無自覚症状者を対象とする新型コロナウイルスPCR検査、遺伝子検査その他リスク判定検査など、予防医療にまつわる検査サービスは多く存在しますが、そのようなサービスを展開するに際して遵守すべき法律や留意事項について解説します。
遵守すべき法律
これらの検査サービスで遵守すべき法律は、医師法です。
すなわち、医行為としての診断は、医師しか行うことができないとされています(医師法17条)。
古い医務課長回答(昭和23年8月12日)によれば、「血液型の検査」、「糞便検査」、「淋菌検査」などは、その結果の判定のみであれば、医行為に属さず、その結果に基づいて、患者に対する診断・投薬を行うことは、医行為に属するとしています。
新型コロナウイルスPCR検査の場合
新型コロナウイルスPCR検査について言えば、スクリーニング検査(陽性または陰性の判定のみ)であれば、感染症への感染の有無の確定診断ではなく、医行為には該当しないとされています。
そのため多くの民間のPCR検査センターにおいて、医師の診察なしに検査がなされています。
しかし、陰性証明書が必要な場合は、感染症に感染していないことの確定診断になるので、医師による診察が必要です。
そのため、陰性証明書の発行を希望する場合には、オンライン診療で医師の診察、というのが多くのクリニックの対応です。
新型コロナウイルスPCR検査についていえば、スクリーニング検査なのか、確定診断なのか、という点が、医行為に該当するか(医師にしかおこなうことができないか)どうかのポイントになるということです。
遺伝子検査その他リスク判定検査の場合
遺伝子検査その他リスク判定検査については、衛生検査所(臨床検査技師法20条の3)で臨床検査技師が行うことができるものと、医行為に該当し、医師にしかできないものがあります。
一般社団法人日本病理学会という団体が、厚生労働省医政局医事課長宛てに疑義照会をして回答を得ています。
これによれば、以下のように分類されます。
医行為ではなく衛生検査所において実施可能なもの
- 検体を検査する行為
例えば標本作製、免疫染色や細胞診、遺伝子検査など
- 標本の病理学的所見を客観的に記述する行為
例えば異型細胞が多い、好中球浸潤が多いなど
医行為であり、衛生検査所で実施不可能なもの
- 検査結果に基づいて、医学的判断を伴う罹患の可能性の提示や診断(病理学的診断)を行う行為
つまり、検体検査において、数値を出して、それが高いか低いかを指摘することは医行為にはなりません。しかし、この数値が高いからこの病気にかかるリスクが高いとか、この病気にかかっている可能性があるなどと指摘するのは医行為に該当し、医師にしかできないということになります。

おわりに
個別の事案について、どこまでのことが許されるのか、その他遵守すべき法律などは、ネクスパート法律事務所へご相談ください。
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代表弁護士 寺垣 俊介
(第二東京弁護士会)