【改正薬機法】課徴金制度の導入について

2021年8月より薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が改正され、薬機法違反の広告に対して、課徴金命令の制度が導入されることになりました。

今回の改正は、虚偽・誇大広告の販売で得た不当な利益を徴収することによって、違反行為の抑止を図ることを目的としています。

(課徴金納付命令)
第75条の5の2 第1項

第66条第一項の規定に違反する行為(以下「課徴金対象行為」という。)をした者(以下「課徴金対象行為者」という。)があるときは、厚生労働大臣は、当該課徴金対象行為者に対し、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額(次条及び第75条の5の5第8項において「対価合計額」という。)に100分の4.5を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

目次

課徴金の対象行為

第66条第1項では、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的、暗示的であるかを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告することや、記述、流布することを禁止しています。

課徴金納付命令

医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大な広告を対象に、違反を行っていた期間における対象商品の売上額の4.5%の課徴金が課されることになります。

令和2年、消費者庁は、景表法違反事業者に対して、5億円を超える課徴金納付命令を実施しました。

今回の薬機法改正は景表法の「売上の3%」を上回る、「売上の4.5%」となるので、高額な納付命令が実施される可能性があります。

対象者何人も
対象行為虚偽・誇大広告
課徴金売上に対する4.5%
減免ケース1課徴金額が225万円(対象品目の売上が5000万円)未満
減免ケース2景表法の課徴金納付命令がある場合には、売上額の3%(景表法上の課徴金算定率)が控除
減免ケース3事案発覚前に違反者が自主的に報告したときは、50%の減額

第75条の5の2 第2項

前項に規定する「課徴金対象期間」とは、課徴金対象行為をした期間(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から6月を経過する日(同日前に、課徴金対象行為者が、当該課徴金対象行為により当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置として厚生労働省令で定める措置をとつたときは、その日)までの間に課徴金対象行為者が当該課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が3年を超えるときは、当該期間の末日から遡って3年間とする。)をいう。

課徴金対象期間

課徴金対象期間とは、原則66条第1項に違反する行為をやめた日までとなります。

ただし、違反行為をやめた後、そのやめた日から6か月を経過する日までの間に違反行為に係る取引をしたときは、最後の取引をした日までの期間を加えた期間が対象期間となります。

虚偽・誇大広告をやめた後も当該取引がされている場合、誤解による取引が行われると考えられる期間(虚偽・誇大広告をやめた日から6か月を経過する日または、謝罪広告を出す等、厚生労働省が定める措置を取った場合にはその日まで)に行われた取引に基づく売上は、課徴金額の算出に含まれることとなります。

なお、当該期間が3年を超える場合には、当該期間の末日より遡って3年となります。

課徴金額が225万円(対象品目の売上が5000万円)未満の場合、課徴金は免除となります。

同一案件について、景表法の課徴金納付命令がある場合には、売上額の3%(景表法上の課徴金算定率)が控除されます。

課徴金対象行為に該当する事実を、事案発覚前に違反者が自主的に報告したときは、50%の減額となります。

時効について、違反行為をやめた日から5年を経過したときは、課徴金を賦課しないとされています。

【課徴金納付命令までの流れ】

出典:厚生労働省

薬機法の広告該当性を判断する三要件

  1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態であること

医薬品の範囲

  1. 成分:医薬品として使用される成分か
  2. 形状:アンプル剤のような、医薬品に用いられる剤型を使用しているか
  3. 効能効果:疾病の治療又は予防、身体の変化を目的とする効能効果
  4. 用法用量:服用時期、服用間隔、服用量の記載があるか

医薬部外品・化粧品

  1. 医薬部外品:人体に対する作用が緩和なもの
  2. 化粧品:人の身体を清潔にする、美化する、魅力を増す、健やかに保つことを目的として、人体に対する作用が緩和なもの

医薬部外品や化粧品の場合、医薬部外品については、承認を受けた効能効果を超えて広告することは認められていませんし、化粧品は、いわゆる56項目の効能しか謳うことはできません。

課徴金の対象者「何人も」

景表法の場合は、事業者が表示規制の対象となりますが、薬機法第66条第1項の規制の対象は「何人も」となっているので、広告主だけではなく、広告代理店やアフィリエイト広告、インフルエンサーも対象となり得えます。

ただし、広告代理店やインフルエンサーが広告対象となる医薬品等を販売しているわけではないため、課徴金納付命令の対象とはなりません。

しかし、仮に対象外であったとしても自身の広告内容によって、企業が課徴金の調査対象となる可能性があり、企業に悪影響を及ぼすことにより、自身の信頼も喪失することとなります。

対象となる商品が医薬品等であるとみなされてしまうような表現をすることがないよう、発信する広告の内容については、より一層の注意が必要です。

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