどうか考えますよね。

そのため、それぞれの販売価格が適用される顧客の条件の内容等について、実際と異なる表示を行ったり、あいまいな表示を行うときには、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあります。

先程の例なら、

  • 容易に会員になることができて、非会員価格で購入する人がほとんどいない場合
  • 通常時と比べて高額で、期間が限定されているピーク時の料金を「標準料金」などとして表示する場合

が、不当表示にあたるおそれがあります。

今回は、二重価格表示について、大まかな概要を説明しました。

これまで説明した内容は、消費者庁が公表している『価格表示ガイドライン』に掲載されています。

さいごに

ここでは、景表法によって禁止されている有利誤認表示の一類型である二重価格表示について見てきました。

事業者にとって、提供する商品・サービスがお買い得であることをアピールし、顧客の購買意欲を刺激することは重要です。しかし、これが行き過ぎてしまい、顧客に誤解を与えるようなものとなってしまう場合には、一定のペナルティや企業イメージの毀損を受けることがあります。

そのため、販売戦略や販売計画を立てる場合には、景表法に配慮する必要があります。

「このような表現は大丈夫かな?」「この商品をこうやって訴求したいけど、景表法に違反しないかな?」などのご不安がございましたら、是非ともご相談ください。

ぜひ一度お問い合わせください。

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