一般消費者が適正に商品やサービスを選択できる環境を守るため、優良誤認表示を効果的に規制する必要があります。
そこで、行政機関は、事業者に対して、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、合理的な根拠を示す資料がない場合には措置命令等との関係では不当表示と扱われます。
このように、景表法は合理的な根拠がない表示を不当表示として禁止しており、これを不実証広告規制といいます。
以下では、景表法における不実証広告規制の内容・合理的な根拠を示す資料・不実証広告規制の違反の効果等について説明します。
不実証広告規制の内容
第5条第1号により禁止されている優良誤認表示(商品やサービスの品質、規格等について実際のものや事実に相違して著しく優良であると示すこと)の疑いがある場合、内閣総理大臣は、表示を行った事業者に対して、その表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を事業者に求めることができます。(第7条第2項・第8条第3項)この文書を資料提出要求書といいます。
事業者が資料提出要求書に記載された資料の提出をしない場合や、表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められない資料を提出した場合には、優良誤認表示とみなされ、不当表示として、行政処分や課徴金納付命令の対象となります。
効果や性能に関する表示であっても、開運や金運などの神秘的な内容や気分爽快などの主観的な内容に関する表示のみであって、通常その表示から直ちに表示された効果や性能について、一般消費者が著しい優良性を認識しないと考えられるものは、優良誤認表示に当たるおそれはないため、不実証広告規制の対象にはならないとされています。
しかし、神秘的・主観的な効果や性能を強調し、体験談などを記載することによって、効果や性能を具体化している場合には、不実証広告規制の対象となるとされています。
資料の提出期限
資料の提出期限は、消費者庁が資料の提出を求める文書を交付した日から15日を経過するまでの期間です。文書の提出期限を考えると、いつ資料を求められても対応できるように事前に準備しておく必要があります。
合理的な根拠とは
提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 提出資料が客観的に実証された内容であること
- 表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
提出資料が客観的に実証された内容であること
提出資料は、表示された具体的な効果、性能が事実であることを説明できるものでなければなりません。
そのため、以下のいずれかに該当する客観的に実証された内容のものである必要があります。
- 試験や調査によって得られた結果
- 専門家・専門家団体・専門機関の見解・学術文献
①試験や調査によって得られた結果
ここでいう試験や調査は、関連する学術界や産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法により実施される必要があります。
認められた方法がない場合には、社会通念上妥当と認められた方法で実施する必要があります。
日用雑貨品の抗菌効果試験について、JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
一般消費者の体験談やモニターの意見等を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合には、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が加わらないよう統計的に客観性が十分に確保されている必要があります。
たとえば、自社の従業員や家族等、利害関係がある者の体験談を収集して行う調査は作為的な要素を含んでいるので、自社の都合の良い結果となる可能性があり、客観的に実証されたものとは認められません。
②専門家や専門機関の見解や学術文献
専門家等が客観的に評価した見解や学術文献で、専門分野で一般的に認められているものが求められます。
特定の専門家による特異な見解(多数の専門家に支持されていない見解)や新しい分野で専門家が存在しないような場合は、客観的に実証されたものとは認められないので、その場合には、試験や調査によって、表示された効果や性能を客観的に実証する必要があります。
表示された効果や性能と提出書類によって実証された内容が適切に対応していること
提出資料が客観的に実証された内容のものであることに加え、表示された効果や性能が提出資料によって実証された内容と適切に対応していなければなりません。
99%の紫外線をカットすると表示する紫外線遮断素材を使用した衣料について、事業者から、紫外線遮断効果についての学術文献が提出されたがこの学術文献は、紫外線遮断素材が紫外線を50%遮断することを確認したものにすぎず、紫外線を99%遮断することまで実証するものではなかった。
したがって、上記の表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応しているとはいえず、当該提出資料は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
不実証広告規制違反の効果
期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたにも関わらず、事業者が何らの資料を提出しない場合や、表示の裏付けとなる合理的な根拠とは認められない資料を提出した場合には、優良誤認表示とみなされ、不当表示として、消費者庁長官が表示の差し止め、再発防止措置等が命じられることになります。さらに、措置命令に従わない者には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、情状により、懲役と罰金が併科されることもあります。(第36条)
この罰則に加え、措置命令に従わない事業者にも3億円以下の罰金が科されます。(第38条第1項第1号・第2項第1号)
まとめ
ここでは、優良誤認表示から消費者を守るために生まれた不実証広告規制とは何か、どのような書類の提出が求められるかなどについて見てきました。
消費者に商品の購入を促すためには、その商品の性能や効果等について効果的にプロモーションを行っていく必要はあります。しかし、不適切な性能や効果等を表示した場合、その合理的根拠を示すことができなければ措置命令を受けるという不利益を被るリスクがあります。
表示の裏付けとして十分な資料を持っているかどうかご不安な場合、一度ご相談いただくことをお勧めします。

「このような表現は大丈夫かな?」「この商品をこうやって訴求したいけど、景表法に違反しないかな?」などのご不安がございましたら、是非ともご相談ください。