インフルエンサーが飲食店等で実際に働く様子をSNSで発信する「職場体験型PR」が注目されています。
店舗にとっては集客・求人PRになり、インフルエンサーにとっては新鮮なコンテンツを制作できるメリットがあります。
しかし、インフルエンサーに「実労働」をさせる場合、偽装請負や労働者供給に該当しないか、という法的懸念が生じます。
本記事では、職場体験型PRを適法に実施するためのポイントを解説します。
職場体験型PRは「労働」に該当するか
ここでは、職場体験型PRにおける「実労働」の法的性質を説明します。
結論として、職場体験型PRにおけるインフルエンサーの作業は、原則として労働基準法・労働契約法上の「労働」には該当しないと整理できます。
労働契約は、労働者が使用者の指揮命令下で労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて合意することで成立します(労働契約法第6条)。
職場体験型PRの場合、次の点から労働契約の成立は認定されにくいと考えられます。
- 施策の目的は、PRコンテンツ(動画・SNS投稿)の制作である
- 店舗側の目的も、集客・求人のためのPRを得ることである
- 報酬は「実労働」の対価ではなく、PR制作(コンテンツ制作・SNS投稿)の対価である
このように整理すれば、インフルエンサーの作業は「働いている様子を広告にする」のではなく、「広告を制作するための職業体験」と位置づけられます。
したがって、業務委託形式で実施する限り、偽装請負や労働者供給の問題は原則として生じません。
PR会社がプラットフォーム経由でマッチングする場合も、個別にキャスティングする場合も、現場に立ち会う場合も立ち会わない場合も、結論は変わりません。
注意すべき運用上のNG例
ここでは、「労働」と評価されてしまうリスクのある運用例を説明します。
前述の整理は、あくまでPRコンテンツ制作が目的であることが前提です。
実態として雇用契約に基づく労働と評価されてしまう事情があれば、結論は変わります。
次のような運用は避けてください。
- 撮影をせず、ただ働かせているだけ
- 撮影とは無関係に、店舗の人手不足を補う目的で作業させる
- 通常のアルバイトと同様のシフトに組み込む
- 長時間にわたり店舗運営業務の一部を担わせる
これらに該当すると、実態として「労働力の供給」と評価され、職業安定法違反(労働者供給事業)や偽装請負のリスクが生じます。
景品表示法(ステマ規制)について
ここでは、職場体験型PRと景品表示法の関係を説明します。
景品表示法のステマ規制は、一般消費者が広告であると認識できない表示を規制するものです。
職場体験型PRの場合、その性質上、広告であることは視聴者にとって明らかと考えられます。
したがって、法的に「#PR」表示が必須とまでは言えません。
ただし、YouTube等のプラットフォームポリシー上、広告であることの明示が求められる場合があります。
「#PR」の記載と、特別な許可を得て職業体験をしている旨の注記をしておくことが無難です。
まとめ
職場体験型PRを適法に実施するためのポイントは、次のとおりです。
- 業務委託形式で実施する
PRコンテンツ制作を目的とした業務委託であれば、偽装請負・労働者供給の問題は原則として生じない - 実態がPR制作であることを維持する
撮影なしで働かせる、人手不足の補充目的で使うなどの運用は避ける - プラットフォームポリシーに配慮する
法的義務ではないが、「#PR」表示や職業体験である旨の注記をしておくことが無難

