ここでは、厚生労働省の「医療機関ネットパトロール事業」と医療広告ガイドライン遵守の重要性を説明します。
インターネット上の医療広告は重要な情報源ですが、不適切なものもあり、消費者トラブルも発生しています。 そのため、厚生労働省はウェブサイト上の医療広告を監視・適正化する本事業を行っています。医療機関や広告関係者は、事業内容とガイドラインへの理解が不可欠です。
医療機関ネットパトロール事業とは?
不適切な医療広告から消費者を守り、広告の適正化を推進する事業です。
事業開始の背景
医療機関ウェブサイト、特に美容医療に関する消費者トラブルの継続や、消費者委員会からの建議などを背景に、平成29年度から開始されました。平成30年の医療法改正も踏まえ、監視指導体制が強化されています。
事業の仕組み
主な流れは以下のとおりです。
委託事業者がウェブサイトを監視(一般からの通報も受付)。
違反が見つかれば医療機関に規制内容を伝え、自主改善を要請。
改善されない場合、所管自治体へ情報提供(自治体が指導等)。
自治体への情報提供後の改善状況を調査。
厚労省、委託事業者、自治体が連携して監視・指導にあたります。
ネットパトロールで見つかる主な違反例
令和5年度は1サイトあたり平均約5.8箇所の違反が確認されました。
最多は「広告が可能とされていない事項の広告」でした。これは、未承認医薬品の広告や、限定解除要件(リスク・副作用、費用等の明記)を満たさない自由診療の広告などが該当します。
次いで「誇大な広告」、「誤認させるおそれがある治療前後の写真等」、「他院との比較優良広告」、「虚偽広告」、「患者等の体験談」なども多く見られました。
具体的には以下のような表現が違反となる可能性があります。
- 根拠なく「最高の〇〇」などと記載(誇大広告)
- 「〇〇治療なら当院がNo.1」などと他院と比較(比較優良広告)
- 都合の良い部分を強調した治療前後の写真(誤認させるおそれ)
- 「痛みもなく快適!」などの患者体験談(体験談の禁止)
- 自由診療のリスク等を説明せず費用のみ強調(限定解除要件不備)
特に美容医療や歯科分野での違反が多く報告されています。
なぜガイドライン遵守が重要なのか
ガイドライン遵守は、以下の点で重要です。
法的リスク回避
違反は医療法違反となり、指導、命令、罰則の対象になりえます。ネットパトロールから自治体へ通知され、改善指導等に至るケースも多数あります。
信頼確保
不適切な広告はトラブルの原因です。誠実で正確な情報提供が、医療機関への信頼につながります。
医療の質と倫理
過度な営利追求や不確かな広告は医療の品位を損ねます。適切な情報提供は医療提供者の倫理的責任です。
医療機関だけでなく、広告代理店等もガイドライン遵守の責任があります。
まとめ
厚労省ネットパトロール事業は、不適切な医療広告を是正する重要な取り組みです。 ウェブサイトでの情報発信は、医療広告ガイドラインに沿う必要があります。
特に自由診療や美容・歯科分野では注意が必要です。 意図せず違反することのないよう、広告作成・公開には細心の注意を払い、不安な点や解釈に迷う場合は、専門家への相談をおすすめします。