薬機法と美容・健康関連機器
薬機法第2条4項では医療機器を以下のように定義しており、医療機器ではない美容・健康関連機器は、雑貨として扱われます。
薬機法(定義)
第2条第4項 この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
薬機法
薬機法68条では、承認・認証を受けていない未承認の医療機器等について、その名称や製造方法、性能等に関する広告を禁止していますので、未承認の機器等を広告すれば、薬機法68条違反となります。
薬機法(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第68条 何人も、第14条第1項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬機法
美顔器について、東京都が開催する講習会では、身体の構造・機能に影響を与えないもので、単に美容(洗顔や化粧品を塗る動作の代用程度)を目的とする場合は、医療機器に該当せず、化粧品に認められている効能と同程度の範囲で、事実に基づくものであれば、美顔器の効果として述べてもよい、ということになっています。
化粧品に認められている効能より抜粋
・(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
化粧品の効能の範囲の改正について 平成23年7月21日 薬食発0721第1号
・肌を整える。
・肌のキメを整える。
・肌荒れを防ぐ。
・肌をひきしめる。
・皮膚にうるおいを与える。
・皮膚の水分、油分を補い保つ。
・皮膚の柔軟性を保つ。
・皮膚を保護する。
・皮膚の乾燥を防ぐ。
・肌を柔らげる。
・肌にはりを与える。
・肌にツヤを与える。
・肌を滑らかにする。
一般社団法人日本ホームヘルス機器協会「家庭向け医療機器等適正広告・表示ガイドⅣ」では、以下のような例が示されていますが、いずれも肌質の改善と誤解されないように注意する必要があります。
【事実であれば広告可能な例】
- (物理的に)古い角質をおとす。
- 毛穴の汚れを洗浄する。
- 毛穴の皮脂を取る。
- 肌をしっとりさせる。
- みずみずしい見える肌に
【不適切な広告例】
- 肌のシワ構造を改善し、10年前のお肌を作ります。
- お肌の老化防止をはかってください。
- 皮膚のシミを薄くする能力があります。
- お肌本来の白さによみがえらせます。
- 医療機器の機能を応用して設計しているので、効果は抜群、安全です。
- 細胞内部に温熱効果をあたえて血行をよくして新陳代謝を高めます。
- お肌の細胞が生まれ変わろうとする力を高めます。
- お肌の芯から活性化させます。
- 余分な脂肪の燃焼を促進することで、お顔のシェイプアップをサポートし、お肌にハリを与えます。
景表法と美容・健康関連機器
景表法第5条第1号では、商品やサービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対して、実際のものや事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると示すこと、又は一般消費者に対して事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示を不当表示として禁止しています。
消費者庁は優良誤認表示に当たるかどうかを判断するため必要があると認めるときは、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を15日以内に提出するよう事業者に求めることができます。その結果、当該資料が提出されないときは不当表示とみなされます。
景表法(不当な表示の禁止)
第5条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
1 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
景表法
消費者庁より課徴金として239万円の納付命令が出された美容機器の例
【消費者庁が認定した事実】
本件商品を一般消費者に販売するに当たり、自社ウェブサイトで配信した動画において、本件商品を使用する映像に続いて、人物の身体の本件商品使用前後を比較した映像と共に、「たった1カ月で ウエスト-7.5cm!!」との文字の映像、人物の腹部の本件商品使用前後を比較した映像と共に、「たった1カ月で お腹周り-9.0cm!!」との文字の映像等を表示することにより、あたかも、本件商品を腹部に使用すれば、1か月で腹部の痩身効果が得られるかのように示す表示をしていました。
消費者庁は、景表法第5条第1号に該当する表示か否かを判断するため、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、当該期間内に表示に係る裏付けとする資料が提出されましたが、当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められませんでした。
また、自社ウェブサイトで配信した動画において、「※効果には個人差があります」及び「※運動と食事制限を組み合わせた結果です」と表示していましたが、当該表示は、一般消費者が表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではないと判断されました。
まとめ
雑貨である美容・健康関連機器の広告については、薬機法だけでなく、景表法に違反していないかどうか注意する必要があります。
広告表現に迷われた時は是非とも当事務所までご相談ください。