「〇〇活」広告にご用心!弁護士が解説する薬機法・景表法上の注意点

近年、「妊活」「腸活」さらには「腎活」など、「〇〇活」という言葉を様々な商品やサービスの広告で見かけるようになりました。これらの言葉は、特定の目的のために積極的に健康や生活習慣に取り組む前向きな姿勢を示すものとして広く受け入れられています。

しかし、これらの言葉をビジネス、特に健康食品やサプリメント、美容関連商品などの広告に使用する際には、景品表示法(景表法)や薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)による規制に十分な注意が必要です。これらの法律に違反すると、課徴金納付命令や刑事罰が科される可能性があります。

今回は、弁護士の視点から、「〇〇活」という表現がなぜ法律上の問題を引き起こしうるのか、景表法と薬機法の観点から解説します。

目次

「〇〇活」という言葉自体は問題か?

まず理解しておくべき点は、「妊活」「腸活」「腎活」といった「〇〇活」という言葉自体の使用が、直ちに法令違反になるわけではありません。これらの言葉は、ライフスタイルや健康への意識を表す一般的な用語としても使われています。

問題となるのは、これらの言葉が商品やサービスの広告宣伝において使用される際、その表現全体が消費者に誤解を与えたり、法律が定める規制に抵触したりする場合です。

法律による規制の目的

景表法と薬機法は、消費者が商品やサービスを適切に選択できるよう、不当な表示や広告から消費者を保護することを目的としています。

景品表示法

商品やサービスの品質、規格、内容、価格などの表示について、実際よりも著しく優れている、あるいは有利であると消費者に誤認させるような「不当表示」を規制します(景表法第5条)。特に、根拠なく効果効能を謳ったり、事実と異なる有利な条件を示したりすることが問題となります。

薬機法

 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等の品質、有効性、安全性を確保するための法律ですが、これらの医薬品等以外の物について、あたかも医薬品のような効果効能があるかのように誤認させる広告を規制するという重要な側面があります。これは、特に消費者の健康被害を防止するための規制です。

景表法における「〇〇活」広告の問題点

景表法では、「優良誤認表示」(景表法第5条第1項)として、商品の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを禁止しています。

「妊活」や「腸活」といった言葉は、健康や体の特定の機能への前向きな働きかけを連想させます。これらの言葉と組み合わせて、商品の効果について根拠なく過大な表示を行うと、消費者がその商品を摂取したりサービスを利用したりすれば、あたかも「妊活が成功する」「腸の不調が全て解消される」といった著しい効果が得られるかのように誤認する可能性があります。

消費者庁が公表している「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の中でも、「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するものとして、「妊活」「腸活」といった言葉が例示として挙げられています。これは、これらの言葉を含む広告が、その内容次第で健康効果を示唆するものとみなされ、その効果に合理的な根拠が求められることを意味します。根拠がない場合は、景表法上の優良誤認表示となるリスクが高いのです。

「腎活」についても同様です。もし「このサプリで腎臓が若返る」「腎臓の数値が劇的に改善」といった根拠のない、あるいは医学的根拠に基づかない効果を標榜すれば、消費者に誤認を与え、景表法上の問題となる可能性があります。

「腎活」という表現はペットフードでよく見られますが、この場合にも同様に注意が必要です。

薬機法における「〇〇活」広告の問題点

薬機法において、「〇〇活」を含む広告で特に注意が必要なのは、健康食品やサプリメントなどが医薬品と誤認されるような効能効果を標榜することです。

健康食品やサプリメントは、病気の診断、治療、予防を目的としたり、体の構造や機能に著しい影響を与えたりする「医薬品的な効能効果」を謳うことは薬機法上認められていません。

「妊活」「腸活」「腎活」といった言葉を特定の製品(特に健康食品等)と組み合わせて広告する際に、以下の表現をすると医薬品と誤飲される恐れがあります。

「妊活」

不妊症の治療や改善、妊娠の保証といった効果を暗示・標榜する表現

「腸活」

便秘、下痢、過敏性腸症候群(IBS)などの疾患の治療や予防、腸内環境の医学的な改善といった効果を暗示・標榜する表現

「腎活」

腎機能の回復、腎臓病の治療や予防、特定の腎臓関連の数値(例:クレアチニン値)の改善といった効果を暗示・標榜する表現

これらの表現は、たとえ「〇〇活をサポート」「〇〇を目指したい方に」といった間接的な表現であっても、広告全体から医薬品的な効能効果を暗示していると判断される可能性があります。

特に「腎活」については、腎臓の機能や疾患に関連する表現は、医学的な管理が必要な領域とみなされやすく、健康食品等でその効果を標榜することは薬機法上のリスクが極めて高いといえます。

広告作成者が留意すべき点

「〇〇活」という言葉を広告に使用する際には、以下の点に特に留意する必要があります。

 医薬品的な効能効果の標榜は絶対に行わない

病気の治療・予防、体の特定の機能の回復・改善など、医薬品でなければ謳えない効果効能を、直接的にも間接的にも示唆しない。

広告全体の印象に注意する

使用する言葉だけでなく、写真、イラスト、お客様の声、ウェブサイトのデザインなど、広告全体で消費者にどのような印象を与えるかを検討する。「〇〇活」という言葉が、製品の医薬品的な効果を過度に期待させるかのような印象を与えていないか確認が必要です。

科学的根拠の確認

 もし特定の健康効果や機能性を謳う場合(機能性表示食品など、許可・届出された範囲内であれば可能な表現もあります)、必ずその表示の根拠となる十分な科学的エビデンスがあることを確認してください。根拠なき表示は景表法違反となります。

まとめ

「妊活」「腸活」「腎活」といった「〇〇活」という言葉は、それ自体は問題ありません。しかし、これらの言葉を健康食品やサプリメント等の広告に使用する際には、表現方法によっては景品表示法上の優良誤認表示や、薬機法上の医薬品的な効能効果の不当表示に該当するリスクが伴います。

特に薬機法においては、医薬品等以外の製品が医薬品的な効能効果を暗示することは厳しく規制されています。安易な表現や、根拠のない過大な広告は、消費者の誤認を招くだけでなく、行政指導や措置命令の対象となり、企業の信用を失墜させることにもつながります。

これらの言葉を広告に使用する際は、その表現が法律に適合しているかを十分に検討し、曖昧な表現や誤解を招く表現を避け、消費者に正確な情報が伝わるように細心の注意を払うことが重要です。

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