はじめに
薬用化粧品は、医薬部外品であり、多様な有効成分が訴求されています。
しかし、医薬部外品だからといって、どんな薬用化粧品でも「殺菌」を標ぼうできるわけではありません。
今回は殺菌を例に、薬用化粧品ではどのような標ぼうができるのか、法律やガイドラインを用いて説明いたします。
薬用化粧品とは?
化粧品は薬機法によって、医薬部外品の薬用化粧品と化粧品(一般化粧品)に分けられています。
薬機法上の分類
- 薬用化粧品
- 化粧品(一般化粧品)
薬用化粧品には、化粧品としての期待効果(化粧品として期待される効果)に加えて、肌あれやにきびを防ぐなどの効果を持つ有効成分が規定量配合されています。
一般化粧品との違い
薬用化粧品は有効成分が配合されていることに加え、容器や外箱に医薬部外品と表示されることが一般化粧品との大きな違いとなります。
- 有効成分の配合
- 容器や外箱に「医薬部外品」との表示
一般化粧品は薬機法で全成分表示が義務付けられていますが、医薬部外品は日本化粧品工業連合会など業界団体の自主基準で成分表示をしているという違いもあります。
- 一般化粧品:全成分表示義務
- 薬用化粧品:業界団体の自主基準で成分表示
さらに、薬用化粧品は製造販売を行う際に、事前に承認・許可を得なければなりません。この点は医薬品と同等の扱いを受けますが、薬局以外でも販売することが可能な点は、一般化粧品と同等の扱いとなります。
医薬部外品の定義
ところで、医薬部外品とは、どのような物のことをいうのでしょうか。医薬部外品が何であるかについては、薬機法に定めがあります。
第2条第2項
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
1 次のイからハまでに掲げる目的のために使用されるもの(これらの使用目的の他に、併せて前項第2号または第3号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛2 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに塁する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第2号または第3号に規定する目的のために使用されるものを除く。)であつて機械器具等でないもの
3 前項第2号又は第3号に規定する目的のために使用される物(前2号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
薬機法では、医薬部外品は、第2条第2項第1号又は同項2号の目的で使用されるもののうち、人体に対する作用(影響)が緩和なものであり、かつ、医薬品に該当しないものをいうとされています。
このように、医薬部外品は人体への作用が穏やかである必要があり、化粧品と医薬品の間に位置づけられています。
【医薬部外品の例】
・殺虫剤
・栄養剤
・腋臭防止剤
・生理用ナプキン
・薬用化粧品
・薬用シャンプー
・薬用歯磨き粉
・薬用石鹸
・薬用入浴剤
医薬品等適正広告基準
医薬品等適正広告基準では、薬機法66条第1項の解釈や広告の適正化をはかるために遵守すべき事項が示されています。
第66条第1項 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
医薬品等適正広告基準の目的
医薬品等の広告が虚偽・誇大にわたらないようにするとともにその適正化をはかること。
対象となる広告
この基準は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及び、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告
効能効果等のしばり表現の取り扱いについて
しばり表現が付されている医薬品等の広告を行う際は、しばり表現を省略することなく正確に付記しなければなりません。
効能効果が「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」のところ、「しみ、そばかすを防ぐ」のみを記載したり、効能効果が「にきびを防ぐ」のところ、単に「にきびに」のみ記載することはできません。
以下の表は薬用化粧品について、事実であれば標ぼうできる効能効果の一覧です。
こちらの表から、殺菌については、薬用せっけん以外で効能効果を謳えないことがわかります。
薬用化粧品の効能効果の範囲
種 類 | 効 能 ・ 効 果 |
---|---|
1.シャンプー | ふけ、かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪・頭皮を清浄にする。 |
2.リンス | ふけ、かゆみを防ぐ。 毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。 毛髪の水分・脂肪を補い保つ。 裂毛・切毛・枝毛を防ぐ。 |
3.化粧水 | 肌あれ。あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。 |
4.クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油 | 肌あれ。あれ性。 あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。 油性肌。 かみそりまけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。 皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。 皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。 |
5.ひげそり用剤 | かみそりまけを防ぐ。 皮膚を保護し、ひげをそりやすくする。 |
6.日やけ止め剤 | 日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。 日やけ・雪やけを防ぐ。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 皮膚を保護する。 |
7.パック | 肌あれ。あれ性。 にきびを防ぐ。 油性肌。 日やけによるしみ・そばかすを防ぐ。(注1) 日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。 肌をなめらかにする。 皮膚を清浄にする。 |
8.薬用石けん(洗顔料を含む) | <殺菌剤主剤> (消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む) 皮膚の清浄・殺菌・消毒。 体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。 <消炎剤主剤のもの> 皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。 |
(注1)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。」も認められる。
(注2)上記にかかわらず、化粧品の効能の範囲のみを標ぼうするものは、医薬部外品としては認められない。
薬用化粧品の効能効果の範囲では、「殺菌」は薬用石けんにのみ認められています。そのため、化粧水やハンドクリームで殺菌を標ぼうすることはできません。
また、殺菌については、特定の菌に対する殺菌は標ぼうできず、一般的な菌に対する殺菌に留める必要がありますので、「新型コロナウイルスの殺菌」や「アクネ菌の殺菌」は謳えません。
承認されていない効能効果を標ぼうした場合、薬機法違反となりますので、注意が必要です。
広告表現に迷われた時は是非とも当事務所までご相談ください。