令和5年1月12日に医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会が開催されました。
本コラムでは、この検討会で取り上げられた課題や 「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」の第二版(案) について解説します。
ウェブサイトの監視指導体制の強化
医療広告関連では、ウェブサイトの監視指導体制の強化が課題として取り上げられました。
消費者を欺くような違反広告は許されるべきではありません。
自由診療を提供する医療広告サイトを対象に監視指導体制を強化することで、消費者トラブルを防ぐ効果が期待できます。
ネットパトロール事業
ネットパトロールは、受託事業者による監視も行われていますが、通報受付によるものが多数を占めています。
審査の結果、「違反あり」と判断されたウェブサイトを対象に、医療機関通知が送付されます。
医療機関による自主的な改善がみられない場合には、管轄の自治体に情報が共有され、自治体による改善指導が行われることになります。
参照:医療機関ネットパトロール
主な違反の種類
- 広告が可能とされていない事項の広告
- 治療等の内容や効果について、患者を誤認させるおそれがあるビフォーアフター写真
- 誇大広告
特に、リスクや副作用の記載が不十分な自由診療の広告が目立つ結果となりました。
今後も上記違反事例について、監視体制が強化されることが予想されるため、注意が必要です。
医療機関通知後の改善状況
医療機関通知から3ヶ月・・・約8割
6ヶ月・・・約9割
残り1割については、改善対応に時間を要しているようですが、期限を定めた対応指示や報告命令、臨時立入検査等が実施されることになります。
悪質な場合には、行政処分によって医療機関の開設許可の取り消し等もあり得るため、改善を求められた場合には、真摯に対応する必要があります。
「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」について
今回の検討会では、医療広告の改善に際し、「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」の第二版(案)が示されました。
【参考】(別添) 医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)(案)
広告が禁止される事例の更新点
他の医療機関との比較について(比較優良広告)
「特定の医療機関と自らの費用を比較して、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を強調した事例」が追加されました。
料金等の比較表を表示したうえで、「県内で同じ治療を提供している「□□医院様」や「△△クリニック様」よりも安く受診できます。」と表示
このような表現は、比較優良広告に該当するため、医療機関の広告としては認められません。
また、特定の医療機関のみならず、不特定の医療機関と比較するような表現も禁止されているので、「日本一の実績」「県内でも有数の治療実績」等の表現も認められません。
体験談 ※医療機関のスタッフによる記載について(省令禁止事項)
「医療機関のスタッフ自身の体験談」及び、「医療機関のスタッフが記載した患者等の体験談」が追加されました。
「当院の院長も実際に体験!」と題し、脂肪吸引等の具体的な体験談を表示
医療機関のスタッフ自身であっても、患者が記載した体験談同様に認められません。
また、医療機関のスタッフが患者の体験談を紹介するかたちで代わりに記載し治療をオススメすることも認められません。
体験談 ※体験談の編集について(省令禁止事項)
医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された体験談については、医療機関からの影響を受けない限りは顧客誘引性がないため、医療広告に該当されませんが、医療広告の依頼によってウェブサイトの運営者が体験談を編集したり、否定的な内容を削除したり、肯定的な内容を優先的に表示させる等、医療機関に有利に編集している場合には、医療広告に該当し、禁止される広告となります。
- 口コミサイトの運営者が体験談の内容を編集・削除し、掲載
- 口コミサイトの運営者が医療機関に否定的な内容を削除
- 口コミサイトの運営者が医療機関に肯定的な内容を優先的に上部に表示
広告するにあたって注意が必要な事例
費用を強調した広告について
特に美容医療分野ではキャンペーンや割引価格を大きな文字で記載する等の強調表示が多いことから、「キャンペーンや割引価格の強調など費用を前面に押し出した事例」及び、「会員特典等で不当に患者等を誘引する恐れのある事例」が追加されました。
- 「期間限定」「キャンペーン」等と題し、割引価格を強調した広告
- 「会員登録で30%OFF」等、会員特典として割引を強調した広告
これらの表示は患者を不当に誘引するおそれがあるため、料金変更のお知らせ程度に留め、過度に強調せずに記載する必要があります。
医薬品の販売名について
医薬品の販売名については、限定解除の要件を満たせば、広告可能ですが、医薬品等適正広告基準により、一般人を対象にする広告は行わないものとされていることを鑑み、医薬品又は医療機器の販売名については、広告してはならないとされています。
なお、医薬品の販売名ではなく、一般名称であれば広告可能です。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
バナー広告における違反について
バナー広告やリスティング広告は、医療機関のウェブサイトとは異なり、限定解除要件①を満たさず、広告可能事項以外の広告はできないという特徴があり、規制を周知するため、今回「バナー広告やリスティング広告において、広告可能事項以外の広告を記載している事例」が追加されました。
バナー広告にて、広告可能事項以外の内容が広告されている。
バナー広告が一律禁止されているわけではありませんが、限定解除要件①を満たさないことから、広告可能事項以外の内容を広告することはできません。
特定の人のみが閲覧可能な広告における違反について
医療機関への注意喚起後に、会員限定ページに変更する対応が見受けられたため、「会員等の特定の人のみ閲覧可能なウェブサイトにおいて、医療広告規制に抵触する内容を広告している事例」が追加されました。
会員限定サイトで割引を強調した表示
一般人が閲覧できないような会員サイトであっても、虚偽広告や比較優良広告は禁止されています。
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