「脱毛」の広告表示について

目次

はじめに

最近男性にも人気の「脱毛」ですが、脱毛に関する広告表示を行うに当たっては、「医療脱毛」か「美容脱毛」かによって、注意すべき広告規制が異なります。

現在多くの脱毛クリニック、脱毛サロンが存在する状況の中で、広報上差別化を図るためには、脱毛効果はもちろんのこと、費用や施術内容、口コミなどが重要となりますが、これらの事項についてどこまでどのような表現が可能なのでしょうか。

以下、医療脱毛と美容脱毛それぞれの広告において注意すべきポイントをご紹介します。

医療脱毛の広告表示について

ここでは、医療脱毛の広告表示について解説します。

医療脱毛の広告規制

医療脱毛は、「医療行為」に分類されますので、医療法の規制を受けます。

また、広告一般について適用される景表法の規制についても注意が必要です。

医療脱毛の広告の落とし穴

「永久脱毛」というのはOK?

医療法第6条第1項及び第2項2号では、「虚偽の広告」及び「誇大な広告」を禁止しています。

この点、科学的根拠が明確な効果について記載をする場合には、「虚偽」「誇大」には該当しません。

そのため、当該医療脱毛の効果として、毛根の機能を消滅させるような効果につき科学的根拠がある場合には、「永久脱毛」の表現は可能となります。

「痛み」の表現はできない!? ※脱毛広告全般に共通

「痛み」の感じ方は個人差があり、客観的に「高い」「低い」の判断は困難なものになります。

 そのため、「痛くない」「痛みが少ない」等の表現については、虚偽あるいは誇大広告と評価されるおそれがあります。

 代替表現としては、「刺激が少ない」等の表現が望ましいといえます。

 また、医療法施行規則には以下の条項があります。

第1条の9 
一 患者その他の者・・・の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと。

医療法施行規則

 最近の広告を見ると、インスタグラムの投稿などを引用して利用者の感想を記載しているケースがあります。

 しかしながら、「私は痛くなかった」「全然痛くない脱毛」等の表現は上記の治療効果の体験談に該当するため、広告することができません。

 個人の感想であっても、広告ができないことに注意が必要です。

月額費用を強調したい! ※脱毛広告全般に共通

例えば、「月額1980円で全身脱毛」等の広告を行う場合、実際には総額で20万円で、クレジット会社の分割払いとなる場合、1980円以外に別途手数料がかかる場合、月々の顧客の金銭負担は1980円で収まらない可能性があります。

そのような場合には、顧客において、月々1980円の支払いさえすればサービスを受けられるとの誤認が生じる可能性があり、景表法上の有利誤認表示に該当する可能性があります。

そのため、「月々1980円で」等の広告を行う場合には、実際に顧客が月々負担することとなる手数料の記載等注意書きを付す必要があります。

副作用やリスクの説明はどこまで必要? 

医療広告は、本来、広告することが可能な事項が非常に限られています(医療法第6条の5第3項)。

しかしながら、その表現の限定を解除する要件として、医療法施行規則第1条の9の2は以下の要件を定めています。

  1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること。
  2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること。
  3. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること。
  4. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること。

上記の要件のうち、4.については、クリニック側からはあまり大々的に表現したくないとの心理から、小さな文字で表示したり、曖昧な表現のみの記載となってしまっているケースが散見されます。

しかしながら、一見してリスク・副作用が明らかではない場合には、当該広告全体として、上記の限定解除の要件を満たさず、効能効果の表現すらできないことになりますので、リスク・副作用については、症状・程度について明確に記載する必要があります。

「全身脱毛3年間し放題!」はNG? ※脱毛広告全般に共通

体毛には毛周期があり、曽於サイクルの限られた期間に脱毛を行うことで効果が発揮されますが、一回脱毛の施術を行った後、次回の施術を行うまでには一定期間を空ける必要があります。そのため、契約期間中において受けられる施術回数は限られており、「し放題」との表現は誇大広告となるため、禁止されています(医療法第6条の5第2項第2号参照)。

美容脱毛の広告表示について

ここでは、美容脱毛の広告表示について解説します。

美容脱毛の広告規制

美容脱毛は、医療行為ではないため、医療法の適用は受けません。

とはいえ、医療行為であるかのような表現を行うことは、顧客を誤認させる虚偽広告として禁止されています。

サロン脱毛の広告において主に注意すべきなのは景表法上の規制です。

美容脱毛の広告の落とし穴

美容脱毛で「永久脱毛」と表現するのはNG?

美容サロンにおいては、「永久脱毛」「すぐに脱毛効果を実感」「もう生えてこない」等、脱毛効果を保証するような表現は禁止されています。

「サロン支持利率No1!」等の評価を表現したい!

実在するランキングで賞を受賞した等、裏付けが明らかなものを除き、「No1」等の広告表現は禁止されています。

まとめ

医療脱毛、美容脱毛それぞれにつき、陥りがちな広告表現上の落とし穴についてご紹介しました。

昨今、脱毛クリニック、脱毛サロンは都内でも多数存在し、業界内での競争は厳しいものといえます。

しかしながら、顧客に正しい情報を提供することは、顧客信頼度にもつながる重要な視点となります。

ネクスパート法律事務所では、脱毛クリニックや脱毛サロンを始めとする美容分野の広告チェックを行っております。

大切な広告を、より信頼される広告にするため、日々アドバイスをさせていただいております。

広告表現にご不安があれば、お気軽にお問合せください。

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