近年、ウェルネス市場で急速に存在感を増しているCBD(カンナビジオール)製品。
オイルやカプセル、化粧品など多様な商品が展開され、新規事業として参入を検討されている企業も多いのではないでしょうか。
しかし、その手軽さとは裏腹に、CBDビジネスには大麻取締法や薬機法といった、見過ごすことのできない法的な落とし穴が存在します。
規制を正しく理解しないまま事業を進めると、製品の回収や販売停止、ひいては刑事罰の対象となるリスクさえあるのです。
本記事では、企業法務の専門家である弁護士が、CBD製品の販売に際して必ず押さえておくべき大麻取締法と薬機法の規制について、具体的なポイントをわかりやすく解説します。
CBD製品と大麻取締法|「THCフリー」が絶対条件
CBDビジネスにおける最大のリスクは、製品に規制成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が混入してしまうことです。
規制対象はCBDではなくTHC
日本の大麻取締法が規制しているのは、幻覚作用などをもたらすTHCを含む「大麻草」とその製品です。一方で、CBD自体は規制の対象ではありません。
法律上、成熟した大麻草の茎や種子から抽出された製品は規制対象外とされています。そのため、こうした部位から抽出され、かつTHCを含まないCBD製品であれば、合法的に輸入・販売が可能です。
しかし、ここで注意すべきは、日本の規制が非常に厳格であるという点です。
海外では微量のTHCの含有が許容されている国もありますが、日本ではごく微量であってもTHCが検出されれば、その製品は「大麻」とみなされ、規制の対象となります。
いわゆる「ゼロ・トレランス(不寛容)」原則が適用されるのです。
事業者が講じるべき具体的な措置
意図せずTHCが混入した製品を販売してしまった場合でも、「知らなかった」では済みません。
事業者は、自社が扱う製品がTHCフリーであることを保証する責任を負います。
具体的には、以下の措置が不可欠です。
- 成分分析証明書(CoA)の取得と確認
 製造元や輸入代理店から、第三者機関が発行したCoA(Certificate of Analysis)を必ず取得してください。
 その上で、「THC」の項目が「ND(Not Detected/検出せず)」となっていることを確認する必要があります。
- 信頼できる製造元・輸入代理店の選定
 海外の製造プロセスは日本の基準と異なる場合があります。
 日本の法律を遵守する意識が高く、品質管理体制が整った取引先を慎重に選定することが極めて重要です。
- 契約書での保証条項
 取引基本契約書などに、製品が日本の大麻取締法に準拠し、THCを含有しないことを取引先に保証させる条項を盛り込むことも有効なリスク管理策となります。
CBD製品と薬機法|「効果」をうたえない広告の壁
製品のTHC問題をクリアできても、次なるハードルは薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づく広告規制です。
医薬品と誤認させる効能効果の標榜(ひょうぼう)禁止
CBD製品は、医薬品や医薬部外品としての承認を得ていない「食品」や「化粧品」として販売されるのが一般的です。
薬機法第66条では、何人も、医薬品などを除くものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならないと定められています。
つまり、CBD製品について、あたかも病気の治療や予防ができるかのような、医薬品的な効果効能をうたうことは一切禁止されています。
これは、ウェブサイトの記載、SNSの投稿、パンフレット、商品パッケージなど、すべての表示・広告媒体に適用されます。
違反となる表現・ならない表現の具体例
どこまでが許容範囲なのか、判断に迷うケースも多いでしょう。以下に具体例を挙げます。
【違反となる可能性が高い表現(NG例)】
身体の変化や特定の症状への言及
- 「不眠の改善」「ストレスを緩和します」
- 「痛みを和らげる」「関節痛に効く」
- 「リラックス効果」「集中力アップ」
- 「免疫力を高める」
【許容される可能性が高い表現(OK例)】
使用シーンやライフスタイルの提案
- 「就寝前のリフレッシュタイムに」
- 「仕事の合間の休憩のお供として」
- 「ゆったりとしたひとときを過ごしたいときに」
- 「あなたの健やかな毎日をサポート」
ポイントは、身体の構造や機能に直接的な影響を与えるかのような表現を避け、あくまで製品が提供する雰囲気やライフスタイルを提案するにとどめることです。
消費者が投稿したレビューであっても、自社サイトに掲載すれば広告と見なされる可能性があるため、注意深く管理する必要があります。
まとめ|適法なCBDビジネスのために
CBD製品の販売事業を成功させるためには、その魅力や可能性を追求すると同時に、法規制を正しく理解し、遵守する姿勢が不可欠です。
- 大麻取締法対策
 信頼できる取引先を選定し、CoAによって「THCが検出されないこと」を徹底的に確認する。
- 薬機法対策
 医薬品と誤認されるような効果効能を一切うたわず、ライフスタイルの提案に徹した広告表現を心がける。
これらの法規制は非常に専門的であり、判断に迷う場面も少なくありません。
自社の製品表示や広告表現に少しでも不安がある場合や、取引先との契約関係でご懸念がある場合は、トラブルが発生する前に、ぜひ一度、薬機法を専門とする弁護士にご相談ください。
リーガルチェックを通じて、貴社のビジネスを安全かつ持続可能なものにするお手伝いをいたします。

